武田のタケキャブ投入で胃酸抑制剤市場の競争が激化、一線を踏み外したブロプレス、ディオバンの二の舞にならぬようメーカー、医師、メディアは要注意!!
武田薬品の岩﨑真人取締医薬営業本部長が先週、製薬業界各紙のインタビューに応えて2月に発売した胃酸分泌抑制剤タケキャブの国内売上拡大に意欲を見せています。この領域の薬物治療は、現在、胃酸を出すプロトンポンプという部分を阻害するPPI阻害薬(Proton pump inhibitor)が主流ですが、タケキャブは既存品とは違う働きでプロトンポンプを阻害するP-CAB薬(Potassium-Competitive Acid Blocker : P-CAB)という新しいタイプです。
武田はタケプロンというPPI阻害薬のトップ製品を持っていますが、タケプロンの特許が切れ、後発品がわんさか出てきて市場を侵食されているので、タケプロンとは違うタイプのP-CAB薬である新薬タケキャブを出したのです。新薬ですから、当然、薬価は高いし、特許で守られるので、当面、後発品は出て来ません。安心して市場開拓ができます。
ところがタケキャブの承認申請で武田が提出したタケプロンとの比較試験の結果は「非劣性」。要するに、タケプロンと比べて「劣っていないけど、とくに優れてもいませんよ」ってことなんです。「ニュータイプの胃酸分泌抑制剤です!」ってプロモーションで押しまくれば、医師も「ちょっと使ってみっか」って感じになりましょうが、これってどうですか?
現在、PPI市場のトップ製品ネキシウムを持つアストラゼネカは2000年代初頭にP-CAB薬の開発を進めていましたが、ネキシウムとの比較試験の結果が「非劣性」だったので、「やってもしょうがない」と開発を中止した経緯があります。アストラゼネカ日本法人のガブリエル・ベルチ社長は武田のタケキャブも同じで、「PPIと比べて優位性がないのに一体、どこで使うの?」と疑問視しています。
胃酸分泌抑制剤はタケキャブの登場で激しいプロモーション合戦に突入します。かつて熾烈な宣伝合戦を繰り広げ、一線を踏み外した高血圧治療薬ブロプレス、ディオバンと同じ轍を踏まないようにメーカーのみならず、医師、メディアは要注意です。とくにメディア!!他人事だと思って、提灯記事ばっか書いてちゃダメですよ!変にケチ付ける必要もないけど。
で、写真は、武田(左、左から2番目が岩﨑氏)とアストラゼネカ日本法人(右、真ん中がベルチ氏)の会見風景。ではみなさま、満開の桜ももうすぐです。素敵な一週間をお過ごしください!