武田薬品が“青い目”の次期社長を決定、英GSKのウェバー氏に寄せる期待
武田薬品がとうとう青い目の社長を迎えることになりました。英グラクソ・スミスクライン(GSK)のワクチン部門トップ、クリストフ・ウェバー氏(47)。日本の製薬企業が外国人を社長にするのは初めてのこと。その昔、先代の武田國男前社長に次期社長候補を聞いたら「まだはっきり決めてない。でも社内に候補がいなきゃ外から持ってくりゃいいんや。別に日本人やなくても。青い目でもいいんや」とおっしゃっていたのを思い出します。ホントに実現しました。ちなみに47歳って若いようですが、外資系企業では珍しくない。あ、日本でも確か手代木功氏の社長就任時(08年)が47歳でした。
で、写真みてください。めちゃくちゃガタイよさそう。まるでフットボールか、野球選手みたい(笑)。ガンガン押してきそう(笑)。まあ、いま日本の製薬企業はどちらかというと研究開発畑で感情を表に出さない至ってクールでそつがない「草食系」ムードの経営者が多いので、ものすごく新鮮です。この姿。気迫が漲っていていいじゃないですか!!(ちなみに広報に「身長どのくらいあるんです?」って聞いたら、「まだ当社にはいないので、わかりかねます」と。。。「目算でもいいですから」ってしつこく聞いたら「すみません。まだ会ったことがございません」とのこと。お忙しいところ、ご対応ありがとうございました。拝)。93年にGSK(当時スミスクライン・ビーチャム)に入社し、11年から同社ワクチン社社長兼CEOでGSKの生え抜きです。長谷川社長がの信頼を寄せるタチ山田氏(本名=山田忠孝、現取締役 チーフ メディカル&サイエンティフィック オフィサー)がGSKの研究開発部門トップ兼取締役だったのが96〜06年ですから、タチ山田は、ウェバー氏のことを新米の頃から知っていて、成長ぶりを買っていたのかも知れません。ちなみに、一時、次期社長候補と噂があった平手晴彦氏(現コーポレートオフィサー・北アジアコマーシャル責任者)の前身はGSK日本法人専務(07〜10年)でした。偶然かも知れませんが、GSKとの縁が続いていますね。
長谷川閑史社長は、来年6月の株主総会の了承を得て、ウエバー氏を社長兼COO(最高執行責任者)とし、自らは会長兼CEO(最高経営責任者)となり、1年間、ウェバー氏の仕事を見極めたうえで再来年(15年)にCEOの席を譲る考えです。経済同友会代表幹事の任期が15年4月に切れますので、その時に合わせて、財界そして企業経営からきれいに身を引こうと考えていらっしゃるようです。
長谷川氏は03年6月に社長に就任して10年。08年4月、抗がん剤開発で誉れ高い米国ミレニアムを約8800億円で買収、次いで11年5月、新興国への販路確保を狙ってスイスのナイコメッド社を約1兆円で買収しました。製薬業界では過去にない巨額買収で、各社はみんな驚いてぶっ飛びました。でも、なかなか新薬が出ない。営業利益率は過去最高35%超でしたが、いまや8%近くまで落ち込んでしまった。13年3月を「底」に「V字回復」を目指すと公言していたが、必ずしも順調とは言えない。ここ最近は、「そもそも財界活動と社長業の二足のわらじは無理」との批判が、証券アナリストやマスコミのみならず社内からも上がるようになっていました。長谷川社長からすれば「V字回復」に道筋をつけて、次期社長発表、としたかったでしょうが、持たなかった。それでちょっと早いですが、この時期に公表となったと思われます。
ただ、日本の製薬企業経営も、これまでの発想を超えた新しい時代に入るのかも知れません。「かも知れません」と書くのは、武田のケースは確かに新しいが、まだ成功するかどうかわからないからです。ウェバー氏の社長起用の狙いは当然、海外事業強化です。しかし、世界第二位の日本という市場はどうするのか?その特殊性を考慮して、外資系企業の日本法人でさえ、いまなお社長を日本人にする会社が多い。ファイザー、ノバルティスファーマ、中外製薬などがそうです。一方、GSK、サノフィ、MSDなどは日本法人も外国人社長がオペレートしていますが、サノフィのフォシェ前社長がGSKの社長になっちゃったり、GSKのデュノワイエ前社長が英国アストラゼネカの役員になっちゃったり、「それってロイヤリティや、機密保持の点でどうよ」って状況になっちゃっています。外国人社長は、所属企業への関わり方や雇用に関する考え方が根本的に違うのです。武田のウエーバー氏起用を、己(オノレ)は個人的に明るく新鮮なニュースとして受け止めています。しかし、当然ながら、その成否は、時間を掛けてじっくり見極めるべきでしょう。
で、もう一点の写真、タクシー内から撮影。健康保険組合連合会の街宣車(って言っていいですよね、笑)。白川修二専務理事が先日、セミナーで「高齢者医療への拠出金負担で健保連の財政が著しく悪化している。なのに政府は高齢者医療問題を真っ向から議論しようともしない」って訴えていたのを思い出しました。至極、ごもっともな正論でございます。しかし、いまこの時期の街宣活動。診療報酬改定論議で、診療側から「そんなこと言って、街宣車走らせちゃったりして。支払い側、結構、お金あるやない。よこさんかい」とか突っ込まれやしないか?いささか心配です(笑)それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。