製薬業界が主張する「ドラッグラグが再燃するぞ!」に違和感
みなさんお元気ですか?暑い日が続きます。
先週、厚労省の審議会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会)で、23年4月の薬価改定に向けた議論がようやく始まりまいた。新型コロナ感染、参院選などが重なり、立ち上がりはいつもより遅いです。
厚労省の医政局に新たに会議体(「医薬品を迅速かつ安定的に供給するための流通制度や薬価制度に関する有識者会議」)を設置することも決まり、薬価制度を根本的に問い直す準備ができてきました。
その中で、業界が意見表明する機会も増えていますし、これからも増えるでしょう。しかし、私が、ちょっと気になっているのは「このままだと日本では“ドラックラグ”が再燃するぞ!」という主張です。すでに業界の主張を、そのまま社会問題として報じるメディアも散見されます。
ドラッグラグとは、世界的に使われているのに、日本では承認されず、使用されない医薬品が沢山あって医師、患者が困っているーー。そうした状況を指す言葉です。
いま、日本の医薬品市場が伸び悩む中で、たびかさなる薬価改定(引き下げ)が断行され、今後市場は減少に転ずるという試算が出ています。こうした状況を捉え、製薬業界は「あまり薬価を叩くと、ドラッグラグが再燃するぞ!」とたびたび主張しています。
しかし、ドラッグラグの要因は薬価制度以外にも色々あって、もしこれからドラグラグが「再燃」するとしても、その責任を、かつてのように政府、行政と薬価制度にだけ被せるのは、若干無理があるのではないかと思うのです。
2010年代のドラッグラグは確かに行政の審査体制に問題がありました。企業が新薬を開発、申請しても審査が遅くて、なかなか承認されなかった。しかし、今やそれは改善され、審査のスピードはかなり速くなっている。海外で承認された医薬品は、ほぼ同時に日本でも承認されるようになっている。
要は審査体制の脆弱さが要因となるドラッグラグは、解決したともいえるのです。今後、再燃するとしたら、以前とは違う要因も考えられます。
私見で上げるとしたら以下です。
①製薬企業が日本での新薬開発、申請を後回しにする(そもそも申請しない)
②新薬を開発した海外法人(主に小規模ベンチャー)が日本になく、日本の手続きにうとい
③その医薬品が日本の承認および医療保険制度になじまない
などです。
◆ブーメランを食らわないか?
以前にも書いたかもしれませんが、薬価制度の問題だけを引き合いに、製薬業界が「このままだとドラッグラグが再燃するぞ!」とあまり強く主張すると、私の耳には「我々の意見を聞かないと、日本では新薬を出さないぞ!それでもいいのか?」という“脅し”にも聞こえてまうのです。業界イメージにもかかわるので、表現にひと工夫欲しいなあと思います。下手すると思いがけないブーメランを食らうかもしれませんし。。。。
写真はとある老舗の喫茶店で。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。