ノバルティス元社員の2審判決も「無罪」に、ホッとする
高血圧治療薬を巡る研究と広告の問題で、裁判にかけられていたノバルティスファーマと、その元社員に、東京高裁が19日午後、無罪判決を言い渡しました。
「研究データを操作して、自分が所属する企業の製品が、さも競合品より優れているかのように偽り、売り上げが上がるように仕組んでいた!!!」。ノバルティスと元社員はそう疑われ、検察に裁判にかけられていました。しかし、今回、東京高裁は、検察の訴えを退けました。―データの操作は全くなかったわけじゃないが、そのデータに基づく論文が、そっくりそのまま広告効果を発揮したとは言えず、それで売り上げを大きく押し上げたとはいえない―。そんな結論です。
17年3月に、東京地裁が1審で、同様の判決を出していました。裁判は、これで地裁の1審、高裁の2審とも無罪となりました。検察が控訴しなければこれで終わり。控訴すれば、最高裁にかけられます。
医療用医薬品の研究と広告の問題は、数年前に次々に明るみに出ました。15年6月、ブロプレスの広告宣伝活動が、医薬品、医療機器法の禁止する「誇大広告」に当たると認定され、武田薬品に業務改善命令が下されています。ノバルティスも、今回、東京高裁で判決が下ったディオバンの広告宣伝活動が、日本製薬工業協会に「不適切」と認定され、一定期間の会員資格停止処分を受けていました。その後、企業と、医療機関の研究活動を適正化するための法整備も進んでいます。
こうした問題がなぜ生じたのか?私は、研究機関、製薬企業、そしてジャーナリズムの仮面を被った広告宣伝メディアのもたれ合い体質が生み出した「構造問題」と位置づけてきました。ゆえに、特定企業の社員だけをやり玉に挙げて、罰すれば済む問題ではないとの立場です。もちろん、問題がなかったわけではないです。問題は大ありです。ただ、特定の社員の問題にするな。問題を矮小化するなと言いたいのです。
これを機に、研究機関、製薬企業、広告宣伝メディアは猛省し、長年続いた悪癖を払しょくして、環境改善への弛まぬ努力を続けていくべきです。
何はともあれ、今回の東京高裁の判決で、企業に属する一社員に、全ての責任を押し付けるような流れにはならないことが、見えてきたわけで、よかったです。医薬経済で2013年に行った座談会の記事がありますので、ご興味のある方は是非、ご覧ください。私の見解は、当時とほとんど変わっておりません。⇒【ディオバン問題の本質は何か?(上)(中)(下)】
写真は有楽町にて撮影。イルミネーションで夜の街が輝く季節になりました。みなさま。寒くなりますので、お身体に気を付けて。素敵な一週間をお過ごしください。