武田の肥満症治療薬「オブリーン」がまさかの保険適用拒否、業界に広がる「同情」と「危機感」

中央社会保険医療協議会が先週13日の総会で、武田薬品の肥満症治療薬「オブリーン」の保険適用を拒否しました。理由を簡単に言ってしまえば「あんまり効き目がないから」。体重減少効果が対プラセボ比で2%なんで、確かに効果が高いとは言えませんが、こういうケースはいまだかつてないことです。武田には追加データ(脂質減少効果の証明など)が求められていますが、過去に実施した治験データのサブ解析で済むのかどうか。11月の新薬薬価収載は19日ですから、少なくともそれには間に合わない。保険適用の可否の判断は来年に持ち越しになるかもしれません。

同業他社には同情的な意見が多いようです。「開発が難しい肥満症領域で、やっと出した新薬が中医協で拒絶されるなんて・・・」。もちろんトップ企業、武田の製品がこういう扱いを受けたのです。明日は我が身という危惧もあるでしょう。

日本では薬事承認を経て製造販売承認を得たものは、ほぼ自動的に保険収載されてきました。ただ、例外がなかったわけではありません。例えば99年に薬価収載されたファイザーの勃起不全治療薬「バイアグラ」。医療用医薬品として承認を得ましたが、「疾患治療というより、生活改善に近い」と判断され、保険適用はされませんでした。にしても、中医協にかける前に厚労省が日医、日薬、学会などに事前相談し、メーカーも了解して決めたことです。一方、今回の「オブリーン」は水面下での調整はなく、聴衆が見守る中医協という大舞台で、袋叩きに会い、最終的に保険適用拒否という憂き目に遭いました。議論の透明性担保という点では、バイアグラより数段、いいのですが、武田のショックは大きいでしょう。しかし、繰り返しますが保険拒否の理由は「効き目があんまりないから」。「だったら、承認すんなよお〜〜っ」て思うのは己(オノレ)だけでしょうか。厚労省の審査部門と、保険部門の「省内不一致」とも言える事象です。仲悪いんでしょうか?

で、写真は中医協が開かれた13日に撮影。1番目は出陣前、己の部屋に差し込む朝の光。で2番目。6時半に家を出て厚労省に到着しましたが、順番を待つ中医協傍聴者はすでに100人超。階段のところにこんなに鞄が置いてあります。3番目は、今回、オブリーンに厳しい裁定を下した中医協委員の先生方です。ではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。

 

 

 

 

中医協で袋叩きにされる「世界先駆け加算」、イマイチ説得力に欠けるのは業界の準備不足か、時代錯誤か

 14年度薬価制度改革に向けた製薬業界の提案。のっけから苦戦しています。象徴的なのは「世界先駆け加算」。世界に先駆けて日本で初めに承認を取得した新規作用機序を有する新薬について、通常の計算式で設定した保険薬価に、いくらか加算して高く評価して欲しいというものです。中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、支払い側、診療側、公益側から、「なんで日本で一番最初に承認を得たからと言って薬価を高くしなければいけないの?我々は、その理由が全くわかりません!!」って、はねつけられています。この種の提案が出ると、毎回こんな感じになっちゃって、中医協委員と業界の意見は平行線を辿ります。業界は、医薬品産業育成に前向きな安倍政権(実はまだ本当のところはわかりませんが・・・)を背景に、薬価制度に産業育成的な評価を持ち込もうとしています。しかし、中医協委員の先生方は、概ね「なんで公的な医療保険制度の財源を使って医薬品産業を育成しなきゃいけないの?産業育成するなら税制とか、補助金とか別の手法があるっしょ!」って立場です。だから根本的に折り合わないのです。

ただ、それは別としても今回の業界提案は、ちょっと唐突かつ準備不足のような気がします。業界は「世界初で加算といっても新規作用機序の薬だけが対象です。わかってくださいよ。先生!」と説得していますが、本来、新規作用機序なら革新性が高く類似薬がないので原価計算方式の対象になるんじゃないでしょうか?原価計算ならもともと加算は付かない。十歩譲って、新規作用機序だけど、類似薬があるということを前提にすれば、その薬の革新性は、それほど高くはないということになってしまい、中医協委員の先生方がおっしゃる通り「へっ?日本で初めて承認取っただけでなぜ加算しなきゃいけないのお?」ってなっちゃいます。

それと、常日頃、お世話になっている日薬連保険薬価研究委員会の諸先輩方には、申し訳ないんですが、もしかしたら時代にマッチしていないんじゃないかと。。。そんな懸念もあります。なぜなら、いまはもう、いわゆるドラッグラグが解消に向かっていて、海外では使えて日本では使えない医薬品はほとんどなくなってきた。で時代は、もはや日米欧、あるいは世界同時申請、同時承認です。製薬企業の使命は、国籍、国境分け隔てなく、世界各国の困っている患者さんに、いち早く革新的な医薬品を届けることです。「できるだけ日本での承認申請を優先しなさい。優先したら薬価高くしてあげっからね」なんて制度を組み込んだら、国際的に顰蹙を浴びるかも知れませんよ。

「世界先駆け加算」。実は、これ、新薬創出加算の前身である薬価維持特例を提案していた09年に要請していたんですよね。当時は確か薬価維持特例の実現を最優先するということで、引っ込めたという経緯があった。でいま、安倍政権が業界に結構、いいこと言っているから、もう一回出したということなんでしょう、きっと。しかし、09年から早5年。時代は変わっちゃいました。むしろ09年なら、ドラッグラグがあったから、今よりは説得力を持ち得たかもしれません。

で、写真は11月6日の中医協薬価専門部会風景。そしても一枚はカマキリ君です。この方、近所のアスファルトの道路をとぼとぼ歩いておりました。そのままでは事故に遭われるのが確実なので、身柄を確保し、花壇に避難していただきました。とはいえ、この都会のコンクリートジャングル。大きな草原はございません。この先の長い道中、油断はなりませんぞ。どうか御達者で!!と祈るばかりです。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!

あ、それと来週18日と、20日、講演します。精一杯話します。良かったら是非、ご参加ください!!

 

 

滋賀医大は自らの杜撰さを認め、ノバルティスを追及せず。薬害オンブズパーソン会議は刑事告発で真相の徹底解明促す。

素晴らしい朝。カーテンを開けると、待ってましたとばかりに、まぶしく暖かな太陽の光がすうっと差し込んできました。いいですね!この感じ。さて、先週末はディオバン関連の取材が続きました。まず10月31日、ディオバンの臨床研究「SMART」について滋賀医科大が記者会見を開き、調査結果を公表しました。カルテデータと、論文データの食い違いが10%あり、結果、ディオバン群が良く見えるようになっているので「恣意性は否定できない」としましたが、調査対象となった研究者たちの言い分は「誤入力」。つまり「間違えちゃったあ!」というものです。

ノバルティスの社員が「わざとやった」(要するに捏造)という痕跡は発見できず、ただただ自分たち大学の臨床研究体制の杜撰さを認める結果になりました。そういう点で、「何者かがデータをいじった」(京都府医大)、「元社員がさわった可能性が高い」(慈恵医大)とする他大学調査結果とは、一線を画しています。

 で、会見後、京都に一泊、1日朝、東京に戻って一件、打ち合わせを終え、司法記者会で、薬害オンブズパースン会議が開いた記者会見に参加。誤ったデータで広告宣伝したノバルティスを、「国民を欺く虚偽、誇大広告を流布した」ということで刑事告発したのです。罪状は薬事法第66条違反(2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金)と不正競争防止法第21条違反(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金)です。法的な処分については、早くから薬事法違反の適用を求める声がありましたが、もうひとつが不正競争防止法違反とは。。。「薬事法違反で駄目なら、独禁法第2条違反(欺瞞的顧客誘引)で処分せよ」って主張がありましたが、実は独禁法違反には「排除措置命令」(問題の行為をやめなさいという命令)しかなくて、刑事罰がないんですよね。だから告発しようにもできない。で不正競争防止法違反で告発したってわけです。薬事法違反では、厚労省が現在調査中なんで「今回の刑事告発は、先取りですね」って聞いたら、オンブズパースンの鈴木利廣代表は「先取りではない。厚労省の動きが遅いだけ」っておっしゃっていました。厚労省は「やるべきことをしっかりやるだけ」との立場です。どうあれ、いろんな角度からの調査が進むことで、より細かく実態解明が進むことを期待したいです。

で写真は会見する滋賀医科大の調査委員長・服部隆則副学長、記者会見風景、薬害オンブズパースン会議の面々です。ではみなさん!!素敵な一週間を。。。ひぇーっ!もうこんな時間!やばあー!

 

 

高血圧治療GL原案、心筋梗塞二次予防で、ようやくARBの劣性を認めて格下げ、ACE阻害薬を第一選択薬に

 先週、大阪で開かれた第36回日本高血圧学会総会に行ってまいりました!!!いやあ〜、ものすごっ、勉強になりました。最大の目玉は5年に一回見直される治療ガイドラインの原案。最終日(26日)の特別シンポで、各分野の作成委員の先生方が改訂ポイントを説明しました。過去4年半の高血圧治療の進化を凝縮した大変、重みのある内容に仕上がっています。で、あちこちで、トップニュースとして報ぜられるのは「β遮断薬が第一選択薬から陥落」という点ですが、これはほぼ規定路線だったし、積極的使用が認められている心不全や、狭心症などでは、別に初めから使ってもいいわけですから、己(オノレ)は「へっ?そこいきますか?そこ、そんな強調するところですか??」って、思ってしまいます。そもそも日本の降圧剤市場でβ遮断薬は9%しかシェアがないんですから、GLがどうあれ実地医家の先生で第一選択薬としてβ遮断薬を使っているケースは、現時点でも、ほとんどないと見るべきでしょう。それよか、ずっと「効果は同じ」とされてきたACE阻害薬とARBで、一部ARBの劣性を認めた点に、己(オノレ)の心は打ち震えました。(RISFAX28日号をご覧ください)ARBは配合剤を合わせて降圧剤市場シェア55%、日本の医薬品市場で最も売れている薬の王様です。そこにケチがついたわけです。心筋梗塞の二次予防と、心不全(収縮期起因)ではACE阻害薬の優位性を認め、ARBを第二選択薬に落としたのです。日本循環器学会のGLでは、すでにそうなっていたのですが、なぜか高血圧学会GLは「同等性」ばかり強調していた。しかし、一部にすぎませんが、ここに来て、ようやくARBの劣性を認めたのです。ノバルティスのエプスタンイン社長は10月3日の記者会見で「私はあらゆる点でARBの効果はACE阻害薬と同等。むしろARBの方が優れている」という立場を強調していましたが、高血圧学会の新GLが施行されれば、少なくとも日本では、エプスタン社長の主張は、支えを失います。

それから今回のGL原案の取材で「さずが腕利きの専門医が議論しているだけあるな」と思う点と、「え?専門医でもそうなっちゃうんだ」と思った点があります。「さすが」と思ったのは痛風を併せ持つ患者の治療で「禁忌」だった利尿剤を「慎重投与」に変更する方向になったことです。利尿剤は、もっともエビデンスがあって価格も安いのですが「尿酸値を上げる」という理由で、使用頻度が激減しています。しかし、腕利きの専門医たちは、さじ加減や、他剤併用で、尿酸値をコントロールする術を身につけています。これで良くなるなら患者の懐にも優しい。「禁忌にしてもらっちゃ困る」というわけです。とはいえ、GLに頼るのは実地医家の先生たちですから、利尿剤の失地回復に際しては専門医の技を広く普及させる必要があるかも知れません。一方、「なんで?」と思ったのは、配合剤の扱い。GL原案作成過程で「中高度の高血圧で、併用を第一選択薬で認めているんだから配合剤も第一選択薬にすべき」と意見が上がったというのです。複数の薬を併わせて使う併用治療は、その患者ごとに一番、適切な薬の組み合わせを、各薬剤の用量を慎重に探りながら進めます。しかし、配合剤だと、中に入っている複数の薬の用量が固定されているので、微妙な調整ができません。にもかかわらず「別に第一選択薬で使ってもいいじゃない」っていう声があがったというのですから、驚きです。患者からすれば「そんな乱暴な投与は堪忍やでぇー」って気持ちです。もっとも、この主張は受け入れられず、新GLでは実現しない方向になっているので、一安心です。さて12月の最終版がどうなるか。ウォッチを続けてまいります。

で、写真はすべて大阪で撮影。1番目は「たまにはお前自身も登場しろ!」という有りがたいリクエスト(?笑)にお答えして、大阪国際会議場のエレベーター内で、己自身を撮影。2番目は今回執筆や調べ物をする際に使ったリーガロワイヤルホテルの茶店(景色が最高です!!)。3、4番目は宿泊したホテルの近くにあったバルPIKOの外観と、内部です。ここは食事もおいしかったし、来てる客が皆さんフレンドリーで楽しかった!!マスターに感謝!というわけで実り多い大阪主張でした!!大阪サイコー!!台風上がりの晴天!自分はこんな気分です。クールスのカルフォルニアブルースカイ(音が出ますので、注意!!)。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。

 

日本高血圧学会はディオバン問題をどう総括するか?

今週は大阪で、日本高血圧学会が開かれます。ディオバン問題後初の学会なんで、どんな議論が巻き起こるか。注目です。表立ってディオバンをテーマにしたセッションはないようですが、間違いなく話題になるはずです。最大の目玉は、高血圧治療ガイドラインの改訂。前回09年版のGLを改訂して、来年から新たな14年版をスタートするべく学会で議論します。各国の大規模臨床試験をどう活かして、どこがどう変わるのか。ある意味、楽しみです。にしてもGLの改訂。5年に一回でいいんでしょうか?エビデンスの本数が増えている今日、せいぜい2年に一回くらい見直さないと、キャッチアップできない気が致します。みなさんはどう思われますか?

で、写真は四つ葉のクローバー。あんね、みなさん。ちょっと、これすごいんですよ!!!つのは、風が強く吹いていた日、近所を歩いていたら、なんかが頭にくっ付いたんです。で、そっと手を伸ばしてとってみると、な、な、なんとこの方だったんです!!すごーくないですかあ?すごいですよね?でしょー?でしょー?めったにないことですわあ。ではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください。

 

研究者、製薬企業、そしてジャーナリストは、         事実を捻じ曲げる「スピン」欲求を滅却すべき

 ディオバン問題をきっかけに、大規模臨床試験のあり方が問われています。大規模臨床試験は、たいがい製薬企業がスポンサーだから、その企業の意向が結果に反映されやすい。だから今後は、スポンサーとなった製薬企業の意向を、いかにはねのけて公平中立なる研究を実施し、結果発表できる環境を整えるかが課題になります。ディオバンのように、データ操作まで行っちゃうと、もうそれは「捏造」で、論外なんですが、そこまでは行かないにせよ、過去の試験結果を振り返ると、公平中立とは言えないものが相当数あるようです。なかでももっとも多いのは「スピン」。英語のSPIN(回転)から来ています。自分たちが期待した結果(主要エンドポイント)が出なかったにもかかわらず、データの中からいい部分だけを抜き出して、ことさら、そこを強調する行為を指します。例えば、「心血管疾患による死亡抑制」を目論んで実施したのに、既存薬とほとんど差が出ない。あるいは既存薬の方がいいような結果が出た。しかし、そのまま公表したくないから、死亡抑制でいい結果が出なかったことは伏せて、集めたデータで有利な部分を探します。で、ちょっと差があった狭心症に目を付けて「狭心症の発生を抑制しました!」と大々的に公表するのです。こういうスピンをいかに無くしていくかが、大事なところです。で、スピン。よくよく考えてみると、己(オノレ)らジャーナリストにもそのまま当てはまる。「これはきっと大ニュースになるぞ!」と仮説を立てて、取材してみたが、実は意外に地味な話でしかなかった。でも「みんなをあっと言わせる記事が書きたい」という下卑た功名心を抑えきれない。そんな時、忍び寄ってくるのがスピン欲求です。それを抑えて公平中立であってこその、ジャーナリストなんですが、欲求を抑えきれず、自分が書きたい方向にとって、都合のいい現実の断片だけを拾って、ことさら強調する。アクセス数を増やしたいから、何も決まっていないのにあたかも決まったような断定的な見出しを立てて、読者の条件反射を誘う。あるいは、自分のもっていきたい方向に都合が悪い現実は、無視して報道しない。こんなことばっかやってたら、自分で自分の絞めるばかりです。なぜなら、そんな記事は、人騒がせなだけで、社会的にまったく価値がないからです。研究者、製薬企業だけでなく、己らジャーナリストも、せこいスピン欲求には、なんとしても打ち克っていかねばなりません。

で、写真は上野の不忍池。国立西洋美術館でやっていたミケランジェロ展を拝観した後にブラっと寄りました。ここは年中、お祭り。屋台のおでんがおいしい季節になりました(^^)。それでは皆様、楽しく素敵な一週間をお過ごしください。

 

ディオバン問題で、新たな疑念が浮上!!          日経メディカルの対談で主任研究者と指南役が統計について情報交換

 ディオバン問題の発端となった慈恵医大の臨床研究JIKEI HEART Studyで、主任研究者の望月正武教授と、試験の「指南役」と言われるスウェーデンの研究者、ビヨン・ダーロフ氏が、試験の中間解析段階で、データをよく見せるために「統計解析者に指示が必要」との認識を共有していた疑いが強いことを、7日付のミクスオンラインで、望月英梨君が報じています。報道の根拠としているのは、皮肉なことに、この試験の宣伝で莫大な収益を上げた日経メディカル2005年4月号、7月号に掲載された両氏の対談で「研究者は統計に全く関与していない」とした慈恵医大の記者会見(7月30日)を「事実に反する」と突き上げています。するどい!!過去に発表された膨大なデータを収集し、ひとつひとつ丹念に読み込んで、現実と付き合わせる。いわゆる「調査報道」の基本原則に沿った真摯な取材姿勢が、生み出した真のスクープといっていいでしょう。勢いで書いたハッタリだけの「与太記事」を「スクープ」と勘違いし、「すっぱ抜き」(恥ずかしくて己が禁句とする言葉)とか威勢のいい言葉に浸って、自己陶酔から出てこない同業者は襟を正すべきです。それから、日経メディカル。あれだけ記者がいるのに。。。自分達の紙面に載った対談を読んでいないのでしょうか?

ただ、今回のスクープ記事も、「一流誌LANCET」という表記が2回も出てくる点が、ちょっと気になります。。。。。LANCETはミクスの親会社エルゼビアが発刊している雑誌だから、まあしょうがないかあ。会社の上層部は喜ぶかもしれませんね。己(オノレ)は「本当にしてはかなり良過ぎる」慈恵医大の試験結果の問題点を見抜けずに、そのまま掲載したLANCETを、「一流誌」といっていいのか疑問を抱いています。望月君には、ダーロフ氏とLANCETの査読委員会の関係にも迫って欲しかったけど。ちょっときついか。

あ、それと先週3日に開かれたノバルティス本社社長の謝罪会見で、社長が日本循環器学会の心筋梗塞二次予防ガイドラインに異論を唱えたのにはビックリでした。それは本日号のRISFAXに掲載されています。是非、ご覧ください。

で、写真はJR赤羽駅で偶然出会った「なまはげ」。秋田の民間伝承に出てくる化け物ですが、近くで子供が泣いていました。おっちゃんでも少し怖かったもん。当然ですよね。ではみなさん。季節はすっかり秋めいてきました。素敵な一週間をお過ごしください。

 

 

【速報】ディオバン問題の処分、ノバルティスだけでいいのか?「関係医師を医道審にかけろ!」という意見も。

 ディオバン問題の事実解明を進めていた厚労省の検討会が30日、中間まとめを公表、失墜した日本の医学界の信頼に対する責任は「ノバルティスと大学双方で負うべき」(12頁)と、明記しましたしかし、法的な処分の検討はノバルティス社だけで、大学には触れていません。周知の通り、臨床研究で問題が起きても、現在は罰則がない。しかしながら、何らかの社会的な制裁を求める意見が多いので、ノバルティスには、何とか薬事法の誇大広告違反に引っかけて処分しようと、今後、調査が入ります。また、結果的に不正データをプロモーションに使ってディオバンの売り上げを伸ばしたことから、保険財政への返納を念頭に中央社会保険医療協議会の意見を求めることになっています。ところが大学に対する法的な処分は、中間まとめでは全く触れていません。ちょっと、公平性に欠ける気がするんですが。。。みなさんはどう考えますか?一部、医療関係者の中には「この研究に携わった医師は、患者のためによりよい医療を提供するという医師として最低限の職務を裏切ったのだから、医道審議会にかけるべきだ」という厳しい声も上がっています。                                                          一方、このブログでも再三指摘してきたメディア広告の問題には「専門誌等のメディアにおいても、結果的に今回の事案に関連する企画記事が医療現場等に与えた影響は少なからずあることを十分認識すべきであり、今後の広告のあり方等について十分検討するべきと考える」と明記されました。さてどうなるか。検討会の森嶌昭夫委員長が何度も言っていたように「ここに書いてもやらなきしょうがない」。そうならないように、今後の経緯を見守りたいです。

ノバルティスの二之宮義泰社長は当日午後9時30日に記者会見し、「再発防止に真摯に取り組みます」と、決意表明しました。

で、お知らせです。今回の問題で、ディオバンばかりが売り上げを急速に伸ばしたかに言われますが、実はそうではないのです。ディオバンと同じARBという種類の高血圧治療薬の市場が、日本は異常に大きいのです。7製品あって実質は上位4、5製品がほとんど市場を席巻しているのですが、広告宣伝がハンパじゃない。己(オノレ)はどうも、ここに根本的な「歪み」が生じていると考えております。医薬経済10月1日号に『肥大化した「ARB市場」を斬る』という題名でビシッと書きました。みなさま是非、ご覧ください!!

※写真上から①検討会全景②犯人探しのみに陥りがちの議論を法学者の視点で冷静に見つめ、構造的な欠陥を炙り出す方向で検討会論議をリードした森嶌委員長③会見するノバルティスの二之宮社長。

 

医薬品の臨床研究は「横山大観」以外、               やっちゃいけないのか?

みなさまお元気ですか?空が高くなり、陽射しも心なしか優しく感ぜられる今日この頃です。おかげさまで、己(オノレ)のブログ「薬新カフェ」、快調にアクセス件数を増やしております。最近は、医薬品業界外からも、かなりのアクセスをいただいておりますので、これ以後、できるだけわかりやすく書かせていただきます。業界のみなさまには少々くどく思われるかもしれませんが、ご理解のうえ、引き続きお付き合い願います。

で、日本の医薬品には承認申請を行うために実施する臨床試験(治験)と、承認後に医師がその医薬品の使い勝手を評価するために実施する臨床研究があります。しかし、高血圧治療薬ディオバンの臨床研究で、データねつ造などの不正が見つかったので、今後、臨床研究は実施基準が厳しくなる方向です。しかし、どこまで厳しくするかは意見が割れています。臨床研究情報センターの福島雅典先生が「日本の臨床研究なんて、いい加減なもので、もともとゴミしかなかったんだ。これからは治験と同様にICH-GCPに沿った実施を義務付けるべきだ」と主張しています。しかし、一方、「臨床研究の、すべてがひどいわけではない。日常診療で、治療法を評価するには、ある程度、柔軟でないとだれもやらなくなってしまう」とし、一律の基準強化に警戒感を抱く意見があります。ある先生は、ICH-GCPを臨床研究で義務化すべきという意見について「横山大観以外、絵を書いちゃいけないというようなもの。横山大観だって、初めから絵が上手かったわけではない」と憤慨していました。さて、どうなるでしょうか?己は、白、黒、二元論でなく、前厚労省審議官の平山佳伸氏が、最近、シンポジウムで言っていた「研究のレベルに応じた柔軟な基準設定」がもっとも妥当だと思います。みなさまはどう思われますか?

で、写真は先ごろ大阪で撮影したモニュメント。北浜駅近くにある日本銀行大阪支店前に郵便ポストがあって、その上にあったんです。生き生きとした躍動的な姿で何人もの人たちが地球を掲げている。ポストには「郵便は世界をつなぐ」って書いてありました。詳しい言われはわかりませんが、ちょっとかわいらしく、前向きなエネルギーを発しています。ではみなさま、素敵で楽しい一週間をお過ごしください!!

 

日本薬剤師会は「情報発信力」を鍛えよ!!

 連休の22、23日は日本薬剤師会の学術大会に行ってきました。で、改めて気づいたのは「日本薬剤師会ってのは世間に向けた情報発信力が全くないんだなあ」ってことです。己(オノレ)は他の分科会に行っていて聞けませんでしたが、日本医師会の鈴木邦彦常任理事が特別講演で、薬局薬剤師の業務を「薬を袋に詰めているだけ」とこき下ろしたそうです。これってどうです?まじめにやっている薬局薬剤師からすれば、ほとんど誹謗中傷ですね。戦後に権勢を誇った「強い日医」の象徴、武見太郎会長は毒舌で相手を追い込みました。90〜2000年前半に活躍し、取材でお世話になった糸氏英吉元副会長も、歯に衣着せぬ物言いで、政治家や官僚、支払い側を突き上げていました。絶妙なタイミングで繰り出す鮮やかなレトリックは、ほとんど天才的で、己(オノレ)も、しばしば取材者であることを忘れ、ホレボレと聞きほれてしまうほどでした。しかし、矛先はいつも強い者、いわゆる権力者に向いていて、同じ医療関係職種を、鈴木氏のように強い言葉で、ひっぱたくような場面は、なかったように思います。「医療保険財源は調剤報酬より診療報酬に回せ」って主張するのはいいけど、必要以上に他者を踏みにじる必要はないと思うのですが。。どうでしょう?とはいえ、薬局は隙だらけなのも事実です。薬剤師の代表的な組織は日本薬剤師会なのですが、組織率はかならずしも高くない。幹部や幹部に近い関係者間に確執があって未だにお互いのあらさがしをしている。さらに職能より経営に重きを置く保険薬局協会、ドラッグストア協会が横から出てきて日薬の足を引っ張る。外から突っ込まれても仕方がない面もあります。そう考えると、鈴木先生の発言も、一種のショック療法なのかも知れません。

学術大会では、せっせと地域医療に取り組む薬局、医薬情報の集積、疑義解釈に積極的に取り組む薬局の発表も多々ありました。また、医薬情報の発信基地として薬局に期待する医師も複数いました。決して鈴木氏みたいな医師ばかりではないのです。厚労省医薬食品局の中井清人企画官は、薬局薬剤師に自分たちがどれほど医療に貢献しているか「業務価値」のエビデンスを示すべきと言っていました。日本薬剤師会は是非、やるべきです!!というかやらねばならんでしょう!!己(オノレ)もしっかりフォローします。学術大会の詳細は24日のRISFAXをご覧ください!!

で、写真。いかがわしい宗教ではないですよ!21日、横浜で開かれたヨガフェスタ。沢山の人たちと一緒に外で潮風を浴びてやるヨガはサイコーに気持ちよかったあ〜。ではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください!!

 
 
 
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