住友ファーマの株価が、新体制を発表した今年5月以降、上昇傾向(8月9月時点)にある。厳しい経営状況中で社長交代を決め、記者会見を複数回開催、メディアの露出度も高い。7月末に発表した第一四半期決算は基幹3製品(前立腺がん薬オルゴビクス、子宮筋腫・内膜症薬マイフェンブリー、過活動膀胱薬ジェムデサ)の米国売上が伸長し、前年同期との比較で赤字額が改善した。株式市場も反応しているようだ。住友ファーマ(株)【4506】:株価・株式情報 – Yahoo!ファイナンス
大塚製薬が米国のジュナナ・セラビューティクス(Jnana Therapeutics Inc.)を8億ドルで買収する。買収完了後、開発品の進捗に合わせ最大3億2500万ドルを支払う契約で、総額11億2500万ドルを投ずる。親会社の大塚ホールディングスが2日に発表した。13年に買収した英アステック社の「フラグメント創薬(FBDD)」技術とのシナジー効果で、これまで低分子では困難とされる希少疾患、自己免疫疾患領域で独創的な創薬に挑む。※この原稿は、業界OB「ShinOM」さんにご協力いただきました!
日本イーライリリーの早期アルツハイマー型認知症(AD)薬ケサンラ(一般名=ドナネマブ)を日本で承認するかどうかー。厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会が今日1日の会議(午後16~18時までの予定)で審議する。かりに承認されればエーザイのレケンビ(レカネマブ)に次ぐ2番目の早期AD薬となる。今後、メディアの報道も急増するだろう。しかし、臨床上、どちらがいいかは、まだわからない。脳内に蓄積したアミロイドβ(ADの原因とされるペプチド)に直接関与するという点では同じだが、臨床試験のデザインも、標的も異なる。画期的な新薬は、製薬企業が投じてきた巨額な費用と、研究開発努力の結晶だ。人々の健康と幸福を守る「社会的な資産」とも言える。メディアの扱い次第では、それに水をかける。各社の報道姿勢も問われるだろう。
何歳まで働くか。どんな風に働くかーー。製薬業界人のみならず社会で“働く人“にとって重要なテーマだ。中外製薬は、社としての考え方を明確に示した。2025年1月以降、人事制度を改め、実質的に定年制を廃止する。年齢ではなく「挑戦」と「熱量」によってどれだけ新たな「価値」を創出したかー。その度合いで、社員を評価する。また、リモートワークの価値を認めながら「対面は大事。会って、話して、つながることがイノベーションを起こす土台になると私は信じている」(奥田修代表取締役・社長懇談会=7月29日開催)との考えを表明。「来たくなる本社オフィス」をスローガンに本社を大改修し、社内にカフェや、交流スペースを新設した。
中外製薬は、メディア関係者と直接向き合い、近距離で対話する場として、夏に「社長懇談会」、冬に「役員懇談会」というイベントを毎年、開いてくれる。社長懇談会はメディア関係者を4グループに分け午前2回、午後2回、計4回、社長が直接懇談する。役員懇談会はメディア関係者を4つの部屋に誘導、社長と財務(CFO)、研究開発(R&D)と安全性など何人かの担当役員がグループを組んで、メディア関係者が待つ部屋を順番に回って懇談する。私が知る限り、この形式は、同業他社にない。これも「創造で、想像を超える」「ヘルスケア産業のトップイノベーター」を目指す、中外の「独創性」だと思う。
医療用医薬品の情報提供体制のあり方がまたひとつ大きな節目を迎えているーー。アステラス製薬が23日に開いたグループ取材でそう感じた。業界のMR数は19年度以降、数千人規模で激減し続けている。各社とも効率化をとことん追求しながら、自社製品のブランド価値を最大限高める新手を練っている。そんな中、アステラスはコマーシャル(営業)部門とメディカルアフェアーズ(MA)部門の「協働」(連携強化)を進める方針を打ち出した。過去約10年、営業とMAは「区分」「区別」が強調され、両部門の距離は遠かった。アステラスは、それを近づけるという。時代は行きつ戻りつ、新陳代謝を繰り返している。
AI(人工知能)を使った新たな治療技術や、医薬品開発(創薬)技術の提供事業が国内でも認められつつある。日本では10年程前から話題にはなっていたが、実証事例がなく医療機関、メーカーは、まだ「半信半疑」だった。しかし、ここ数年、当局の承認を得たAI搭載のプログラム医療機器が続々と登場。製薬企業が創薬に活用して成果を上げるケースも出てきた。自社開発のAIエンジン「KIBIT」(キビット)を持つ日本企業FRONTEOは、医療分野でのAI技術活用、提供サービスに力を入れている企業のひとつだ。最近、メディアやアナリスト向けのイベントを頻繁に開いて、積極的にPRしている。
新薬の早期導入に向けた日本の前向きな取り組みが、これまで事業実績がない海外製薬企業の新規参入を促すーー。その予兆が早くも出てきた。イタリアの研究開発型バイオ医薬品企業キエジグループの日本法人、キエジ・ファーマ・ジャパンが7月24日から日本で単独事業を開始する。キエジグループのジャコモ・キエジ取締役 希少疾患事業部門長【写真】は7月11日の記者会見で、単独事業を始める理由として「日本市場は米国、中国に次ぎ3番目に大きく、長期に渡って安定している」としたほか、薬事プロセス、患者アクセス、医療保険の償還度合いにおいて「予測可能性が高い」と述べた。