医薬分業の規制改革論議は“不完全燃焼”、厚労省はきれいごとばかり並べていないで、過去の政策意図、その成否、現状の問題点を国民にしっかり伝えるべきだ!

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 政府の規制改革会議が先週12日(木)に行った医薬分業に関する議論は、委員の発言に、思いつきや、準備不足が伺われる場面も多く、正直、物足りなさを感じました。とくに川渕孝一氏(東京医科歯科大大学院教授)には期待していましたが、冒頭で、誰も笑えないジョークらしき“つぶやき”を発したうえ、随分昔に書いた自著の宣伝を繰り返した印象が強く、がっかりしました。また、日本高血圧学会の理事で「まゆみとドクター森下のバイオレディオ」で、御馴染みの森下竜一氏(大阪大大学院教授)も「薬局に行ったら最新の薬が置いてなかった」などと、まさかの“イチ患者”発言(^_^;)、やはり高血圧の専門医としての医薬分業論を聞きたかったです。

しかし、「ついに医薬分業も新たなステージに来たんだなあ」と、感慨深くも思いました。議論全体のトーンが、医薬分業がいいとか、悪いとか、単純な二元論に陥ることなく、医薬分業が70%近くなった現状を認めたうえで「どうしたらもっと国民のためになる仕組みにできるのか」という建設的な方向で進められたこともよかったです。いわば、医薬分業の質的向上、改善論です。(その点において、土屋了介氏=神奈川県立病院機構理事長の発言が最も大人で深みがありました)

病院や診療所とは別の薬局と言う存在が間に入る以上、院外調剤のコストが院内調剤より高いのは当たり前ですが、そのコストが高すぎるのか。少ないのか。調剤料、調剤基本料、薬歴管理料、その他加算など、細切れになっている報酬はそれぞれ適切なのか。そこは大いに議論すべきです。ただ、ここは注意しないと、単に、医科と調剤のお金の分捕り合いになり、結果、医科にお金が移動しただけということになりかねません。

IMG_0367 それから医薬分業がなぜ始まったのか?規制改革会議の議論では正しい説明がありませんでした。その昔、病院、診療所が保険薬価より、滅茶苦茶安く医薬品を購入し、その差額を自分たちの収入にしていました。大きな差額が欲しいがために、患者を蔑にして、必要がない薬を使ったり、できるだけ差額が大きい薬を使ったりする傾向が一部にありました。メーカー、卸もある意味、そういう状況を黙認し、病院、診療所の“薬価差稼ぎ”に加担していました。それで旧厚生省が「これはいかん!病院、診療所から医薬品の購入を引きはがせ!」ってんで本格的に医薬分業推進に舵を切り、もう30年近く一心不乱に、病院、診療所、そして薬局に「薬価差で稼がなくても、医薬分業をすればお金が儲かりまっせ」と医療保険財源から出す報酬で誘導してきたんです。で、取り合えず病院、診療所からの薬の引きはがしは成功しました。が、一方で、医療保険という絶対つぶれない市場で、ほとんどリスクなく確実に稼げる調剤ビジネスの旨味に、目を付けたお金持ちの株式会社がドカドカ参入し、「魂なき調剤」を普及させた。で、時代遅れで、論理矛盾を来している継ぎ接ぎだらけの調剤報酬点数、そして調剤だけやって、あとは何にもしないロボットみたいな血の通わない変な薬局が沢山、出て来ちゃたんです。

こういう時代背景、医療環境、政策面での流れを厚労省はなぜ、説明しなかったのでしょうか?せっかく、規制改革会議が公開の場で議論のテーマに載せたのです。「医薬分業は患者にとっていいことです」なんてきれいごとだけ言ってごまかすのはまずいでしょう。過去の政策の意図、その成否、現状の問題点を国民にしっかり伝えるべきです。じゃないとしっかりした議論ができない。

 写真は都営大江戸線、赤羽橋付近。通りがかりにふと、見上げたら東京タワー!!堂々のお姿。遠くから眺めると、いいですね。中はどうってことないけど(^_^;)。それから有楽町のガード下。「貝」「馬」そしてかなたに「牛」いい感じです。春目前の都内の夜景でした!ではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください。気が付けばもう3月中旬、満開の桜がもうすぐですね!

 

MR叩きは、もうウンザリ!批判するならマネジメントでしょ?病院をクライアントに薬剤を選別するニュービジネスの登場に期待!

Exif_JPEG_PICTURE みなさん、お元気ですか?休み明けの月曜日は静かな薄曇りでスタートを切りました。街中を舞っていた花粉も湿気で地に落ち、ゆったりした佳い滑り出しです。

さて、製薬企業のMR(医薬情報担当者)の現状を数年ぶりに取材し、医薬経済3月1日号に記事を書きました。ここ10数年、MRを巡る報道は「このままじゃダメだ」「いらなくなる」と悲観論ばかりですが、もうウンザリ。現場のMRに苦言を呈するのは簡単ですが、果たしてそれで、なんか変わるでしょうか?MRは一企業の一情報担当者ですから、個々人ではどうしようもない限界もあるでしょう。少なくとも各社の人事戦略担当のマネジメントが変革の必要性を認識して、戦略、評価体系を改めなきゃどうしようもないことが多いはずです。展望なきMR叩きは、もうやめませんか?そんな思いを込めて執筆しました。

取材過程で、製薬企業の依頼を受けてMR活動を実施するCSO(営業受託業)のコントラクトMRが増えていることを再認識しました。09年は1769人だったのが今は5000人くらいまで膨らんでいます。しかし、日本のMR総数は6万5000人ですから、7%強です。採用は製薬企業外の営業経験者がほとんどだから、MR経験者の受け皿にはならないでしょう。コントラクトMRが世界で最も多い英国ですら全MRの25%ですから、製薬企業の外部委託は、やはり一部に過ぎずコアの部分はしっかり自社のMRが支えています。ですから今、日本でコントラクトMRが増えていると言っても間違いなく、いつか頭打ちになります。

CSOも、成長のために新たなビジネスモデルを作っていかねばなりません。現時点では、クライアントとなる製薬企業の看板を背負った営業マンの域を出ていない。製薬企業ではなく、医療機関を顧客にした受託ビジネスはいかがでしょうか?医薬情報のプロとして、病院薬剤部との間に立って、各社のMRが持ってくる情報を精査し、適正な薬剤選択を支援するのです。そういうの是非やって欲しいです。しかし、個々の病院は製薬企業ほどお金持っていませんから、収益面で難しいでしょうか?

で、写真は2月24日、品川で開かれたMR認定センターのミーティング。各社のMR教育研修担当者がズラリ。数年ぶりに取材させていただきましたが、テーマに、とくに大きな変化はありませんでした。個人的には、もう少し核心に迫る議論が欲しいです。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!

【お知らせ】米ニューヨークを拠点に医療、製薬情報を発信するMSAパートナーズの出版部門ブルームース・リサーチが「2014年製薬業界の動向―2015年に向けて―」を発刊した。これまで蓄積したグローバル情報を元に、製薬業界のトレンドを解説。研究開発、マーケティング、公的規制の動きを独自の視点で詳細に分析している。また、時価総額上位18社と、株式非公開3社計21社の全貌をコンパクトにまとめた。全74ページ、価格は2,500ドル。詳細は以下のURL=http://msapr.com/main2/jp/resources-blue-moose-research.html

 

ジェネリック医薬品は、3つのタイプで混戦!!「オーソライズド」「リニューアル」「コスト抑制型」、果たして軍配はどこに上がるか?!

Exif_JPEG_PICTUREみなさんお元気ですか?寒気の波間波間に、ちょっとだけ春の気配を感じる今日この頃です。己(オノレ)は風邪気味で、先週後半、活動を緩めました。皆さんもお気を付けください。

さて後発医薬品。各社の努力で「ジェネリック医薬品」という呼称がすっかり定着しましたね。しかし、ジェネリックの意味を正しく理解している患者さんは、まだまだ少ないのではないでしょうか?

新潟薬科大学薬学部の上野和行先生が3月25日のセミナーで「先発品と成分は同じだけど、コーティングなど、着ている服が違う医薬品」と定義していました。「着ている服が違う」っていうのは、絶妙な表現です。これなら患者に分かりやすく伝わると思います。さらに、ジェネリックは、先発品が出てから、概ね10年以上経過してから出るので、着る「服」のデザインも最先端。先発品より飲み易くしたり、劣化しにくくしたり、数々の利点が付与された「リニューアル医薬品」だとも強調しました。確かに一理ありますね。 ただ、いま市場に出ているジェネリックの何パーセントが「リニューアル医薬品」と呼べるのか。調査はないようで、今のところ何とも言えないのが実情です。

一方、「リニューアル医薬品」でないジェネリックは、先発品と同程度のランクのデザインの「服」を着ているが、価格が安い。「コスト抑制型医薬品」とでも呼びましょうか? ジェネリックは基本的に「先発品と着ている服が違う医薬品」ですが、例外的に全く同じ服を着ている場合もあります。先発品企業が自社のブランド製品について、他社に後発品として製造販売することを認める「オーソライズド・ジェネリック(AG)」です。ですから、ジェネリック医薬品は、いま大きく3つに分かれる。「AG」「リニューアル医薬品」「コスト抑制型医薬品」です。3つのうち、どの戦略で行くかは、各社の判断です。 いずれにせよ、ジェネリックに対する患者の認知度は、かなり上がってきました。もう一歩進んだ理解を求める段階に入ったと言えそうです。

で、写真は東京駅丸の内南口。取材の合間に丸善に。溢れるような新刊を前にすると、ついつい時間が経つのを忘れて、「知の森林」でフィールドワークに浸ってしまいます。というわけで、皆さま。季節の変わり目です。お体に気を付けて!充実した素敵な一週間をお過ごしください。

【お知らせ】米ニューヨークを拠点に医療、製薬情報を発信するMSAパートナーズの出版部門ブルームース・リサーチが「2014年製薬業界の動向―2015年に向けて―」を発刊した。これまで蓄積したグローバル情報を元に、製薬業界のトレンドを解説。研究開発、マーケティング、公的規制の動きを独自の視点で詳細に分析している。また、時価総額上位18社と、株式非公開3社計21社の全貌をコンパクトにまとめた。全74ページ、価格は2,500ドル。詳細は以下のURL=http://msapr.com/main2/jp/resources-blue-moose-research.html

 

ドラッグストア調剤の“薬歴作成スルー事件”は「やらずぶったくり」の王道、詐欺行為以外の何物でもない!

IMG_0302 ドラッグストアの処方せん調剤。滅茶苦茶ですね。患者が来て、処方せんを見て、医師が出した処方に間違いはないか。過去に飲んだ薬との間で何か問題はないか。それをチェックするのが本来の保険薬局の役割なのに。ツルハの子会社「くすりの福太郎」、イオン傘下の「CFSコーポレーション」は、薬剤服用歴(薬歴)を作っていなかったというのですから。福太郎は17万件、CFSは7万件も。端っからやる気がないんでしょうね。やっていないのに、調剤報酬だけは、しっかり請求している(^_^;)。これぞ、まさしく「やらずぶったくり」の王道。「やった、やった詐欺」。ジャーナリストで言えば取材しないで記事を書くインチキをするようなもんです。有りえないことです。呆れて物が言えません。

  で、まずは何を優先すべきか。当事者を徹底的に厳しく叩き、処分することです。これは、ほとんど犯罪行為ですから。一般的に、根本的な倫理を踏みにじって起きた犯罪に対して「みんなで考えましょう」「私も自分のこととして考えます」って言いますか?言わないでしょう。だからまずは当事者の問題なのです。そして次はドラッグストア協会。これを機に、ドラッグストアでの調剤はどうあるべきか。もう一度、徹底的に議論し、再発防止について考えるべきです。

調剤ビジネスには、大手チェーン、ドラッグストア、中小個人薬局と大きく3つの業態がありますが、国民には、どうでもいいこと。全く知られていない。だから今回のことで、十羽一絡げにマイナスイメージを抱くかもしれません。それをどう払しょくするか。そこが日本薬剤師会の役割だと思います。己(オノレ)はまじめにやっている薬局が沢山あるのを知っています。確かにサービスの不十分さはあるにしても。。本質がどこにあるか。曖昧にしたまま情緒的なムードだけが先行し、マイナスイメージが膨張していく社会は、不健全です。どこに本質があるのか。見極める能力を無くした社会は、歪んでいきます。

  写真は日比谷の、とあるレトロな喫茶店で。取材の合間に時間ができたので、コーヒータイム。なかなか風情があるところでした(*^_^*)では皆様、充実した素晴らしい一週間をお過ごしください!

 

アステラス、第一三共、ノバルティス、GSK、サノフィから計約2000人が離れていく!

IMG_0315日本の製薬業界も本格的なスリム化時代に突入したようです。14年以降、複数の企業が希望退職を募集。アステラス製薬430人、第一三共513人、ノバルティスファーマ日本法人450人、グラクソ・スミスクラン日本法人200~400人、サノフィ日本法人200~300人と、この5社だけで最大2000人以上の人材が所属企業を離れます。

みんな一流企業ですから、もちろん十分な積み増し退職金が支払われます。しかし、「一つの企業で一生、勤め上げる」という“日本型雇用形態”の崩壊の足音が製薬業界にもヒタヒタと迫ってきているようです。しかし、己(オノレ)は、これをマイナスだと考えていません。現状に不満で、自信がある人材はどんどん飛び出して、業界を引っ掻き回し、活性化させて欲しいと思います。所属企業を離れる2000人の皆様!己は期待しております。どうか心身を健全に保ち、がんばってください!!

で、写真は都内高級ホテル。ではありません!青山にある山王メディカルセンター。列記とした病院のロビーでございます。すんげえ内装。静かにクラッシックのBGMが流れていて、高級感が漂います。差額ベット代。いくらするんだろうか?お高いんでしょうね。きっと^_^; ということで、皆さま。充実した素敵な一週間をお過ごしください!!

 

米ファイザーがホスピーラを買収、日本トップ企業にも新たな合併の噂

Exif_JPEG_PICTURE  みなさんお元気ですか?米ファイザーがホスピーラを買収することになりましたね。ファイザーは昨年、アストラゼネカの買収に失敗しましたが、事業再編への意欲は失っていなかったんです。しかし、AZ買収頓挫から1年も経ずして、ホスピーラ買収。一つの戦略が駄目ならすぐに次の矢を放つ!!!このスピードたるや目を見張るものがあります

さてホスピーラの日本法人、ホスピーラ・ジャパンの行方やいかに?2004年設立ですから、わずか10年ちょいの歴史しかない。従業員も約100人で決して大きくありませんが、今後の情勢が業界に与えるインパクトは決して小さくない。ファイザー日本法人は昨年、新薬部門を切り離して「ファイザー製薬」を創設。一方で、ジェネリック事業は元の日本法人「ファイザー」に残っています。ホスピーラの基盤は注射剤ジェネリックですから、おそらくホスピーラ・ジャパンは「ファイザー」と、くっ付くことになるでしょう。社内はしばらく落ち着かない状態になると思われますが、従業員のみなさま。自分を失わないよう、行く末を見つめて、しっかりがんばってください。  

 翻って国内企業。少なくとも国内企業同士の合併の動きは表面化していません。相変わらずアステラス製薬と第一三共の合併の噂は消えませんが、「アステラスが、いまのままの第一三共と一緒になっても、足を引っ張られるだけ」(証券アナリスト)との情勢分析が主流で、現実性は低いままです。ただ、ここに来て新たな噂が浮上してきました。協和発酵キリンが合併の相手を探していて、武田薬品が名乗りを上げているというもの。飽くまでも噂ですが、実現すれば、明るい話になると思いませんか?  

 写真は米ファイザーの会長兼CEO、イアン・リード氏。最近、流行りの経済学者トマ・ピケティ氏によると米国ではトップ10%の人が、国全体の富の70%を保有しているといいます。リード氏は間違いなく、その10%に入るでしょうね。それではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください!!!

 

「薬価の毎年改定」は一先ずトーンダウン。数年後に再燃するだろう。

Exif_JPEG_PICTURE「薬価の毎年改定」。自民党の伊吹文明衆議院議員が1月29日に開かれた日本医薬品卸売業連合会卸連合会・薬業政治連盟の懇親会で「実態的に無理だと、財務省もよく理解をした。だからどうぞ安心してお仕事をしていただきたい」と述べました。この発言を受け、日本製薬団体連合会の野木森雅郁会長(アステラス製薬会長)が間髪を入れず、「お年玉のようなお話をいただいた。『薬価の毎年改定が消えた』のは、このうえない喜び」と感激の意を表明、会場からも拍手喝さいが沸き起こりました。

はて、伊吹氏の発言は本当か?と、業界で話題騒然です。昨年末、「伊吹氏が財務省幹部と毎年改定論議の棚上げを確約した」との噂も、まことしやかに流れています。

Exif_JPEG_PICTUREしかし、そもそも16年4月の通常改定、17年4月の消費税改定、18年4月の通常改定と、放っておいても3年連続の薬価改定が規定路線になった今、敢えて「薬価の毎年改定」を論議する必要があるでしょうか?伊吹氏のスタンドプレーがあろうがなかろうが、毎年改定は一旦トーンダウン。そして17年の消費税改定後に再燃というのが己(オノレ)の見方です。その予測の詳しい背景、現状を医薬経済2015年2月1日号「安倍政権の“医薬品贔屓”は幻想だ」に書きました。是非、ご覧ください。どうあれ中医協論議や経済財政諮問会議への報告無しに、伊吹氏の発言だけで何となく、幕を引きというのはまずいでしょう。棚上げするにしても、それなりの手続きを取るべきです。

で、中東のテロ。酷い。言いたいこと。思うことが多々あります。しかし、反応すれば思う壺でもあるので、このブログでは敢えて積極的に無視します。犠牲者のご冥福を心より深く深くお祈り申し上げます。合掌。

写真は19日の懇親会。野木森会長と丹羽雄哉衆院議員ら政治家たち。ブレブレになってしまいました(笑)。失礼!そして、もう一枚は?単なる「青い画面」と思うなかれ。澄み切った「青空」です!!!願わくばいつもこんな心持ちでいたいです。多少、曇りが出ても、慌てず、丁寧に振り払いながら、前を向いて歩いていきます。みなさま。どうか素敵な一週間をお過ごしください!!

 

ジェネリック(後発品)業界に「製品数が多い」「価格のバラツキが大きい」と言うのは「企業数が多いから少なくしてくれ」と言うに等しい!!

Exif_JPEG_PICTURE みなさんお元気ですか?15年1月は今週で終わり。あっという間です。各種団体の新年恒例パーティーも1月29日の医薬品卸連合・薬業政治連盟主催で一段落です。己(オノレ)は先週も複数のパーティーを転戦しました。中でも21日の日本ジェネリック製薬協会のパーティーは今後の薬価制度改革への警戒感がビシビシと伝わってきました。

後発医薬品の保険請求価格は、ご承知の通り14年4月から、3つの価格帯のみとなりました。普通、市場に出回っている製品は、一製品一価格というのが当たり前なのに、3つに括っちゃうんですから、すごいことですよね。後発品は、特許が切れた医薬品と同一成分・同一効能の医薬品。なんで「あまり数が多く、価格がバラ付いていると、薬局や患者が混乱する。だから3つにまとめちゃいましょう!」ということになったのです。しかし、3価格帯になった後も、医療機関や薬局への納入時に「保険請求価格から何%値引くか」で、後発品間の競争が熾烈化しています。次の薬価制度改革では「値引き合戦ばかりやってるなら、現場が混乱するから、もう保険請求価格は1つにしましょう。それで商売が成り立たないところは、廃業してもらいましょう」という流れになっています。    

IMG_0263 パーティーの席上、吉田逸郎会長(東和薬品社長)は「1価格帯は問題」と指摘しましたが、厚労省の二川一男医政局長は一成分に何10種類もの後発品がある現状に触れ、「使う側から見て、これでいいのか。何らかの方策を考えていかねばならない」と、後発品の集約化を一層進める姿勢を見せました。沢井製薬の澤井光郎社長は締めのあいさつで「16年4月から3年連続の薬価改定がある。経営への影響は大きい。だから18年4月以降を考えてお互いの経営をしようではありませんか」と値引き競争を牽制しました。しかし、考えてみると「製品の数が多い」「価格のバラツキが大きい」という批判は、かなり無茶でもあります。だって企業マインドからすれば、沢山、製品を出して、自分たちの意志で値付けするのが当たり前だから、企業数が多ければ製品も価格も沢山あって当然なんです。だから「製品の数が多い」「価格のバラツキが大きい」という批判は「企業数が多いから少なくしろ」と言っているに過ぎないことになります。あな、恐ろしや。次回薬価制度改革。

で、写真はジェネ協であいさつする二川医政局長。そして医薬経済社の新年イベント、東京湾ナイトクルーズで。船上から撮ったレインボーブリッジ。フルコースの食事、お酒、夜景、最高でした!!!それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

民主党・岡田新代表の社会保障に対する危機認識は極めて的確、健全、少なくとも大金持ちの高齢者は「成功者」であって「社会的弱者」ではない。

IMG_0259 民主党の新代表が岡田克也氏に決まりました。かと言って、民主党が急に力をつけるわけでもなく、老獪な与党・自民党と対峙するカウンターパートとしてはまだまだ頼りない。ただ、こと社会保障政策について、岡田新代表は、かなり踏み込んだ考えをもっているようで、この部分は大いに共感しました。

代表選前に放送された1月11日のNHK日曜討論で、とくに年金問題を上げ、「いまの考え方は、高齢者はおしなべて「弱者」というもの。しかし、もはや世代間の問題ではない。資産、所得のある方と、無い方を分けて、高齢者でも資産、所得がある人はがまんしていただく。ご負担いただくという考え方を取り入れないと、もうもたない。限られた財源。しかも支出はまだ増えていく訳だから発想の転換がいる。(給付を)どんどん出せればいいが、そういう状況でないので、いかに本当に困っている人に(給付を)届けるかが大事だ」。自民党政治家は、絶対に言わない(言えない)発言です。

年金、医療、福祉その他(介護含む)の給付費は総額約100兆円、年金はその約半分50兆円。医療の約30兆円より多いのです。今度、介護給付費を削減することが決まりましたが、年金制度の根本的な矛盾を、何も解決せずに、いつまでもほったらかしている。こんなんじゃ社会保障に対する国民、とくに若年層の不信感は、増幅するばかりです。 医療分野は、医師会、保険者、学者、産業界など、ステークホルダーがそれぞれしっかりした組織を持っているから、財源配分について公的な場で、公正に議論を戦わせています。しかし、年金は政治家と官僚と学者だけでしか議論しておらず、国民は蚊帳の外。というか、その実情さえ、わかりやすく伝えられていない。塩崎恭久厚労大臣は、年金財源の株式投資割合を12%から25%に引き上げ、我々の年金財源で、大博打に討って出ました。少なくとも医療分野で「財源が足りないから一か八か、株式市場にぶっこみます!男らしいでしょ?」と言ったら、ステークホルダーに袋叩きに合いますよ!

最近になって厚労省は「年金は基本的に保険だから、沢山もらう人、もらえない人がいて当たり前」って開き直っていますが、そもそも人口構成がこれだけ変わるのを何十年前から知っていながら、手を付けずにいたこと自体がおかしい。「俺たち(官僚)は修正が必要と言ったんだけど自民党の政治家がそれを全部つぶした」とタカをくくっているようですが、一体、国民の将来を考えて、身体を張る、サムライ官僚は、いないのかあ~!まったく嘆かわしく、哀しい限りです。  

 で、写真はJR新宿駅構内で。60年代に放映された初代ウルトラマンの怪獣「ウー」。今観ると、すげえ迫力ありますね。スタンプラリーってあるけど、今の小さい子供たちは知っているんでしょうか?ひそかにまた流行っているんですね。きっと。では、みなさま充実した素敵な一週間をお過ごしください。

 

15年度の研究開発税制見直しは評価が様々。製薬業界は勝ったのか?負けたのか?それとも引き分けたのか?

Exif_JPEG_PICTURE みなさん、お元気ですか?いよいよ2015年がスタートしました!! どんな年になるでしょうか?いやあ~、ワクワクしますね!    

 飽くまで現時点での己(オノレ)の観測ですが、国内は消費税の再増税が先送りとなり、今年は「じっくり議論を煮詰める年」。医薬品について政策的に大きな変動はないと考えます。ただ、製薬各社の研究開発、事業展開は海外シフトが一層進展し、相対的に日本市場のプレゼンスが下降する、という、ここ10数年来のトレンドは強まることはあっても弱まることはないでしょう。      

 さて昨年末の税制改正の取りまとめで懸案となっていた研究開発税制の見直し。当初浮上していた案は、製薬企業にとって、ものすごく不利でしたが、最終的には業界の意見がある程度、活かされる形で決着しました。それもこれも日薬連、製薬協の会長、理事長、厚労省の経済課長などが足繁く永田町を回った成果です。ただ、最終案について業界人の声を聞くと、意外にも評価は様々。どうも企業によって、影響に相当な違いがあるようです。

IMG_0235研究開発税制は、企業の研究開発活動を後押しする目的で設定された一種の優遇措置です。いまは「法人税額の30%までなら、企業が投じた試験研究費のうち一定割合を税額から控除していいですよ」という形になっています。ところが15年度は全産業の法人税を下げるので、その分どこかで埋め合わせる必要がある。それで「研究開発税制の限度額を法人税額の30%から20%に下げましょう」という案が出ていたんです。

これを聞いて製薬業界は騒然。幹部らが自民党の税調議員を何度も訪れて「イノベーションの促進というアベノミクスの基本政策に反する」と訴え、25%まで巻き返しました。さらに加えて「公的機関などとの共同研究に投じた費用は別枠で、5%まで控除していい」ということになりました。すなわち25%+5%=30%。いまと同率です。もちろん限度額の土台となる法人税そのものが下がるし、別枠で認められた共同研究費の控除には、様々な条件が付きますから、これまでと同じようには行きませんが、理論上は、うまくやれば恩恵が増える可能性もあります。当初案と比べれば、かなりいい線まで巻き返したように思うのですが。。。  

 7日の薬業四団体新年賀詞交歓会で、東京都医薬品工業協会の中山讓治会長が「主要な製薬企業では法人税の減税効果を打ち消し、いくつかの企業は増税になる。不十分だ」と“ダメ出し”しました。やはり企業間で影響にかなり格差があるようです。しかし、実際のところどうなのか?エビデンスもないので断言できません。2017年度には、さらに踏み込んだ税制の抜本改正が予定されているので、それまで状況をしっかり見極めていきたいと思います。

 で、写真。一番目は7日、ザ・プリンスパークタワー東京で開かれた製薬業界最大の新年会、薬業四団体新年賀詞交歓会で撮影。右から武田薬品・長谷川閑史会長、アステラス製薬・野木森雅郁会長、第一三共・中山讓治社長。新年会ならではのスリーショット。各社の動きも注目です!!!そして2番目は12日に撮った、とある地域の成人式。みんな初々しい!日本はいま少子高齢化、社会保障改革、エネルギー問題、雇用対策、経済・外交等々、課題山積。それを乗り越えていくのは、君たち若者です。おっさんも、できることをしっかりやっていくよお~!と思わず胸の中で、叫び、強く誓った己(オノレ)でした。 それでは皆様、今年もどうかよろしくお願いいたします!!素晴らしい年になりますように!

 
 
 
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