高血圧治療GL原案、心筋梗塞二次予防で、ようやくARBの劣性を認めて格下げ、ACE阻害薬を第一選択薬に
先週、大阪で開かれた第36回日本高血圧学会総会に行ってまいりました!!!いやあ〜、ものすごっ、勉強になりました。最大の目玉は5年に一回見直される治療ガイドラインの原案。最終日(26日)の特別シンポで、各分野の作成委員の先生方が改訂ポイントを説明しました。過去4年半の高血圧治療の進化を凝縮した大変、重みのある内容に仕上がっています。で、あちこちで、トップニュースとして報ぜられるのは「β遮断薬が第一選択薬から陥落」という点ですが、これはほぼ規定路線だったし、積極的使用が認められている心不全や、狭心症などでは、別に初めから使ってもいいわけですから、己(オノレ)は「へっ?そこいきますか?そこ、そんな強調するところですか??」って、思ってしまいます。そもそも日本の降圧剤市場でβ遮断薬は9%しかシェアがないんですから、GLがどうあれ実地医家の先生で第一選択薬としてβ遮断薬を使っているケースは、現時点でも、ほとんどないと見るべきでしょう。それよか、ずっと「効果は同じ」とされてきたACE阻害薬とARBで、一部ARBの劣性を認めた点に、己(オノレ)の心は打ち震えました。(RISFAX28日号をご覧ください)ARBは配合剤を合わせて降圧剤市場シェア55%、日本の医薬品市場で最も売れている薬の王様です。そこにケチがついたわけです。心筋梗塞の二次予防と、心不全(収縮期起因)ではACE阻害薬の優位性を認め、ARBを第二選択薬に落としたのです。日本循環器学会のGLでは、すでにそうなっていたのですが、なぜか高血圧学会GLは「同等性」ばかり強調していた。しかし、一部にすぎませんが、ここに来て、ようやくARBの劣性を認めたのです。ノバルティスのエプスタンイン社長は10月3日の記者会見で「私はあらゆる点でARBの効果はACE阻害薬と同等。むしろARBの方が優れている」という立場を強調していましたが、高血圧学会の新GLが施行されれば、少なくとも日本では、エプスタン社長の主張は、支えを失います。
それから今回のGL原案の取材で「さずが腕利きの専門医が議論しているだけあるな」と思う点と、「え?専門医でもそうなっちゃうんだ」と思った点があります。「さすが」と思ったのは痛風を併せ持つ患者の治療で「禁忌」だった利尿剤を「慎重投与」に変更する方向になったことです。利尿剤は、もっともエビデンスがあって価格も安いのですが「尿酸値を上げる」という理由で、使用頻度が激減しています。しかし、腕利きの専門医たちは、さじ加減や、他剤併用で、尿酸値をコントロールする術を身につけています。これで良くなるなら患者の懐にも優しい。「禁忌にしてもらっちゃ困る」というわけです。とはいえ、GLに頼るのは実地医家の先生たちですから、利尿剤の失地回復に際しては専門医の技を広く普及させる必要があるかも知れません。一方、「なんで?」と思ったのは、配合剤の扱い。GL原案作成過程で「中高度の高血圧で、併用を第一選択薬で認めているんだから配合剤も第一選択薬にすべき」と意見が上がったというのです。複数の薬を併わせて使う併用治療は、その患者ごとに一番、適切な薬の組み合わせを、各薬剤の用量を慎重に探りながら進めます。しかし、配合剤だと、中に入っている複数の薬の用量が固定されているので、微妙な調整ができません。にもかかわらず「別に第一選択薬で使ってもいいじゃない」っていう声があがったというのですから、驚きです。患者からすれば「そんな乱暴な投与は堪忍やでぇー」って気持ちです。もっとも、この主張は受け入れられず、新GLでは実現しない方向になっているので、一安心です。さて12月の最終版がどうなるか。ウォッチを続けてまいります。
で、写真はすべて大阪で撮影。1番目は「たまにはお前自身も登場しろ!」という有りがたいリクエスト(?笑)にお答えして、大阪国際会議場のエレベーター内で、己自身を撮影。2番目は今回執筆や調べ物をする際に使ったリーガロワイヤルホテルの茶店(景色が最高です!!)。3、4番目は宿泊したホテルの近くにあったバルPIKOの外観と、内部です。ここは食事もおいしかったし、来てる客が皆さんフレンドリーで楽しかった!!マスターに感謝!というわけで実り多い大阪主張でした!!大阪サイコー!!台風上がりの晴天!自分はこんな気分です。クールスのカルフォルニアブルースカイ(音が出ますので、注意!!)。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。