「もし、うちの薬が効かなかったらお金はいらないよ」。成功報酬も念頭に薬価制度を「再定義」せよ!!
みなさん、お元気ですか?暦の上では春ですが、まだまだ寒い日が続きます。風邪などひいていませんか?
さて、18年度の薬価改定が来週3月5日に告示されます。今回は、結構、大きな制度改革があったので、戦略変更を求められる製薬企業も多いでしょう。ことほど左様に、薬価制度改革は、各社の日本ビジネスを左右するのです。しかし、今度の制度改革は、すそ野が広く、かつその決め方が非常に強引でした。どうしてこんなことになったんでしょうか?
昨年末から、ずっと考えているテーマがあります。それは、-日本の社会保障制度において医療用医薬品とは何か?-ということです。社会保障のカバー領域は、医療、年金、介護、福祉です。医療用医薬品が関連するのは、そのうちの医療保険で、薬価制度は、お医者さんが請求する額を定めた診療報酬の「別表」という位置づけです。診療報酬ではお医者さんが使う医薬品の価格を「別に厚労大臣が定める」としています。すなわち薬価は「診療報酬の別表」なのです。社会保障制度全体の体系から見れば、ほんの一部でしかない。にもかかわわず、日本の製薬産業は、この「別表」にあまりに、大きな期待、希望、理想を持ち込み過ぎたのではないでしょうか?
昨年から今年にかけて社会保障制度の基本を学び直そうと、いくつか関連書籍を読みましたが、薬価制度には触れていないか、触れていても数行で簡単に片づけています。非常にぞんざいな扱いです。とある厚労官僚に「なぜでしょうか?」と意見を聞いてみたところ、「薬価制度は基本原則があるようでない。時の政治情勢、企業の経営状況などに応じてコロッ、コロ変わるから、書こうにも書けないんじゃない?」とのことでした。
ギリアドのC型肝炎治療薬ソバルディ、ハーボニー、小野薬品の肺がん治療薬オプジーボ。効果が高い医薬品は、結局、患者を減少、時に撲滅しますので素晴らしいのですが、製薬企業の経営からすれば自らの収益を支える市場を自ら縮小させることになる。だから、価格は高めに設定せざるを得ない。ところが、原則、単年度予算で財政制限がある社会保障制度からすると、たとえ一時的であっても、高額薬剤を、そのままどんどん使うわけにはいかない。で、ソバルディ、ハーボニー、オプジーボはいい薬であるにもかかわらず、一度設定された薬価が特例的に思いっきり引き下げられたわけです。
ノバルティスファーマは、1回の投与で効果を発揮する小児白血病治療薬キムリアを開発、米国で販売開始しました。効果が確認できた場合にのみ料金を支払う方式で、価格は1回5000万円。目ん玉が飛び出そうな額です。バサント・ナラシンハンCEOは、日本で承認された場合、米国同様、「成功報酬」での薬価支払いを提案する構えを見せています。日本の社会保障財政も意識してのことでしょう。1回いくらにするかは別として「成功報酬」はこれまで日本にはない方式です。こらからどうなるか?ノバルティスのキムリアに注目です。
―日本の社会保障制度において医療用医薬品とは何か?-。この命題に向き合いつつ、薬価制度を根本的に再定義する時代に突入しました。
写真は、ジャズが静かに流れる都内のバーにて。満開の桜を観るまでには、まだ時間がかかりそうです。皆様、身体に気を付けて。素敵な一週間をお過ごしください。