医薬分業の規制改革論議は“不完全燃焼”、厚労省はきれいごとばかり並べていないで、過去の政策意図、その成否、現状の問題点を国民にしっかり伝えるべきだ!
政府の規制改革会議が先週12日(木)に行った医薬分業に関する議論は、委員の発言に、思いつきや、準備不足が伺われる場面も多く、正直、物足りなさを感じました。とくに川渕孝一氏(東京医科歯科大大学院教授)には期待していましたが、冒頭で、誰も笑えないジョークらしき“つぶやき”を発したうえ、随分昔に書いた自著の宣伝を繰り返した印象が強く、がっかりしました。また、日本高血圧学会の理事で「まゆみとドクター森下のバイオレディオ」で、御馴染みの森下竜一氏(大阪大大学院教授)も「薬局に行ったら最新の薬が置いてなかった」などと、まさかの“イチ患者”発言(^_^;)、やはり高血圧の専門医としての医薬分業論を聞きたかったです。
しかし、「ついに医薬分業も新たなステージに来たんだなあ」と、感慨深くも思いました。議論全体のトーンが、医薬分業がいいとか、悪いとか、単純な二元論に陥ることなく、医薬分業が70%近くなった現状を認めたうえで「どうしたらもっと国民のためになる仕組みにできるのか」という建設的な方向で進められたこともよかったです。いわば、医薬分業の質的向上、改善論です。(その点において、土屋了介氏=神奈川県立病院機構理事長の発言が最も大人で深みがありました)
病院や診療所とは別の薬局と言う存在が間に入る以上、院外調剤のコストが院内調剤より高いのは当たり前ですが、そのコストが高すぎるのか。少ないのか。調剤料、調剤基本料、薬歴管理料、その他加算など、細切れになっている報酬はそれぞれ適切なのか。そこは大いに議論すべきです。ただ、ここは注意しないと、単に、医科と調剤のお金の分捕り合いになり、結果、医科にお金が移動しただけということになりかねません。
それから医薬分業がなぜ始まったのか?規制改革会議の議論では正しい説明がありませんでした。その昔、病院、診療所が保険薬価より、滅茶苦茶安く医薬品を購入し、その差額を自分たちの収入にしていました。大きな差額が欲しいがために、患者を蔑にして、必要がない薬を使ったり、できるだけ差額が大きい薬を使ったりする傾向が一部にありました。メーカー、卸もある意味、そういう状況を黙認し、病院、診療所の“薬価差稼ぎ”に加担していました。それで旧厚生省が「これはいかん!病院、診療所から医薬品の購入を引きはがせ!」ってんで本格的に医薬分業推進に舵を切り、もう30年近く一心不乱に、病院、診療所、そして薬局に「薬価差で稼がなくても、医薬分業をすればお金が儲かりまっせ」と医療保険財源から出す報酬で誘導してきたんです。で、取り合えず病院、診療所からの薬の引きはがしは成功しました。が、一方で、医療保険という絶対つぶれない市場で、ほとんどリスクなく確実に稼げる調剤ビジネスの旨味に、目を付けたお金持ちの株式会社がドカドカ参入し、「魂なき調剤」を普及させた。で、時代遅れで、論理矛盾を来している継ぎ接ぎだらけの調剤報酬点数、そして調剤だけやって、あとは何にもしないロボットみたいな血の通わない変な薬局が沢山、出て来ちゃたんです。
こういう時代背景、医療環境、政策面での流れを厚労省はなぜ、説明しなかったのでしょうか?せっかく、規制改革会議が公開の場で議論のテーマに載せたのです。「医薬分業は患者にとっていいことです」なんてきれいごとだけ言ってごまかすのはまずいでしょう。過去の政策の意図、その成否、現状の問題点を国民にしっかり伝えるべきです。じゃないとしっかりした議論ができない。
写真は都営大江戸線、赤羽橋付近。通りがかりにふと、見上げたら東京タワー!!堂々のお姿。遠くから眺めると、いいですね。中はどうってことないけど(^_^;)。それから有楽町のガード下。「貝」「馬」そしてかなたに「牛」いい感じです。春目前の都内の夜景でした!ではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください。気が付けばもう3月中旬、満開の桜がもうすぐですね!