アルツハイマー治療薬「承認されども普及せず」!!エーザイ、バイオジェンの「アデュヘルム」

 みなさんお元気ですか?相変わらず冷えますねぇ。新型コロナは変異を続けていますが、それは想定内のこと。昨年のようなドタバタ劇や、恐怖感ばかり煽る情報洪水は、何とか避けて乗り切りたいものです。オミクロン株っていうとなんか「尾身」さんを思い出してしまうのは私だけでしょうか?失礼しました(笑)

 さて先週、米国の公的保険センター(CMS)が、エーザイとバイオジェンが共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬アデュヘルムについて「公的保険の適応は、臨床試験に参加する患者のみとする」との判断を発表しました。

 この薬は、もともと米国で承認の是非を巡り、かなり多くの専門家がネガティブな意見を発していました。しかし、米国食品医薬品局(FDA)は昨年、それを押し切って承認。米国の臨床現場で、どう使われるのか注目されていました。

 そんな中で今回、CMSが、新たな判断を示したのです。FDAが有効性、安全性を認めて承認したはずなのに、今後継続してデータを集める臨床試験に参加しないと、公的な保険財源からの支払いはしないというのです。すでに民間保険会社や大手病院チェーンでは、アデユヘルムの採用を見送るケースが多発していましたが、公的保険での使用も制限がかかったことになります。

 まあ、企業側から見れば「せっかく承認されたのに普及しない」という悲しい状況に直面しております。

 CMSの判断は、アデュヘルムの承認を留保している日本、欧州当局の審査にも影響するものと見られます。アルツハイマー型認知症治療薬の開発ってやっぱり難しい。とはいえ、だからこそのチャレンジであり、イノベーションでもあるわけです。この難局をいかに乗り越えるか?エーザイ、バイオジャンに注目しています。

 写真は休日の新宿。久しぶりの歩行者天国。静かあーっでしたわあ(苦笑)それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 

 

 

多様化する新薬の「モダリティ」と「疾患定義」!薬価制度だけ「そのまま」というわけにはいかんだろう!

 みなさんこんにちは!寒い日が続きます。って冬だから当たり前ですね(笑)冬は寒い方がピリッとして気持ちが引き締まる!今回は2022年、1発目の投稿です。

 やはり次の薬価改革(4月実施)は、大きな制度改革にはなりませんでした。年末の最後の最後に、特許が切れた先発品、いゆる長期収載品の薬価引き下げについて、厚労省が新しい手法を、いきなり出してきて、そのまま了承ということになりましたが、そのほか全体的にみると、割と業界の意見も活かされている。

 さてこれからどうするか?本質的な議論は、これからですね。

 新型コロナで良くも悪くもあらゆる領域で、これまでの常識が通用しない。「ゲームチェンジ」が進んでいます。薬価制度も同様で「これまでこうだったからこのままいいのだ!」的な意見だと通りにくくなってきた。そもそも新薬のモダリティ(基盤となる技術、様態)がどんどん進化し、治療すべき疾患の定義付けも日々刻々と変わっている。それこそが製薬企業のイノベーション(技術革新)であり、チャレンジなわけです。そんななかで、社会保障とのバランスで成り立つ薬価制度だけ「そっとしておいて!このままにしておいて!」というのは、なかなか理解されにくい。業界側から新提案をどんどん出していく時期ではないでしょうか?

 というわけで今回はこの辺で。写真は都内の一角で。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 

 

薬価制度改革はマイルドに決着、多くの課題を先送り

   みなさん、お元気ですか?

 ヒトの世に大混乱をもたらした新型コロナのパンデミックもようやく落ち着きを見せ、医薬品業界にとって最大の関心事、22年度の薬価制度改革論議もあっけなく決着しました。

 薬価制度改革は、中医協(厚労省の審議会)で議論するのですが、開催回数、時間とも近年まれにみる少なさでした。例年10数回するところ、わずか9回。しかも論点を整理したら、そく次の回で具体案が示され、その場で了承となりました。

 新型コロナパンデミック、自民党総裁選、衆院選などが重なり、政府としてもあまり深い議論、大きな決断をしたくなかったようです。薬価制度の改革内容も、概ね業界の要望が活かされ、まあ大きく言えば(勿論、あくまでも大雑把に言えばです)「マイルドな改革」だと言えるでしょう。

 キャッチフレーズを付けるとしたら、「クリスマスプレゼント改革」「お年玉改革」「課題先送り改革」となりましょうか?要は、大きな課題は、来年以降に先送りした嵐の前の静けさを感じます。

 ということで今回はこの辺で。。。

 写真は近くのスーパー。忙しくなってきました(笑)あんまり急き立てないでぇー(笑)それでは皆様、素敵な年の瀬をお過ごしください。

 

サーモグラフィ体温測定器が「正常です!」って元気よく言う件

 

 みなさんお元気ですか?2021年も残りわずか。年齢を重ねるごとに感覚的なスピードは上がっていく。

 さて各種の取材、記者会見もだんだんリアル開催が復活してきました。コロナ禍前には見られなかった光景ですが、会場に入る前にサーモグラフティ・センサーが設置されているケースもあります。カメラの前に立つと、自動的に体温を測定。入場の是非を判断するって寸法です。

 先週、ある記者会見の会場入り口にセンサーがあり、カメラ前に立つと私の体温は36度ちょっと。センサーくんが、元気な声で「正常です!!」って言ってくれました。しかし、もし熱があったら一体、なんて言われたんだろう?受付の方に「もし熱があったら、このセンサーくんはどう答えるんですか?」って聞いたら、「わかりません(苦笑)」とのことでした。「正常」の反対?「い・・・」?ちょっと怖い気がしました(笑)

 ということで今回はつまらんよもやま話でした。写真は黄昏時、とある公園にて。それではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください。

 

【お知らせ】12月21日火曜日夕刻から株式会社EPファーマラインのセミナーに登壇します。ご興味があれば是非、ご参加ください。

 

新型コロナ対策の「過去を振り返り、教訓を見出す」会議を!新政権、厚労省への期待

 みなさんお元気ですか?

 新型コロナの感染拡大が弱まってほぼ2か月。変異型のオミクロン株がどうなるかまだ予断を許しません。しかし、現在の感染状況をみると1~6波までで、ひとまず区切りは着いたといってよいのではないでしょうか?なんだか9月までの喧騒が嘘のように日常生活が徐々に平常化しています。

 しかし今だからこそ、大事なのは過去を振り返ることだ。そう考えます。20年1月から1年数か月続けてきた新型コロナ対策、各種政策を、現時点に立って、どう評価するか?そこから何を学び、次のパンデミックに備えるかーー。

 この9月までの1年数か月は「非常事態」であり、かつ「異常事態」でした。特定施設、空間をターゲットとするクラスター叩き、小中学校など教育機関の閉鎖、いわゆるアベノマスク供給、未承認薬アビガンの増産供給、断続的な緊急事態宣言とGOTOキャンペーン、テレビ、活字メディアの警告的、狂騒的、煽情的な情報発信などなど。

 過去1年数か月を振り返り、新型コロナの各政策の有効性、副作用を今だからこそ、冷静に検証し、公的な記録に留めておくべきでしょう。厚労省には、それを目的にした検討会、審議会を設定して欲しいです。

 2009年に海外でパンデミックになった新型インフルエンザの時、日本は自国にも、このウイルスが来るのを前提に各種政策を検討して戦略を打ち立てました。ところが、幸い、このウイルスは日本でパンデミックを起こすことはなく、収束していきました。その後、時の経過とともに、ウイルス性感染症に対する恐怖心は薄れ、当時打ち立てた戦略も忘れ去られていきました。

 「09年の戦略が実行に移されていたら、新型コロナもこれほどまで混乱することはなかった」。私は何人もの識者から、そんな声を聴きました。

 喉元過ぎれば熱さを忘れるー。今度こそ、そうなりませんように。。。。

 写真は近所を散策中に撮影。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!

 

【お知らせ】12月21日火曜日夕刻から株式会社EPファーマラインのセミナーに登壇します。ご興味があれば是非、ご参加ください。

 

 

沢井製薬による小林化工の「救済買収」、オリックス、わずか2年弱で譲渡

 

 みなさまお元気ですか?

 新薬の特許が切れた後に、その新薬と同一成分の薬を製造し、安価で臨床現場に供給する後発医薬品(ジェネリック医薬品=GE)ー。医療費効率化の名のもとに、政府が掲げたGE使用目標80%(数量ベース)は、ほぼ達成しました。さて、この先、GE業界は、どうなるか?

 「GEメーカーは企業数が多く、価格のたたき合いをしがち。結果、製造できなくなって供給不安が起きる。企業の再編、統合が必要」。かねて、そんな批判、意見が飛んでいました。

 先週、大手GEメーカー、沢井製薬のホールディングス(サワイグループホールディングス=サワイGHD)が福井県のGEメーカー、小林化工を買収、子会社化すると発表しました。

 小林化工は、杜撰な製造体制で、昨年、経口真菌剤イトラコナゾールに睡眠剤を混入させ、患者に甚大な健康被害を与えました。その後も複数の製品で続々と問題が発覚、製品回収を繰り返し、行政処分を受けることに。。。もうボロボロと言っていい状態でした。5月に経営陣を刷新して以降、売却先を探していましたが、今回、晴れて沢井製薬が買収することになりました。名前も「トラストファーマテック」に改めるそうです。

 小林化工は20年1月に、オリックスに買収されたばかりでした。その年の秋に問題が発覚。オリックスは、わずか2年弱で小林化工を沢井に譲渡することになったわけです。

 オリックスという異業種がどんなGEビジネスを展開するか。楽しみにしていたんですが、致し方ありません。オリックスは小林化工を数百億円で買ったと見られますが、沢井への譲渡額はそれより相当、低いでしょう。まあ、沢井側からすれば“救済買収”とでも言いましょうか?

 沢井は今年4月から、親会社を置いて、その下に事業を行う関連会社をぶら下げる、ホールディングス方式に姿を変え、色々な事業、企業を買収しやすい体制を敷いていました。とはいえ、国内のGEメーカーの買収には、表向き消極的に見えました。しかし、実際は、そうでもなかったんですね。

 これを機に、他のGEメーカーにも再編、統合の動きが出るでしょうか?今後の展開に注目したいと思います。 

 写真はサワイGHDの澤井光郎会長(CEO)。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 

 

医療保険で支払う「医薬品価格」の議論が見えにくい!

 

 みなさんお元気ですか?

 22年4月の薬価制度改革に関する議論が年末にかけて佳境を迎えます。

 今回はコロナ禍の緊急事態宣言、自民党総裁選、衆院選などの影響もあり、公的な議論の回数が極めて少ない。中央社会保険医療協議会薬価専門部会のことですが、従来なら改定前年の4~11月に10回程度は開かれるところ、今回は今日11月29日時点で、わずか6回しか開かれていない。

 さすがに今週は12月1日と3日に会合がセットされましたが、遅れを取り戻すには、今後年末までギュウギュウ詰めの予定が組まれることになるでしょう。

 ただ、もしかしたらもう公的な会合の意義が薄れているのかもしれない、とも考えます。表ざたにならない水面下の交渉、議論が主流になれば、公的な会合はもはや「セレモニー」でしかない。当然、回数も減る。そうならないことを願います。議論はなんでもオープンに。なかんずく社会保障に関するテーマは薬価改定も含め、国民、一般に開かれていることが大事だと考えます。

 というわけで今週はこの辺で。

 写真は久々に見た日の出!寒くなってきました。みなさまお身体に気を付けて。素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 

日医、横倉前会長の「コロナとかかりつけ医」論、岩波新書から発刊

 みなさんお元気ですか?21年もあとひと月ちょっと。9月まで約1年半はコロナ禍、緊急事態宣言で、毎日に大きな変化がなかったからか、今年はとくに早く感じます。

 さて今回は書籍の紹介。日本医師会の横倉義武前会長著、「新型コロナと向き合うー『かかりつけ医』からの提言」が岩波新書から発刊されました。実は、まだ斜め読みでしっかり読めてないのですが、情報は速さも大事なのでお伝えしたいと思います。

 横倉氏は2012年から20年6月まで4期8年間、日医会長を務めました。今回、発刊された著書は、横倉氏が医会長として新型コロナとどう向き合ったか。20年1月から6月までの半年間の活動をドキュメント形式で書き記しています。このような類の書籍や記事にありがちな自分を必要以上に大きく見せようとする「武勇伝」や「手柄話」に陥らず、うまくいったことも、いかなかったことも、あるいは現時点において社会的にも失敗、判断ミスとされていることも、自らが日医会長として携わった政策であれば、包み隠さず記しているように思います。遠慮がちというか、あまり多くはないのですが、ところどころ反省(?)らしき記述もあり、だからこそ本書は今後の政策課題を照らす提言にもなり得ると。。。私はそう受け止めています。

 中でも第3章の「『かかりつけ医』の果たすべき役割」では、横倉氏が理想とする「かかりつけ医」像が語られ、おそらく今後も発生するであろう新興感染症といかに向き合うか。自らの問題意識も述べられています。以下、3点、抜粋します。

 「かかりつけ医が一層、普及・定着していれば、新型コロナ感染症についても相談、検査、診断と治療、療養といった一連の医療を切れ目なく、適切かつ円滑に行えたのではないか」(226頁)

 「今回のような感染症パンデミックにおけるワクチン接種において、かかりつけ医がどのように関与していくことが求められるのか(略)、今後考えていく必要があります」(229頁)

 「感染症パンデミックなどの緊急時におけるかかりつけ医の関わりについて(略)さらに考えていく必要がある」(235頁)

 コロナ禍で、医師会幹部は、コロナの危険性を認識させるため国民に何度も何度も「警告」を発しました。しかし、コロナ禍で「かかりつけ医」は何をするのか、医師会は組織としてどんな取り組みをするのか。不安で一杯の国民に寄り添う発信はほとんどなかった。私は、医師会が国民に「安心感」を与えてくれることを期待していましたが、それは叶わなかった。

 そう考える私にとって横倉前会長の提言は「かすかな光明」となり、明日の希望となるのであります。

 写真は日本医師会の横倉義武前会長。それでは皆様、少しずつ冷えてきます。お体に気を付けて。素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“賞味期限”が近い薬価の「調整幅」。まずはその意義、機能、影響について公正なる議論を!!!

 

   みなさん、お元気ですか?先日、気の早い商店からクリスマスミュージックが聞こえてきました。「ああ、また1年が終わってしまうんかあ」。。。と焦燥感にかられました。まったく時間、歳月ってやつあ~、人々の営み、計画なんて、てんでそっちのけです。情け容赦なく一方的に、先へ先へと流れていきます。

 さて先週11月8日、財務省が、同省の基幹会議というべき財政制度審議会に「薬剤費の予算統制」という資料を提示しました。まあ、毎度のことながら「医療保険で支払う医薬品の価格を抑えるべし」と主張しています。財務省は日本国の金庫番ですから、結局、薬だって安ければ安い方がいい。だから財務省が「薬剤費の予算統制」というのは、当然と言えば当然のことです。ただ、今回は、薬価の決め方、改定の仕方を根本的に見直すよう提言している。その点で、いつもより一歩、踏み込んでいると言っていいかも知れません。

 医療保険で支払う医薬品の価格は定期的に見直しています。メーカー、卸が医療機関や薬局に販売した価格を基に見直すのですが、2%以内だったら値引きが認められています。例えば保険薬価100円の薬を98円で売っても、保険薬価は100円で据え置きとなります。2円分は医療機関、薬局の収益(薬価差益)となります。この2%を薬価制度では「調整幅」と呼んでいます。公的に認められた“薬価差益”といってもいいでしょう。

 しかし、今回、財務省が作成した資料では、このまま薬剤費が伸びるのであれば「調整幅の廃止も検討せよ」と訴えています。

 そもそも「調整幅」って一体、なんなのか?なんのためにあるのか?2%のまま今後も続けていっていいのか?実は、ずっと前から、曖昧なままです。ただ、もし真正面から議論することになれば、簡単に答えは出ず、収拾がつかなくなる。そう考えて、敢えて曖昧なままにしておいた。しかし、ここに来て財務省が、正式に検討会課題にするよう提案したので、波紋を呼びそうです。

 さきに厚労省の審議会(中央社会保険医療協議会)も、まさに「調整幅の在り方」を議題に載せました。そこに財務省が、おいかぶせるように乗っかって、本気で議論するよう求めた格好です。

 万物流転。時間は流れる。時代も人も技術も変わる。制度だって不動は許されない。ある程度、継続するにしてもやはり賞味期限ってもんがあるはずです。薬価の「調整幅」も、そんな時期を迎えたのではないでしょうか?

 写真は紅葉、もう1週間もすれば、もっと一面に広がるでしょう。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

【お知らせ・IQVIAセミナー 視聴可能期間21年12月8日まで】

どうなる?新政権下での薬価制度と医薬品のこれから

 

 

 

 

 

 

【お知らせ】次のブログ更新は明日16日(火)となります。

 みなさんお元気ですか?毎週月曜更新の薬新カフェ。今回は都合により明日16日(火)にさせていたさきます。よろしくお願いいたします。

 

 

 

 
 
 
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