富士フイルムHD、古森CEOが「医薬品・再生医療は先行投資の回収が課題」と明言
みなさん、お元気ですか?今週はシトシト雨でのスタートとなりました。
さて先週、富士フイルムホールディング(HD)が新しい中期経営計画「VISION2019」(17~19年度まで)を発表しました。周知のとおり同社は売上高2兆円を超える大企業です。2000年代初頭、IT化の進展で、写真フィルム事業が壊滅的な低迷期を迎えました。しかし、その穴を埋めるべく積極的に多角化に乗り出し、成功を治めています。ただ、ヘルスケア(医薬、健康領域)事業は、計画通りにはいっていません。とくに医薬品・再生医療の収益貢献度は、まだまだ低い。非開示とのことですが売上高は数100億円程度ではないでしょうか?古森重隆代表取締役会長・CEOは8月30日の記者会見で「先行投資と収益のギャップが大きく、足を引っ張っている。そのギャップを埋めるのが課題」と話しました。
富士フイルムHDは2008年に富山化学を買収、その後、再生医療にも積極的に投資し、「おお!医薬品、医療製品事業にまで、本気で進出する気だ」と、注目を集めました。14年、富山化学が開発した抗ウイルス薬アビガンが西アフリカを中心に大流行したエボラ出血熱に効果を発揮することがわかり、各国政府がこぞって購入。「富士フイルムの先見の明はすごい!!」と脚光を浴びました。(かくいう私もその一人です(^_^;)⇒コチラをどうぞ)
国内製薬企業の経営陣の中からは「“選択と集中”はもう古い。何にでもチャレンジする富士フイルムを見習いたい」との声も出ていました。しかし、いまやエボラ出血熱の流行も沈静化、再生医療も医薬品を開発する際の素材としてビジネスに載っているものの、ダイレクトな医療製品化にはまだ時間がかかる。さらに現在開発中の抗がん剤「FF-10832」、アルツハイマー型認知症治療薬「T-817MA」も中計最終年度(19年度)までに発売できるかどうか微妙です。かりに発売できても、日が浅く貢献度が一気に上がることにはならないでしょう。よって最終年度の医薬品・再生医療事業の売上高は「1000億円に届くか届かないか」(同社幹部)との見通しです。
しかし、富士フイルムの場合、「伸び悩んでいる」というのは誤った見方です。むしろ初めに脚光を浴び過ぎた。すぐにでも収益を生むと過剰に期待し過ぎた。そう見るべきです。ドラスティックな新手法が出てこない限り、本来、医薬品、再生医療の製品化は、時間と金がかかるもの。時間も金もかけないで、一足飛びに新薬、そして収益を期待する方がおかしいということです。今回の富士フイルムの中計でそんなことを考えました。富士フイルムの医薬、再生医療への取り組みを地道にウォッチしていきます。
写真は古森重隆代表取締役会長兼CEO。なんだか先週から急に気温が下がり、秋の気配を感じさせます。みなさん、お体に気を付けて、素敵な一週間をお過ごしください。