薬価・流通の有識者会議、初回意見を簡潔に紹介!PART②=成川氏、三浦氏、三村氏、遠藤氏
みなさん、お元気ですか?夏もすっかり息をひそめ、Tシャツなど、半そでで外に出ると肌寒さを感じる季節になりました。
さて今回は先週の続き。厚労省が新設した医薬品流通・薬価有識者検討会(医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会、8月31日)の初会合の構成員の発言を私なりの解釈を含めてご紹介いたします。
前回は、前半にご発言された4名をご紹介したので、今回は後半4名のご発言をご紹介します。
【成川衛氏、北里大薬学部教授】
◎製薬企業の開発方針、戦略に与える影響を踏まえた制度改革を
昨今の巷で喧伝される「日本の医療用医薬品市場はシュリンク(縮小)している」との見解に対して「円高の影響もあるので、実際にはステイプル(安定)だと思う」と述べる一方、企業が魅力を感じる薬価制度改革が必要、との立場だ。現行ルールは複雑でわかりにくいと述べた。新薬の値付けに用いる原価計算方式は、種々の問題もあるので、類似薬効比較方式の適応を広げていくことが重要と指摘。比較対象に医薬品以外の医療技術を用いることも一考だと述べた。
【三浦俊彦氏、中央大商学部教授】
◎メーカーの“仕切価”は「あまり意味ない」と指摘
筆者の私見だが、三浦氏は8名の中で、最も斬新で現実的な提案をしたと考えている。
卸の一次売差マイナスについて「最終的にメーカーの割り戻し、アローワンスで穴埋めしているので、メーカーも卸はそれほど重視していないような感じがする。変だなと思った」と発言、また、「結局、メーカーが仕切り価を高めに設定し、後付けで、割り戻し、アローワンスを出して卸をコントロールしている」と指摘した。そのうえで「簡単にはいかないかもしれないが、メーカーの“仕切価”を、“出荷額”(現状は仕切り価-割り戻し、アローワンスワンス)に改め、卸がそこに定量的物量コストや、利益を上乗せして納入価とする仕組みが必要ではないか」と提案した。
医療機関、薬局と卸の納入価交渉、妥結については「単品単価、年間契約が非常に大事。薬価改定がない限り途中変更を認めないなど何らかの制度化が必要だ」と強調した。薬局などについては「自社で複数品目に及ぶ単品単価交渉を行うのは無理。交渉代行業者を利用してもいいと思う」とも述べた。
【三村優美子氏、青山学院大名誉教授】
◎「日本の医薬品供給システムは素晴らしい!」と高らかに「礼賛」
医療用医薬品の流通、卸の「専門家」として知られている。初会合での発言は、環境変化の中で医薬品供給を続ける医薬品卸を「礼賛」しているようにしか聞こえなかった。流通、卸の専門家として身を切るような発言、提案はなかったと考えている。提出資料に、流通コストの「明示」「考慮」とあるのが意見といえば意見だろうか。。。。あとは「国全体で議論を」という言葉しか聞けなかった。
【遠藤久夫氏、学習院大経済学部教授】
◎国内製薬企業の育成は薬価制度と別枠で考えるべき
中央社会保険医療協議会と社会保障審議会の会長を務めた経験を持つ厚労省が設置する会議体の重鎮。今回の有識者会議でも座長を務める。今後の会議運営手腕に注目している。
「“イノベーションの推進”と言うと、革新的医薬品を迅速に日本で上市してもらう、いわゆるドラッグラグ解消。あるいは国内メーカーの国際競争力を強化するーーという二つの側面がある。薬価制度でできることできないことを整理して議論する必要がある。そのうえで「日本マーケットが魅力的でない」といわれるが、現行薬価制度の画期性評価は、外資系企業の方が恩恵を受けている。薬価制度は内外差をつけることはできないので、日本企業の開発強化はベンチャー育成、産学共同、税制など、薬価制度とは別に対応すべきではないか」
写真は御茶ノ水の聖橋。久々に通りかかったので。。。。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!季節の変わり目につき、心身をくれぐれも大事になさってください。