Posted on 6月 20th, 2016 by IDAKA
「我々の使命は疾患の撲滅です」
奏効率が90%を超えるC型肝炎治療薬ソバルディ、ハーボニーを生み出したギリアド・サイエンシズ社の幹部が、かつて、そう話しました。感動と同時に、驚きを感じたのを今でも覚えています。
余命伸長、QOL改善は大事なことですが、患者が最も求めているのは疾患の「完治」です。高血圧、糖尿病、高脂血症など生活習慣病の症状を和らげる薬を、末永く飲み続けてもらったり、余命いくばくもない終末期患者に高額な医薬品を使ってもらうことは、収益面から見て、製薬企業にとって悪くないでしょう。しかし、疾患を「撲滅」したらどうなるでしょう?新薬開発力がない企業は、売る薬がなくなって困ってしまうかもしれませんね。でも、それを敢えて、口にする。ひとつの疾患を「撲滅」したら、次の疾患の「撲滅」に邁進する。その覚悟が素晴らしいと感じました。
日本の眼科医、窪田良氏が2002年に米国シアトルで創業したアキュセラ社も、そんな会社のひとつです。「世界から失明を撲滅する」という理念を掲げて、加齢黄班変性などの治療薬開発を進めています。そんなアキュセラですが、先週、08年から続けていた大塚製薬との共同開発が終わりました。臨床試験フェーズⅡb3の結果が良くなかったようです。残念です。しかし、新薬開発には失敗がつきもの。「失明撲滅」の旗を降ろさず、前進して欲しいです。
写真は都内で。建物の間に飛行機雲発見!!!みなさま。素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 6月 13th, 2016 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?そぼ降る雨でスタートを切った6月の第2週。いかがお過ごしですか?まるで夏のような暑い日が続いたので、小休止。自然界はうまくできていますね。
さて先週は、日本製薬団体連合会の保険薬価研究委員会の総会がありました。16年4月の薬価改定分析、新薬収載、医療保険制度の動向について研究報告がありました。消費税を増税するとなれば、その時、薬価をどうする?市場価格を調査して薬価を改定するのか?しないのか?という論議になるところでしたが、17年4月の増税が2年半先送りになったので、とりあえず、薬価問題も延期。じっくり対応を練る時間ができました。とはいえ、政府は16、17、18年度の3年間で社会保障費の伸びを1.5兆円に抑える方針なので、要注意です。肝心なのは「社会保障費」といった場合、それは医療費だけじゃないという点です。「年金」「介護」もあるわけです。なんだか「医療」ばかり熱い論議が繰り広げられ、叩かれ続けている気がします。そこをどう考えるか?医療、医薬業界は、どう対応するか?今後の課題です。
Posted on 6月 6th, 2016 by IDAKA
みなさんお元気ですか?本日は緊急告知がございます。来る7月8日金曜日。第3回製薬ビジネス活性化セミナー「製薬企業にとって広報とは!?」を開催いたします!!!
講師は旧三共、第一三共、ジャパンワクチンで通算10年以上、製薬企業の広報マンとして活躍され、現在も、三菱自動車の経営企画本部副本部長として現役バリバリの広報マンを続けていらっしゃる吉田雄三氏。そして産業ジャーナリストとして20年以上ご活躍なさった後、2000年に井之上パブリックリレーションズに入社して広報のプロに転身。今年4月、同社社長にご就任された鈴木孝徳氏です。
おかげさまで私の医薬、医療業界ジャーナリスト生活は四半世紀を超えました。しかし、今ほど、製薬企業、各種関連団体の「広報」機能が弱体化していると感じたことはありません。「製薬企業」=「悪」と断定する偏見報道・出版物の横行、ジャーナリストと真っ向から向き合おうとせず、最小限の情報しか外に出さない製薬企業、関連団体。このままでは誤解が誤解を生んで、疑心暗鬼ばかり大きく膨らんでいきます。萎縮しきってタコツボ化した企業、業界環境のなかで、果たして最先端科学・化学、医学、想像力の結晶である画期的新薬が生まれるでしょうか?政府がいう「日本経済の牽引車」なんぞ、夢のまた夢です。
製薬企業、業界団体は「広報」を軽んじてはいませんか?少なくとも社会と向き合う最初の扉が「広報」だと思うのですが、ものすごく敷居が高かったり、サイズが小さかったり、人がいなかったり、重装備だったり。。。このままじゃまずいです。
今回のセミナー。吉田氏、鈴木両に、自らの広報論を思う存分、語っていただきます。日時は7月8日(金)、場所はTKP八重カンファレンスセンター。17:30開始です!!
Posted on 5月 30th, 2016 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?今週は、そぼ降る雨でスタートです!!
さて安倍首相が消費税増税再延期を決めました。17年4月から現行8%を10%に引き上げる計画でしたが、2年半先送りして19年10月からにするそうです。当ブログ、薬新カフェは既に1月25日付『アベノミクスの「逆噴射」、主要閣僚の収賄疑惑で、「消費税再増税の延期」も!!!』で先送りを予測していました。その通りになったわけです。
診療報酬、薬価改定は、2年周期で4月に実施します。次の改定は18年4月、その次は20年4月ですから、消費増税時期の19年10月と半年近く「ずれ」が生じてしまいます。当然、「消費税が変わったんだから、19年10月にも、市場価格を調査して薬価改定し、診療報酬も改定すべき」という意見が出ます。
実はもともと、10%への消費税増税は15年10月にやるはずだった。それが17年4月に延期され、今回さらに19年4月に再延期となったわけです。15年10月前も、通常改定(16年4月)の半年前だったから、診療報酬、薬価をどうするかが課題で、いろんな議論があった。これから、デジャブのような状況が生まれるのです。
議論はこれからですが、消費増税を巡っては、もう何度もドタバタ劇を繰り返している。政府としては、このうえさらに診療報酬、薬価改定でもめたくない。そう考えると「改定が半年後(20年4月)にあるから、19年10月は無理して改定しなくていい。とりあえず据え置にして20年4月に消費税分を加味して改定しよう」という展開もあるかもしれません。
で、写真は都内散策中に撮影。季節は、そろそろこの方たちの出番です。気温の変動が激しい今日この頃。皆様。体調管理に気を付けて。穏やかで、素敵な1週間をお過ごしください。
Posted on 5月 23rd, 2016 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?
さて先週の薬新カフェで「製薬各社の16年3月期決算は概ね好調」と書きましたら、業界の先輩から叱られました。いわく「どこが好調や?国内数値、見てみぃ。どこもボロボロや。数値がよく見えるのんは、海外で伸ばしている企業だけや。そんでもって日本では、これからは費用対効果分析を使ってさらに薬価を叩く。市場は厳しくなる一方や」。確かに(^_^;)。ちとおおざっぱだったかも知れません。先週18日の中央社会保険医療協議会は「次に消費税が上がったから、薬価をどうするか」という本題はどこへやら。「クスリが高ーい!とくに免疫チェックポイント阻害薬オプジーボが高ーい!」という意見のオンパレードでした。オプジーボは薬価が高く、一回の投与で70万円を超えると言われます。
業界からすれば「いい薬に高い薬価が付いて何が悪い?」って言いたくなるでしょうが、実は突っ込まれる理由が確かにあるんですよね。オプジーボは効く人には、ものすごい高い効果を発揮しますが、それは対象患者の半分にも満たないのです。にもかかわらず、患者の絞り込み研究よりも、適応追加が先行し、メラノーマ、非小細胞肺がん、腎がんと使用領域がどんどん拡大しています。要するに企業戦略でいえば「小さく生んで大きく育てる」。しかし、医薬品の場合、もうそれでは済まない時代が来ているんです。特に、抗がん剤は。。。。。。「効かないかもしれないけど、効く患者かいるからとりあえずやって使ってみる」という判断は支持されなくなってきている。オプジーボは適応追加より前に(あるいは、少なくとも同時に)、遺伝子多型の違いによる患者の絞り込み研究を進め、結果を示すべきだったと思います。抗がん剤の新薬開発は、効く患者、効かない患者の選別研究が同時に要請される時代が来たと言っていいでしょう。実際、ファイザーの非小細胞肺がんザーコリは初めから、患者を絞り込んでいます。各社の誠実な取り組みを期待します。
写真は先週、出張があった京都で撮影。穏やかな空間。一瞬ですが、なごみました(*^_^*)それでは皆様。なごやかで楽しい素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 5月 16th, 2016 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?
さて先週は連休明け早々、原稿締め切り。その後、製薬各社の決算会見が集中しました。「今回は、可能な限り直接、会見に参加して経営陣の気風に触れよう!!」と一念発起し、武田薬品、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、塩野義製薬の会見に参加しました。 決算数値は各社概ね好調。武田のウェバー社長体制も2年目となり、安定感が出てきたようです。しかし、急成長するアステラス前では、やや精彩に欠ける。売上高こそ1兆8074億円でトップ(アステラスは1兆3727億円)ですが、営業利益は数年前にアステラスに抜かれたまま。アステラスの約2500億円に対して、武田1308億円です。武田は人事、戦略面で何かと話題を呼びますが、実質的な成果という点では、今一なのです。アステラスは不正製造で問題になった化血研を引き取る方向で協議を進めていますが、「もしアステラスが引き継げば化血研をお荷物どころか、成長企業として発展させるかもしれない」という期待感を抱かせるほど、プラスの勢いを持っています。
第一三共はランバクシーの呪縛から完全に解放され、増収増益。遅ればせながらオンコロジー(がん)に集中します。今後、この領域で、どれだけポテンシャルを発揮するか注目です。エーザイにはアリセプトに続く、認知症治療薬の開発に期待したいです。塩野義は2020年までの単独路線継続の中で、どんな展開を見せてくれるか注目したいです。
写真は先日、街で遭遇した可愛いらしい連中です。決算会見で忙しなく飛び回る道すがら、ホッと一息気持ちを和ませてくれました!!では、皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!
Posted on 5月 9th, 2016 by IDAKA
みなさあ〜ん。お元気ですか?ゴールデンウィーク(GW)はゆっくりされましたか?
私は結構、外出機会が多く、久しぶりに室内業務から解放され、リラックスできました。でGW明け早々、いきなり原稿の締切り。我々、ジャーナリスト稼業は外出、接見、読書、調べもの、執筆の繰り返し。それぞれのバランスをいかに保つかが大事です。どれか一つだけに偏ってしまうと、まずいわけです。GWは外出機会が多かったので、読書、調べもの、執筆をする頭に、急激に切り替えているところです(笑)。なんで、本日は、これで失礼いたします!!(*^。^*)
写真は遠征先の朝食についていたレモンイエローの卵。緑餌だけを与え、自然に育てると、こんな色になるそうです。生まれて初めて食しましたが、美味でした!!というわけで、今週も予定が一杯!!!みなさま。穏やかで素敵な一週間をお過ごしください!!
Posted on 4月 25th, 2016 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?すっかり新緑が美しい季節になりました!!
さて今週27日の中央社会保険医療協議会で、費用対効果論議の対象製品が決まります。その医薬品がどれだけ日本の患者、医療、そして社会に貢献しているか。経済的な側面から検証し、価格がそれに見合っているかどうかを議論するのです。議論の結果は、次の薬価改定に反映させることになっています。小野薬品の免疫チェックポイント阻害薬オプジーボは、ほぼ確実ですが、個人的には16年度薬価改定で、すでにバッサリ引下げを受けたC型肝炎治療薬ギリアドのソバルディ、オプジーボも議論して欲しいです。
薬価は「研究開発イノベーションの評価」と「国民皆保険制度の維持」という2つの命題のバランスで成り立っています。しかし、バランスの良し悪しを何を持って判断するか。共通の「物差し」はありません。勢い現時点では、感覚、情緒、時の政治情勢に左右されてしまいがちです。さすがにそれじゃあ、まずいわけです。
いよいよ本格的に始まる費用対効果論議。対象製品が何にせよ。オール製薬業界でしっかり準備し、大いに議論を盛り上げて欲しいです。
写真は近所で撮影したタンポポ。すっかり綿毛になりました!!では、みなさん。素敵な一週間をお過ごしください!来週5月2日(月)はお休みいたします。次回、更新は9日(月)です!!!
Posted on 4月 18th, 2016 by IDAKA
生物学的技術を使って精製するバイオ医薬品は価格が高いことで知られています。すでに世界売上の上位10製品中、7製品がバイオ医薬品です。しかし、これらの製品特許が、昨年、今年に、続々と切れていくのです。要するに先行メーカーの製造技術を使って、後続品を作っていいわけです。先行品よりも、安く作れば医療費も助かるし、先行品よりも優れた点を発掘すれば、患者にとって朗報です。ところが、日本企業はみな及び腰です。バイオ後続品(シミラー)を製造販売する際は、韓国や、中国に生産委託しているのが実情です。「バイオ医薬品の製造設備は、コストがかかる。一度始めて、失敗したら大変だ」。というのが理由でしょう。使用に際して医療現場、患者の理解も今一つ進んでいないという現状もあります。
与野党を交えた超党派の国会議員が昨年、「バイオシミラーのバイオシミラー(BS)使用促進議員連盟」を発足。識者を呼んで勉強会を繰り返していますが、それ以上の動きはありません。当初は、「バイオシミラーの使用促進に向けた法案を提出する」という声もありましたが、いまは声が小さくなってしまいました。バイオシミラーの使用促進に向けて何をすべきか。おおもとの議論がまとまっていないのです。
欧州ハンガリーではバイオシミラーの有効性、安全性が先行品と変わらないことを裏付けるための市販後研究を、政府が率先して実施しているといいます。ある種、政府が責任を持って「使用促進」の旗を振っているのです。日本ではできないものでしょうか?
写真はとある街の商店街。こいのぼりが一杯!!(*^_^*)
それではみなさん。素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 4月 11th, 2016 by IDAKA
みなさん!お元気ですかあ〜?
さて18年度もスタートして2週間目に突入。医薬品政策で今年度、最大の目玉は、何といっても費用対効果!薬の効果と値段が、本当に見合っているのか?それを議論するのです。本格的な議論はまだですが、早くも場外では前哨戦が始まっています。小野薬品の非小細胞肺がん治療薬(PD-1)抗体、オプジーボが叩かれまくっています。今年2月。本来の所管ではないのに、厚労省の医薬品等安全対策部会で「薬価を下げるべき」という意見が出ました。「すべての患者に使ったら薬剤費は年間1兆7500億円増える」(国頭英夫委員、日赤医療センター化学療法科学部長)と、財政影響を危惧してのことです。先週6日の記者会見で、日本医師会の中川俊男副会長も国頭氏の意見に賛成し、「医療経済学的なことを考えながら医療をする時代に入った。丁寧な議論をしたい」と発言、同日開かれた社会保障審議会医療部会でも「医療財源がもたない。終末期医療の整理が必要」との意見が出ています。
ズバリ言ってしまえば、喫緊の課題は、個々の医薬品の価格というより先に、終末期医療の費用対効果分析でしょう。政治家、行政官は及び腰でしたが、人口構造から言って、もう先延ばしは許されない。待ったなしの状況です。確かに、敬遠したい議論ですが、そこに踏み込まないと、医療財政はパンク。崩壊します。
写真は近くのスーパーの陳列棚。春の彩がきれいです!それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。