ディオバン問題、いまさら大学、学会、専門メディアが「知らなかった」はないでしょ。
ディオバンを巡る臨床研究の不正問題。「データに人為的操作があった」という一点だけに着目して議論してはなはならないと考えます。大学、学会、専門メディア関係者の言い分は概ね「よもやデータ操作があったとは知らなかった。だから我々も騙されただけだ」というものですが、果たしてそうでしょうか?というのは慈恵医科大、京都府医科大の試験結果はデータ操作の発覚以前から、一部の専門家の間で「おかしい」という声があがっていたからです。この時、専門家たちが疑念を抱いたのはデータの人為的操作ではありません。試験のデザインそのものに致命的な問題があると訴えていたのです。試験は、医師も患者も投与する薬(ディオバンか、非ディオバンか)を知っているオープン法で実施したのに、本来は、エンドポイントに使ってはいけない「狭心症による入院」「心不全による入院」があったのです。入院させるかどうかは医師の判断次第なので、バイアスが働いてディオバン群の入院が少なくなる可能性があると。。端的に言えばデータ操作があろうがなかろうが、バイアスで結果が良くなってしまいかねないデザインになっていたのです。慈恵の試験結果については東大の山崎力教授が09年に発刊した著書で「限りなく黒に近い灰色」と断言していました。また、府立医大の試験結果が発表された09年の欧州心臓病学会では、座長を務めたスイスの医師が「本当にしてはかなり良すぎる」と冷ややかなジョークを飛ばしました。東京都健康長寿医療センターの桑島厳顧問ら、臨床研究適正評価教育機構に名を連ねる先生方も、アチコチで問題点を指摘していました。ですから一連の試験結果はもともと曰くつきだったのです。「専門家」たるべき大学、学会、専門メディアが、この試験を「誇る」あるいは「讃える」なら、本来、あらかじめ慎重かつ冷静にこの試験を検証し、むしろ自らの本業である「専門性」に則って警鐘を鳴らすべきだったのです。いずれにせよ、こと医薬品の臨床研究に関しては大学、学会、専門メディアの「専門性」は、かなり怪しく、あまり当てにならないということを露呈してしまいました。前出、桑島氏は7月24日の記者会見で、英国医学誌ランセットが、かつてひどい試験結果(ディオバンではない)を載せたことを紹介し、「論文査読者と雑誌編集者は新しい知見を発刊する前にはもっと慎重であるべき。そして誤りがあったら速やかにミスを認めなければならない」と述べました。大学、学会、専門メディアは、いまさら「我々も犠牲者」なんて言っちゃだめだと思います。で、己(オノレ)の主張は医薬経済8月15日号にしっかり書きました。是非、ご一読を。
で、写真は近くの公園で撮影。恐竜が生々しく迫力があるでしょ?実はこの公園、リニューアル工事中でブランコとか、ジャングルジムとか一時的に全部撤去され、恐竜だけがそのまま置かれています。かえってリアルで、怖い!!!ではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。