「高額薬剤への対応」は“業界エゴ”を排した高度な視点で議論を!!製薬産業の見識が問われている!
みなさんお元気ですか?台風の直撃で幕を開けた新しい1週間!!お盆休みは満喫されましたか?
さて、薬価が高い免疫チェックポイント阻害薬オプジーボが適応症をどんどん拡大、「このままでは財政がもたない」という指摘がきっかけで始まった、いわゆる「高額薬剤への対応」論議。この間、取材で沢山の方々のご意見を拝聴してきました。その感触では、オプジーボの薬価は、何らかの手法で、修正される可能性が高いです。でも、これから出て来る高額薬剤はどうでしょうか?総じて製薬業界関係者は「薬価引き下げはやめて」という意見、それ以外は「新たなルールを作って引き締めざるを得ない」という意見で真っ向から対立しています。
安倍政権は12年末に発足した当時、社会政策の「3本の矢」のひとつとして「成長戦略」を掲げました。ところが昨年9月に、出し直した「新3本の矢」に「成長戦略」という言葉はありません。新たに「安心につながる社会保障」を掲げています。安倍さんも、資本主義社会の成熟、少子高齢化などで、経済成長が行き詰まり、というか、限界に近づいていることを、認めざるを得なくなったのではないでしょうか?
「かつてのような経済成長は見込めない。むしろ低成長の中で、いかに社会の質を高めいくかが大事だ」という「脱・成長神話」を主張する経済学者、専門家の書籍が、このところ飛ぶように売れているそうです。例えば榊原英資氏、水野和夫氏などの著書です。
「政府が余計なことをしなくても、市場に任せておけば経済は成長する」という、いわゆる新自由主義の急先鋒だった、中谷巌氏が2009年に出した「資本主義はなぜ自壊したのか」という著書で「こんなに格差が広がるとは思っていなかった。配慮が足りなかった」と、自ら誤りを認め、この本を「懺悔の書」と語っていました。広井良典氏や、橘木俊詔氏も、比較的早くから「経済成長に変わる新たな目標が必要だ」と訴えていました。少し前にブームになったトマ・ピケティ氏も「社会が成熟すればするほど経済成長は鈍化するから労働者の賃金は増えない。反面、お金持ちは投資などで益々資産を増やす。放置しておくと格差は広がる一方だ」と指摘していました。
高額薬剤に関する議論は、単純に言えば、「ケチケチすんな」(業界)、「いや、ない袖は振れない」(財政当局)の押し問答です。診療報酬とか、薬価の論議はいつもこの構図。これが過去何十年も続いている。しかし、もうそろそろ、おしまいにしないといけません。高額薬剤問題は、新薬の値付け、既存薬の改定ルールの変更だけでなく、薬剤の保険給付は今後、いかにあるべきか?社会保障制度の中で、薬物治療はいかにあるべきか?社会保障の財政基盤はこのままでいいのか?等々、幅広い見識と視野を持って進めるべきです。ただ単純に、「もっと金くれ!」「いやだね!」のパワーゲームは限界です。
若者たちも気づき始めています!!【クリックすると動画が出ます】
社会保障費、医療費を専門家と、大人たちだけで議論する時代は早晩、終わります。低次元の世代間対立、極端に先鋭化した政治論争が起こる前に、エゴやインチキを排した、しっかりした議論の土壌を作らねばなりません。
写真はセミ君。雨の中を道のど真ん中を歩いていたので、安全地帯に移動して差し上げました!!8月後半の風景。素敵な一週間をお過ごしください。