ディオバン問題、専門メディアも再考の好機
ディオバンの不正論文で、国内臨床研究の問題点が明るみに出ました。メーカー、大学、学会の関係者が厳しい追及を受けています。しかし、かねがね主張しているように己(オノレ)は、専門メディアのビジネスモデルにも問題があると考えています。
ディオバン問題の背景には、奨学寄附金と医師主導臨床研究がありました。本来、奨学寄附金は善意で大学に納めるべきなのに、メーカーは「自社製品に寄与する研究をしてほしい」という強い意図をもって納めていました。これでは「寄付」ではありません。「委託費用」です。また、医師主導臨床研究にも問題がありました。本来、臨床医が「メーカーはやりたがらないけど、臨床上どうしても必要だ」というやむに已まれぬ職業意識で実施するのが医師主導研究なのに、実際は奨学寄付金を受けたメーカーの意向をどうしても払しょくできない。要するにメーカーが払う奨学寄附金と医師主導研究は「別物」というのは建前でしかなく、実際は「ヒモ付け」されていたわけです。
同じようなことは専門メディアのビジネスモデルにも言えるのではないでしょうか?一口に「広告」といいいますが、「広告」にもいろんな形態があります。メーカーの製品広告は、シンプルでわかりやすいから、まあ、いい方ですが、もっともタチが悪いのはメーカーの依頼を受けて取材執筆する学会発表記事や座談会という形態です。メーカーから莫大な掲載費をもらって記事を載せます。実は、これは「記事まがいの広告」なのですが、読者からしたら「広告」なのか、公正、公平な「記事」なのか判然としない。記事のうえにちょこっとメーカー名を載せたからといって、そんなものはほとんど意味を成しません。座談会に参加した学会の重鎮には掲載した媒体の編集部から謝礼が払われることもあるようです。記事の執筆、構成は概ねその編集部がやります。要するに、メーカーとメディア編集部はこの時、「協業関係」にあるわけです。メーカーから取材、執筆、記事掲載費として膨大な費用を受け取って「国際学会取材」を理由に、足しげく海外に渡航。実際の取材執筆は、シモジモの記者に任せて自分は、ほとんどお気楽、観光気分。帰国しても社会科見学程度のアリバイ記事しか書かない自称、“国際学会通”の「お偉いさん」もいるようです。
専門メディア側はよくこう反論します。「編集部のジャーナリズムと、営業の広告は全く独立して存在しているから相互に影響を受けない。ご心配なく」と。。しかし、同じ会社の同じ媒体で、記事と、「記事まがいの広告」を載せていて、果たして、こんな論理が一般の人に通用するでしょうか?奨学寄附金と臨床研究のように「関係ない」といいながら、その実は、つながっている。かなり「グレイ」であると、色眼鏡で見られても仕方がない構造ではないでしょうか?
メーカーが、なぜ専門メディアに「記事まがいの広告」(タイアップの学会発表や座談会)を載せたがるのか?よく考えれば誰にだってわかる。通常の記事が掲載されている紙面に、「記事まがいの広告」を載せると、宣伝効果が強まると考えているからです。要するに、記事なのか広告なのか読者が混乱して、広告なのに記事と錯覚してくれるからこそメーカーはその媒体に掲載費を払う意味があるのです。
多くの専門メディアは、これまで「みんなやっている」という理由で、「記事まがいの広告」を掲載してきました。しかし、構造問題は「みんなやっている」ことの中でこそ、すくすくと育っていくものです。(余談ながら「みんなやっている」ことを疑う気概がなければイノベーションも起こりえません)。で、今回の一件で、表面的な奨学寄附金はやめて、できるだけ委託研究に改めようという機運が出てきています。専門メディアも、ビジネスモデルを再考する時期です。少なくとも「記事まがいの広告」は通常の記事とは切り離す必要があるのではないでしょうか?「記事まがいの広告」であることをはっきり謳った「記事まがい広告」だけの媒体を立ち上げるのも一考だと考えますが、どうでしょうか?いや、決して冗談でなく。。まじめに。。。
で、写真は品川プリンス39階のラウンジ。トップオブシナガワで撮影。ここのケーキセットはかなりボリュームがあります。では皆様、素敵な一週間をお過ごしください。