武田薬品のブロプレス問題は「全死亡率のグラフ」も見逃さないで、調査、検討すべきだ!!
こんにちは!お元気ですか?で、早速ですが、昨日の続き。武田薬品が、高血圧治療薬ブロプレス(カンデサルタン)にまつわる不正疑惑で、ジョーンズ・デイ法律事務所(JD)に依頼した調査報告書の件です。
不正疑惑のきっかけは武田がプロモーションに使った販促資材なんですが、この販促資材について報告書は、全て一人の社員の判断、責任で作成したとした点、また、極めて限定的な調査であるにもかかわらず「薬事法違反には当たらない」と断定した点には、率直に言って大いに疑問が残ります。
報告書は、販促資材について「実質的に、医薬学術部グループの主席部員であったU氏が、単独で(略)全ての販促資材を制作を担当していた」とし、U氏の直属の上司については「制作された販促資材の最終確認を行うのみであり、(略)実質的に関与していなかった」と指摘、プロモーションの責任者X氏には「いつ、いかなる内容の販促資材を制作するか(略)具体的な決定をU氏に一任していた」と断定しています。要するに、U氏以外はお咎めなし。U氏の直属の上司や、プロモの責任者はJDから聞き取り調査された時、「ちょっ、なんすか?私?関係ないですよぉ。全然、知らなかったんですよ。私はあ~。ただ使ってもいいよ、ってハンコをついただけです。ええ、ええ、中身なんか、イチイチ見てられませんよ。忙しいですからね、いっつも。ほとんど見てないですから。中身なんか。よく知りません。。。。」とでも、言ったんですね。きっと(失礼。ここは飽くまで己の想像です!)。。果たして、そんなことあっていいんでしょうか?今後、何か責任を問われても「全てU氏が悪い」と、トカゲの尻尾切りになってしまう可能性があります。何か嫌あ~な感じですね。これ。JDさんには、もう少し突っ込んで欲しかったですね。
で、もう一つ。この販促資材について報告書が「薬事法違反に当たらない」と、踏み込んだ表現を用いている点。本来、法律違反に当たるか当たらないかは、司法当局が判断するものであって、この段階で、武田の依頼を受けたJDが調査報告書に書くべきだったのか?記者会見で質問したら「その点は、武田に依頼されたから」と言ってましたが。。ちょっと踏み込み過ぎの感じがします。
しかも、判断の前提となるJDの調査は極めて限定的なんです。まずは、ここが肝なんで、丁寧に書きますよ。
まず販促資材の何が疑惑を呼んだか?改めて説明すると以下です。
心血管イベントと全死亡率の発現率は、統計学上、カンデサルタンもアムロジピンも有意差がない(同等という意味)が、武田の販促資材には、視覚的に、あたかもカンデサルタンの方が有意に抑えるように見えるグラフが掲載されていた。グラフは、カンデサルタンとアムロジピンのイベント発現率の経時変化を、2本のラインで示している。心血管イベントも全死亡率も、途中までは、若干、アムロジピンの方が抑えているように見えるが、30か月を超える辺りで、双方のラインが交差し、その後、カンデサルタンの方が抑えているように見える。それが疑惑を呼んだ。武田の販促資材は、研究代表の大学教授などの写真を添えたうえで、グラフの交差部分を「ゴールデンクロス」と称し、「より長期に使うことでイベントの発現が減少していく」と明記していた。【RISFAX6月23日号から抜粋】
ということで、疑惑を呼んだグラフは心血管イベントと全死亡率の2つなんです。しかし、JDは、心血管イベントのグラフのみに着目して調査をしました。【右上、図2のグラフ】その結果、カンデサルタンの方が良く見えるようになったラインのズレは、販促資材の制作過程で、偶然、生じた可能性もあり、それほど大きくない。また、30か月を超えるとカンデサルタンが良くなる可能性も「示唆される」との表現で、断定はしていない。だから、医師である専門家なら、この販促資材に引っ張られて、「カンデサルタンの方がいい」って勘違いするようなことはない。拠って「薬事法違反に当たる虚偽、誇大広告には当たらない」と。こう結論付けたわけです。
しかし、もうひとつのグラフ。全死亡率はどうですか?【右上、図3のグラフ】このグラフ。明らかにカンデサルタンが良く見えます。これは「制作過程で偶然ズレちゃっただけ」ってもんじゃないですよ。しかも、このグラフ。カンデサルタンが良く見えるように、心血管イベントで「10%」になっていた縦軸を、わざわざ「5%」に引き延ばして見せています。死亡率の差ですよ?臨床で忙しい医師に与える視覚的な印象は、こっちのがはるかに強烈でしょう。
販促資材では、心血管イベントのグラフの真下に並べてあります。【右写真】JDさんは、なんでこっちのグラフも調べてくれなかったのか?この差がなんでできたのか?これも調査して欲しかった。それに販促資材には「より長期に使うことでイベントの発現が減少していく」と明記してあるのに、報告書では、この点も不問に付しました。【右写真】
とはいえ、JDの報告書で新たにわかったことも沢山、あります。一番衝撃的だったのは、5ページ目の「証拠の保全」の部分。【右写真】JDの調査が入る前に、武田薬品は、関連部局のスタッフに向けて、今回、疑惑を呼んだ試験の「関連資料、印刷物の削除・廃棄を要請する社内通知を発信していた」との事実を明記、「検討対象となりうる資料が削除・廃棄された可能性がある」と訴えています。これはどうですか?調査前に、関連資料を全て捨てるよう通知しちゃってたんですよ。こんなのありですか?真相解明しようとしても、もう、ほとんど資料は残ってないですね。きっと。なんだか書いていて嫌な気分になってきました。
うーん!気を取り直して!!行きますよ!みなさま、素敵な一週間をお過ごしください!