Posted on 5月 25th, 2015 by IDAKA
2025年の超高齢社会到来に向けて、日本の医療提供体制が病院中心の「病院完結型」から、地域全体で支える「地域包括ケア」に、大きく変わっていくのはご承知の通りです。で、お役所や、専門メディアが、まるで金科玉条のごとく「医療機関、製薬企業は、来るべき地域包括ケアに備えろ!さもないと滅びる」と、うるさいことこの上ない。じゃあ、どうやって備えればいいの?って聞くと。。。。。。。
「それは、みなさんで考えてください!」だって。あははは(笑)そんな冗談みたいな話が平気でまかり通っている。無責任極まりない。そもそも急激に「地域包括ケア」に舵を切らねばならなくなったのは、厚労施策の失敗が原因なんです。だから役人は本来、「ご協力お願いします」って頭を下げる立場。威張り腐ってモノを言うのはおかしい。
なんで「地域包括ケア」が必要になったか?医薬品業界は、どう対応すべきか?次のセミナーで全ての疑問にお応えします。
Posted on 5月 18th, 2015 by IDAKA
製薬大手の2015年3月期決算発表が概ね終了しました。私が、テーマを付けるとしたら「決断」です。武田薬品が米国でのアクトス訴訟で、3241億円の和解金支払いを「決断」、第一三共が、買収以来、悩まされ続けてきたランバクシーをサンファーマに譲渡する「決断」をしました。ともに、進むべき道に立ち込めていた暗雲を自らの「決断」で振り払ったのです。
武田の場合、和解したのは95%なので、まだ完全にリスクがないとは言えませんが、武田のウェバー社長は「将来の不確実性は随分無くすことができた」と話しています。また、和解金支払いの決定は「サイエンスではない。経営陣の決断だ」と述べました。
第一三共は、サンへのランバクシー譲渡を無事完了。さらに、サンの保有株を売却して収益を得るなど、「お見事」と言うしかないです。「ここに来るまで、色んな人が、かなり気持ちが入った仕事をしてくれた。その経験は決して無駄にならない」という中山社長の言葉には、グッときました。
ただ、勝負はこれから。スッキリ視界が開けた。この先、どうするか?
研究開発戦略では、塩野義製薬の手代木功社長の言葉が強く印象に残っています。塩野義はがん領域で、特定の遺伝子を持つ患者にターゲットを絞った薬や、予防を狙うワクチンの2つしか開発していません。しかし、「これ以上、抗がん剤に突っ込んでいく予定はない」と言うのです。「抗がん剤の価格が今後どうなっていくか?あまり高額な抗がん剤を進めていくのはグローバルで観ても、あまりコンセンサスを得にくいだろう」というのが理由。現在、開発中の2製品なら「リーズナブルな価格で提供できる」と言い切りました。ここ数年、業界各社は「収益増には、がん領域が大事」と遮二無二、取り組んできました。しかし、一方で財政や、患者負担の問題もある。手代木社長の言葉に、トレンド領域の変化を予感させます。
で、写真は近くの河川敷で撮影。都内には珍しく蝶が舞っていました。「撮っていいですよ」と、まるでポーズをとるかのように私の前の枝に止まりました。穏やかな休日の一コマです。では、みなさま素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 5月 11th, 2015 by IDAKA
みなさんこんにちは!連休後、初の更新となりました!いかがお過ごしですか?夏のような天気が続きますが、お元気ですか?
さて、先週5月8日、日本ジェネリック製薬協会が「後発医薬品の使用状況に関する調査」の結果(保険薬局715件が回答)を公表しました。この手の調査は厚労省もやっているので、なぜいまジェネ協が実施するのかイマイチよくわからなかったのですが、ひとつ気になったことがありますので書きますね。お医者さんが「このメーカーのジェネリックを出して」と処方せんに書いた、いわゆる銘柄処方について「もし、そのメーカーの製品が在庫になかったらどうしますか?」との問いに、71.6%の薬局が「在庫にある他のジェネリックを出す」と回答しているのです。処方せんに「変更不可」の記載がなければ、別に薬局が他のメーカーのジェネリックを出しても問題ないのですが、いいんですかねえ、これで。
というのはジェネリックは、確かに同じ成分なんですが、各社それぞれ患者さんの飲み易さを追求し、製剤工夫で競い合っている。だから、同じジェネリックでも、大きさ、形、色、味などが異なるのです。お医者さんも、「このメーカーのこの大きさがいいのだ」あるいは「味がいいのだ」と、特定メーカーの努力を認めて、処方せんを書いているかも知れないじゃないですか。それを「在庫がないから、別のでいいでしょ」って、簡単に変えられてしまったら、各社の努力は水の泡ってもんです。もちろん、薬局に、各社のジェネリックをすべて置いておくほど、広くないので、仕方ないっていやあ仕方ないんですが、やはり企業努力は報われて欲しいと思うのです。
で、写真は、穏やかな雰囲気一杯のフロワーショップ&カフェ。癒されます。では皆様、素敵な一週間をお過ごしください!
Posted on 4月 27th, 2015 by IDAKA
今回はお知らせです。来る6月18日(木)、不肖、私、井高恭彦が代表を務める㈱薬新主催の製薬ビジネス活性化セミナーの第2弾を開催します!!!
16年4月の通常改定、17年4月の消費税10%増税改定、18年4月の診療報酬、介護同時改定を見据えて、医療政策、薬価政策はどうなるのか?関連産業はどうなるのか?政治、経済、科学、社会保障の視点から徹底的に分析した結果をお伝えします。
今回のメイン講師は、㈱グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの鳥海和輝君です。医療政策、診療報酬を語って鳥海君の右に出る者はいない。日本で最も深く、緻密に、かつ真摯に熱く、取材、執筆を続けてきた男です。
医療政策、診療報酬を訳知り顔に語る、ジャーナリスト、コンサルタントは数多おりますが、その内容は、ほとんど厚労省か、学者か、医師会など関係団体の受け売り。お話にならない。長い期間、丹念にかつ地道に取材を続け、政策の動きを見つめてきた鳥海君を前にしたら、全員一発で吹き飛んでしまいます。ハッキリ言って月とスッポン。大人と子供位の差があります。めったに同業者を褒めない通算25年間のガチンコ、ジャーナリスト生活を送ってきた私が言うのですから、間違いありませんよ!!
鳥海君には、地域包括ケアを含めた今後の日本の医療政策、診療報酬の行く末を思う存分に語っていただきます。
前座では、私もお話させていただきます。新薬、長期収載品、後発医薬品の未来像を、活字にはできない裏話を交えながら、独自の視点でお伝えいたします。新薬創出加算、長期収載品叩き、後発品促進がどうなるか。思いっきり持論を語ります。 製薬ビジネスも医療政策、社会保障全体を見据えて動かないと、うまく行かない時代です。秋から政策論議が始まりますが、おそらく、この手のセミナーでは、最も速く、鋭い内容になるはずです。パネルディスカションでは会場の皆様と向き合って質疑応答、意見交換もしたいです!終了後は、既存セミナーにはないユニークな懇親パーティーを予定しております。皆さま、奮ってご参加ください。
お申し込みはコチラ
あ、写真は鳥海君と私。ジャーナリスト、村上和巳君に撮っていただきました!!
Posted on 4月 20th, 2015 by IDAKA
微生物や動物細胞を使って生産するバイオ医薬品は効き目も確かですが、価格が高い。だから特許が切れたら、比較的安価で、同様の効果を発揮するバイオ後続品が出て来ることが期待されています。
昨年末、日本化薬が田辺三菱製薬の関節リウマチ治療薬レミケードのバイオ後続品を投入、その他の分野でも、数社が開発を進めています。間違いなく医療費適正化につながるので、超党派の国会議員がバイオ後続品の普及促進に向けた連盟を発足、慶応大の黒川達夫教授の呼びかけで、製薬企業と行政も勉強会を発足させました。当初、後発品メーカーにバイオ後続品を開発しろ、開発しろって促す声がありましたが、高度な生産技術を使うので、各社は尻込み。やはり実際に開発を進め、主導権を握るのは、新薬メーカーのようです。しかし、厚労省が作成した開発ガイドラインは09年以来、修正無し。運用面でどう解釈すべきか不鮮明な点も多く、開発メーカーは苦労しているようです。できるだけ早く現状を反映し、使いやすい形に改善すべきでしょう。
で、写真は京都、河原町。鴨川を渡っていると向こうに、各部屋の様子が見える建物が。。。どうやら和食レストランのようです。ちょっと暗いですが、わかりますか?ミニチュアのようで、可愛らしいですね。では皆様、素敵な一週間をお過ごしください。
【お知らせ】米ニューヨークを拠点に医療、製薬情報を発信するMSAパートナーズが来る5月22日金曜日、米国の薬価、流通の現状について解説するセミナーを開催します。詳細はコチラ⇒ 「米国発・新しい薬価の時代」
彼らの情報の精度、鮮度は、かなり高いですよ!!
Posted on 4月 14th, 2015 by IDAKA
第19回日本医学会総会が昨日13日まで京都でありました。医療産業の発展が課題になる中、医薬品絡みのセッションも結構ありました。でもその大半は「日本企業の開発力が弱い。どうすれば強くなれるか?」というテーマでした。日本医学会の高久史麿会長が日本の研究者が発見した医薬品シーズが悉く外国企業に奪われている現状を「非常に残念」と嘆いていました。【RISFAX4月13日号詳報】ALK遺伝子阻害薬しかり。MEK阻害薬しかり。PD1抗体も、小野薬品が持て囃されていますが、単独とはいかず、欧米の巨大市場は、ブリストルマイヤーズに明け渡すしかなかった。
で、結局、行き着くところは「ベンチャー企業を育成し、積極的に活用する」というお決まりの結論です。もうずっと言われていることなんですが、日本ではベンチャーが育たない。日本医師会の横倉義武会長が「イノベーションは社会の許容度の問題」と話していましたが、おそらく「異文化に不慣れ」=「異物に狭隘」という日本の風土、精神基盤にも基因しているのかも知れませんね。【RISFAX4月13日号詳報】もっと言うと、スローガンを掲げて一丸となるのは得意ですが、独りで考えリスクを負って打って出るのは苦手って感じ?しかし
ベンチャーと語源を同じくするアドベンチャーの日本語訳は「冒険」。ある意味、舗装され、管理された安全な道からはみ出す行為。やむにやまれぬ強い想い、目的を持って、リスクを顧みずに立ち上げるのがベンチャー企業。そう考えると国を挙げて「ベンチャー企業を育てよう」って言うのもなんか変な話で、却ってベンチャーの勢いを削いでしまうような気もします。かつて武田薬品の武田國男氏が産業施策について「国は余計なことせんでええ。黙って見守っていてくれればええ。邪魔しないで欲しいんや」と言っていたことを思い出します。どんな世の中、どんな国、どんな企業の中でも、やる奴は黙っててもやる。やらない奴は何を言われても一生やらない。それだけのこと。その前提に立って、“シバリ”をできるだけ無くし、やる奴がやりやすくすればいいだけのような気がします。
写真は日本医学会総会があった最寄駅風景。今回は製薬企業の協賛が少なく以前より質素で、いい感じでした。海外の学会みたいに盛大なイベントみたいなやり方は、そもそもおかしい。海外の学会に行くと、喜んではしゃいでいる記者もいて恥ずかしくなりますが、己(オノレ)は以前からものすごく違和感があります。そういう面で、日本は進んでいる?では皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!!
Posted on 4月 13th, 2015 by IDAKA
みなさん!おはようございます。毎週月曜更新の薬新カフェですが、本日は何ともタイトで長い文章が書けません。明日にでもしっかり書きますので、引き続き、お付き合いよろしくお願いいたしまーす!
Posted on 4月 6th, 2015 by IDAKA
※事実誤認があったため6日午後、一部修正しました。
武田薬品が糖尿病治療剤「リオベル配合錠LD」の製剤に誤って「リオベル配合錠HD」と刻印し、100包装品3000箱、500錠包装1500箱を自主回収しました。主成分であるピオグリタゾンの含有量がLDは、HDより少ないので、HDと思って使うと効果がマイルドに出てしまう可能性があるとのことです。回収した製剤は、全て廃棄するそうです。誠実な対応。日本では珍しくないですね。しかし、海外ではどうなのでしょうか?欧米は、それほど違いはないでしょうが、新興国の製薬企業は、医療機関に口頭で伝えることはしても、必ずしも回収までするかどうか。
「日本では錠剤の端がちょっと欠けていてもアウト。海外の企業からすればオーバークオリティだ」と、良く言われます。だから、海外、とくに新興国で、日本と同レベルの品質、製造管理をしていると、コスト高になって競争に勝てない。言葉は悪いのですが、一定のダウン・クオリティが必要になる。しかし、当然、医薬品ですからダウンしすぎると、これまた問題です。その微妙な機微を掴むセンサー機能が、日本企業各社にとってますます重要になるでしょう。
で、写真は上野公園の夜桜。今年もきれいに咲いておりました。東京の花見は今週一杯でお開きです。それではみなさん、充実した素敵な一週間をお過ごしください!
Posted on 3月 30th, 2015 by IDAKA
ちょっと前の週刊新潮(3月26日号=特集「安倍内閣」大臣たちの持ち株リスト)で、塩崎恭久厚労大臣が、様々な業種の大手企業の株式をバランスよく保有していることを取り上げ、「相場巧者」と揶揄していました。
安倍政権は14年秋、我々国民の年金積立金137兆円の運用を担うGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株式に投資できる資産割合を12%から25%に引き上げること認めました。前々から話が出ていましたが、塩崎氏が厚労相になって一気に具現化しました。巨大資産を保有する公的な団体とも言えるGPIFが、日本企業の株式を買い支えするのですから、投資家は安心して日本企業の株を買うようになり、株価は上昇します。
塩崎氏が保有する株式23銘柄を元に、新潮が推計したところ、GPIFの投資割合が上がったことで、同氏は総額1285万9594円の“含み益”を上げたといいます。その「稼ぎ頭」が武田薬品(3630株保有)で、“含み益”は574万2660円だとも指摘しております。 話を単純化すると、塩崎氏はGPIFが大量の資産を株式市場に投入することを認めることによって、大企業を支え、自らもザクザク資産を増やしたということです。閣僚の株式投資は禁止されていませんから、別に悪いことではないんですが、なんだかなあ〜って感じ。個人的には、もう少し中小企業にも関心を持って欲しいです。製薬企業だって、がんばっているのは、武田だけじゃないですから。
で、写真は東京丸の内で。この方、すごいカメラ目線。写真慣れされている(^_^;)。おそらく今週末はサクラ満開!皆様、素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 3月 23rd, 2015 by IDAKA
武田薬品の岩﨑真人取締医薬営業本部長が先週、製薬業界各紙のインタビューに応えて2月に発売した胃酸分泌抑制剤タケキャブの国内売上拡大に意欲を見せています。この領域の薬物治療は、現在、胃酸を出すプロトンポンプという部分を阻害するPPI阻害薬(Proton pump inhibitor)が主流ですが、タケキャブは既存品とは違う働きでプロトンポンプを阻害するP-CAB薬(Potassium-Competitive Acid Blocker : P-CAB)という新しいタイプです。
武田はタケプロンというPPI阻害薬のトップ製品を持っていますが、タケプロンの特許が切れ、後発品がわんさか出てきて市場を侵食されているので、タケプロンとは違うタイプのP-CAB薬である新薬タケキャブを出したのです。新薬ですから、当然、薬価は高いし、特許で守られるので、当面、後発品は出て来ません。安心して市場開拓ができます。
ところがタケキャブの承認申請で武田が提出したタケプロンとの比較試験の結果は「非劣性」。要するに、タケプロンと比べて「劣っていないけど、とくに優れてもいませんよ」ってことなんです。「ニュータイプの胃酸分泌抑制剤です!」ってプロモーションで押しまくれば、医師も「ちょっと使ってみっか」って感じになりましょうが、これってどうですか?
現在、PPI市場のトップ製品ネキシウムを持つアストラゼネカは2000年代初頭にP-CAB薬の開発を進めていましたが、ネキシウムとの比較試験の結果が「非劣性」だったので、「やってもしょうがない」と開発を中止した経緯があります。アストラゼネカ日本法人のガブリエル・ベルチ社長は武田のタケキャブも同じで、「PPIと比べて優位性がないのに一体、どこで使うの?」と疑問視しています。
胃酸分泌抑制剤はタケキャブの登場で激しいプロモーション合戦に突入します。かつて熾烈な宣伝合戦を繰り広げ、一線を踏み外した高血圧治療薬ブロプレス、ディオバンと同じ轍を踏まないようにメーカーのみならず、医師、メディアは要注意です。とくにメディア!!他人事だと思って、提灯記事ばっか書いてちゃダメですよ!変にケチ付ける必要もないけど。
で、写真は、武田(左、左から2番目が岩﨑氏)とアストラゼネカ日本法人(右、真ん中がベルチ氏)の会見風景。ではみなさま、満開の桜ももうすぐです。素敵な一週間をお過ごしください!