武田の肥満症治療薬「オブリーン」がまさかの保険適用拒否、業界に広がる「同情」と「危機感」
中央社会保険医療協議会が先週13日の総会で、武田薬品の肥満症治療薬「オブリーン」の保険適用を拒否しました。理由を簡単に言ってしまえば「あんまり効き目がないから」。体重減少効果が対プラセボ比で2%なんで、確かに効果が高いとは言えませんが、こういうケースはいまだかつてないことです。武田には追加データ(脂質減少効果の証明など)が求められていますが、過去に実施した治験データのサブ解析で済むのかどうか。11月の新薬薬価収載は19日ですから、少なくともそれには間に合わない。保険適用の可否の判断は来年に持ち越しになるかもしれません。
同業他社には同情的な意見が多いようです。「開発が難しい肥満症領域で、やっと出した新薬が中医協で拒絶されるなんて・・・」。もちろんトップ企業、武田の製品がこういう扱いを受けたのです。明日は我が身という危惧もあるでしょう。
日本では薬事承認を経て製造販売承認を得たものは、ほぼ自動的に保険収載されてきました。ただ、例外がなかったわけではありません。例えば99年に薬価収載されたファイザーの勃起不全治療薬「バイアグラ」。医療用医薬品として承認を得ましたが、「疾患治療というより、生活改善に近い」と判断され、保険適用はされませんでした。にしても、中医協にかける前に厚労省が日医、日薬、学会などに事前相談し、メーカーも了解して決めたことです。一方、今回の「オブリーン」は水面下での調整はなく、聴衆が見守る中医協という大舞台で、袋叩きに会い、最終的に保険適用拒否という憂き目に遭いました。議論の透明性担保という点では、バイアグラより数段、いいのですが、武田のショックは大きいでしょう。しかし、繰り返しますが保険拒否の理由は「効き目があんまりないから」。「だったら、承認すんなよお〜〜っ」て思うのは己(オノレ)だけでしょうか。厚労省の審査部門と、保険部門の「省内不一致」とも言える事象です。仲悪いんでしょうか?
で、写真は中医協が開かれた13日に撮影。1番目は出陣前、己の部屋に差し込む朝の光。で2番目。6時半に家を出て厚労省に到着しましたが、順番を待つ中医協傍聴者はすでに100人超。階段のところにこんなに鞄が置いてあります。3番目は、今回、オブリーンに厳しい裁定を下した中医協委員の先生方です。ではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。