中外製薬が「眼科」、「皮膚科」領域で“ユニークな抗体医薬品”の承認を取得!!!いまだ衰えを見せない技術主導の開発戦略!次なる課題は医薬品を超える新サービス開拓

 みなさんお元気ですか?

 中外製薬の奥田修社長が先週、記者懇談会で、同社の現状について色々やり取りしてくださいました。中外は21年に売上高9998億円を達成。22年度は、創業以来初めて売上高1兆円超える見通しです。

 世界的な製薬企業スイス・ロシュの傘下に入りながら、日本国内で上場を維持し、中外製薬独自の新薬を生み出し続ける。このスタイルが確立して早20年が経過しました。日本で最も早く抗体医薬品開発、製造に乗り出したのも中外で、その勢いは、いまだ衰える気配はありません。

 中外の新薬開発は技術重視で、初めから特定の疾患領域にターゲットを絞る戦略は取りません。技術が使えるところなら、どんな疾患でも開発ターゲットになります。

 最先端技術を使った開発ですから、結果的に、ニーズが高く、新薬トレンドの移り変わりが激しいがん領域が多いのが現状ですが、時々、面白いものが出てくる。本日3月28日に、アトピー性皮膚炎のかゆみを改善する抗体医薬品「ミチーガ」、加齢黄斑変性を治療する抗体医薬品「バミースモ」(ロシュから導入)の製造承認を取得、間もなく臨床現場で処方してもらえるようになります。

 そんなこんなで、中外の新薬開発力は日本の中でも際立っています。ただ、数年前に打ち立てた経営計画では、目指すべき姿を、それまで掲げていた「日本のトップ製薬企業」から「世界のヘルスケア産業のトップイノベーター」にすそ野を広げました。医薬品以外の患者貢献サービスを含めて、ヒトの健康と幸せを支えるという思いからでしょう。新薬の開発力では申し分のない中外ですが、自ら掲げた理想像を実現するには、今後、薬以外でどんなサービスを生み出し、存在感を示すかも課題になりましょう。期待をもってウォッチしていきます!

 写真は奥田修社長。それではみなさん、素敵な1週間をお過ごしください!!!

 

 

エーザイの内藤晴夫CEO アルツハイマー治療薬開発「不退転の決意」表明!!!

 

 みなさんお元気ですか?春近しと言えど本日、降雪也。油断ならん気候です。

 さて先週16日、アルツハイマー型認知症(AD)の治療薬開発に力を入れているエーザイのインフォメーションミーティングが開かれ、内藤晴夫代表執行役(CEO)が今後も、ADの治療薬開発に不退転の決意で臨む姿勢を表明しました。

 エーザイは90年代半ばにADの進行を遅らせる薬アリセプトを米国、イギリス、日本に送り出して以降、一貫してADを「治療する薬」の開発を目指しています。しかし、この領域は中々、ハードルが高い。症状の進行は抑制できても、症状をなくす、すなわち「治療効果」を証明した薬は、今の今まで出ていない。

 昨年6月、エーザイと米バイオジェンとの共同開発品アデュカヌマブ(バイオジェン発)が、ADを引き起こす1因とされる脳内のβアミロイドを除去する薬として米国で承認されました。しかし、「疾患に、どこまで効果があるか、副作用は大丈夫か、データが不十分」と承認そのものを疑問視する専門家も多く、追加試験が義務付けられています。さらに米国の公的医療保険は、追加試験に参加する患者にしか認められない状況です。

 しかし、エーザイは新薬開発を続ける大方針を変えません。バイオジェンとの間で締結したアデユカヌマブの契約を変更し、自社の負担を軽減したうえで、自ら創製した第3の新薬レカネマブに軸足を置いて研究開発に力を入れます。※レカネマブもバイオジェンと共同開発契約を締結しています。

 先のインフォメーションミーティングは、内藤CEOの決意表明の場になりました。

 そもそもADをどうとらえるかーー。「老化現象のひとつ。治療すべき疾患ではない」という意見も昔からあります。人類の平均寿命が延びる中で、世界的なトレンドがADは治療より、むしろ、いかに予防すべきかが重要視されるようになってきています。そんな状況ではありますが、もし「治療薬」の開発に成功すれば世界初!!!「人類の福音」となるのは間違いないでしょう。

 個人的な意見ですが、エーザイには、新薬の開発と同時に、疾患の発症予防、治療を始める時期と止める時期をしっかり見極めるツールの開発なども期待しています。こちらの方は、ハイリスクハイリターンの新薬ビジネスと比べ、収益化がかなり難しいと思われますが。。エーザイならやってくれそうです。

 ということで写真は熱弁をふるう内藤CEO。今回はリモートで、毎年楽しみにしているリアルライブは観られませんでしたが、液晶画面を通じて熱気はひしひしと感ぜられました!!!それではみなさん!素敵な1週間をお過ごしください!

 

 

治療用アプリに「1年毎の効果証明」を当局が要請、医薬品は必要ないのか!?

 みなさん、お元気ですか?今週は、ホカホカの陽気でスタート。気温は4月まで行きつ戻りつで、本当の春になります。新型コロナ感染症の「まん延防止措置」。今度こそ、延長なしでお願いしたいもんです。コロナについては、20年春以降、このブログでも散々書いているので、もう書く気も失せましたが、もういいでしょう。さすがに。。。(苦笑)

 さて先週、医療ITベンチャー、キュアアップが開発した「高血圧症の治療アプリ」が承認されることになりました。お医者さんが「処方コード」(薬で言うと処方せんに当たる)を発行、患者さんがそのコードから、自分のスマホにアプリをダウンローします。するとアプリから患者さんに適切なタイミングで治療に有用なメッセージが届きます。メッセージを受けた患者さんは徐々に行動を変えるようになり、血圧が改善される。とまあ、そういう効果が認められました。高血圧と言えば、いまは薬物治療が中心で、年間ものすごい量の高血圧治療薬が使われています。もしこのアプリが普及すれば、高血圧の使用量も変わるかもしれません。

スマホアプリで高血圧治療が激変!!!

 医薬品などヘルスケア業界の視点で言うと、注目すべきは当局が出した今度の承認条件。「承認後も年に1度、しっかり効果があることをデータとともに当局に報告せよ」というのです。

 こんな条件は今回が初めてで、今後、承認されるであろう治療用アプリには、おそらく必須条件となる見通しです。で、医薬品はどうでしょう?今は一度承認されたら、大きな副作用がない限り、そのままずっと医療保険で使われています。再審査、再評価という制度がありますが、それも数年単位の長いスパンで、効果証明というより、安全性の確認及びメーカーの独占販売期間を維持する仕組みとして機能しております。個人的には医薬品にも、治療用アプリのように「1年ごとの効果証明」があってもいい気がします。企業からすれば、コストアップになって気が進まないかも知れませんが。。。。

 ましてや今、効果証明が難しい精神神経系が多く、認知症などの新薬開発が進んでいますから、なおさらそう思います。

 ということで今週はこの辺で。

 写真はキュアアップの佐竹昇太社長です。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!!

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「高度な技術」で「高価な薬」を作っても国民が納得しなくなってきた!

 みなさんお元気ですか?昼間の外気が少しずつ暖かくなり、春の気配が感ぜられるようになりました。今年は、なんとかお花見しながら、飲み食いしたいです。そんな意地汚いことばっかり考えている私です(笑)。

 ロシアのウクライナへの武力侵攻、国内大手証券会社社員らの株価操作疑惑、ほぼ2年間も国民に自粛を求めているコロナ政策などなど。。。。まあ、信じられないというか。。。どっちかっていうと、いつあってもおかしくないけど、まさか現実に起きるとは思わなんだっていう感じの出来事が続いています。

 もう長いことビジネスの世界では「思考を根本的に変えるべき」って言われていますが、ホントに待ったなしなんでしょうね。つか思考というのは根本的に変え続けていかなければ、自分も社会も、なんも変わらないし、面白くないし、明るくない。そういうものですし。。。。前述した3つの出来事も、結局、旧態依然の思考を変えられずにダラダラ温存し続けた結果、勃発してしまった不幸な出来事と言えなくもない。

 で最近、取材でお会いした方々、製薬各社の取り組み、行政の動きを見ると、もう製薬業界をはじめとする「ヘルスケア産業界」は、きれいごとばかりは言ってらんない。成果が問われる。存在意義が問われる。そんな危機感がひしひしと伝わってきます。

 7、80年代くらいまではまだまだ高血圧や、高脂血症など生活習慣病の薬を、沢山のMRを使って販売すれば、それなりに収益が出たんですが、もうそんな時代ではない。新薬だって、ほとんど出尽くしていて、いま、みんなが欲しがっているのは「がん」「認知症」を“完全に治す薬”。症状抑制とか、進行を遅らせる薬が出ても、副作用がきつ過ぎたり、目ん玉が飛び出るくらい値段が高いと「それってどうなんよ?おかしくない?」って一般の人さえクレームを発するようになった。

 各社が目標に掲げている「ペイジェントセントリシティ(患者中心主義)」とか、「サステイナブルな医療(医療サービスの維持継続)への貢献」を実現するなら、単に「高い薬を作って売りさばく」という旧態依然のシンプルな思考から飛び出さないといかんわけです。どう飛び出すか、飛び出した先で何をするかーー。その解を導き出してこそ、イノベーションなのでしょう。

と今回はやたら小理屈をこね回したような内容になってしまいましたが、これにて失礼。

 写真は桜!!!咲くやつぁ~咲くよ!いつでもどこでも!時と場所なんて一向にお構いなくね。それではみなさん素敵な一週間をお過ごしください!

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塩野義の治療薬、田辺三菱のワクチン!コロナ対策で日本企業の動きが進展!“ザ・ニッポン”の高品質、高性能を見せてくれ!

 

 はい、はい、はい、はいっ!みなさんお元気ですかあ!今回は、アップが大幅に遅れてしまい、失礼しました。私は相変わらず地道にやっております!

 さて先週は新型コロナ感染症関連で、国内企業の取り組みの進展がありました。塩野義製薬が日本で治療薬(Sー217622)の承認申請を提出、田辺三菱の子会社メディカゴがカナダでワクチン「コビフェンツ」の承認を取得しました。

 治療薬、ワクチンについて「日本企業は遅れてる!遅れている!早くしろ!早くしろ!」って言われ続けてきましたが、なんとかここまできた。そもそも企業が遅れているというより日本は国家(私たちの危機管理意識も含む)の感染症防衛、研究開発へのバックアップ体制がなかっただけなのに、なんかあるとすぐ企業のせいにされる。そんな中で、ようやっとここまできた。

 それでもやはり新薬です。しかもパンデミック下で、全世界が開発を心待ちにし、催促するようになった。だからこそ企業は急ぎながらも、有効性と安全性の評価、そのバランスの検証に、真摯でなければいけない。何かあれば、これまでの苦労が水の泡。それが製薬ビジネスの宿命です。

 塩野義製薬と田辺三菱。いずれも日本の老舗メーカーです。高品質、高性能の“ザ・ニッポン”を是非、見せて欲しい。そんな思いを抱きながら、22年3月の第一週を迎えました。

 ※新型コロナ禍への対応が一段落すれば、また医薬品の値付け、改定の在り方に関する議論が始まるでしょう。とくに高額薬剤の評価は大きな焦点となります。これまでの議論、政策がどう流れてきたか?今後の論点、将来はどうなるか?今一度、整理したいとお考えの方は以下。IQVIAセミナーをご利用ください。ジャーナリストとしてしっかり整理し、講演いたしました。

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 久しぶりにお花をアップします。マンボウまた延長!気持ちがイガイガしがちなもんで。お花に助けてもらいます(笑)それではみなさま、素敵一週間をお過ごしください。

 

 

超速効で根本的に病気を治し、かつ副作用がない画期的新薬

 みなさんお元気ですか?晴れやかな天気で月曜日を迎えました!風はまだピリリと冷たいですが、これぞ日本の冬の醍醐味!もうあと数か月で2022年の冬も終わる。なので、しっかり味わいたいと思います!

 さて先週、たまたま読んでいた本で漢方医学に触れた一文に遭遇。改めて気づき、思ったことがあります。

 医薬品業界や医療・薬学系の方には、釈迦に説法ですが、漢方は薬を「上品」(じょうほん)、「中品」(ちゅうほん)、「下品」(げほん)の3つに分けて処方します。

 私が理解した範囲で大雑把に言うと、

「上品」は長期的に使用しても大きな副作用はなく健康維持するもの。

「中品」はそこそこ副作用があるが、気を付ければ長期使用も可能で病気を治す効果があるもの。

「下品」は副作用も強く、効果も強いが、長く使ってはならないもの。

 となります。

 これを受け私は、「ああ、漢方は、薬の効果、副作用、使用する期間で分類しているんだなあ」と感慨深く思ったのです。

 西洋医学に基づく医薬品の研究開発は低分子から中・高分子、遺伝子、核酸、細胞医薬品と新たなモダリティ(開発手法)にどんどん移行しております。研究開発コストが上昇し、製品価格も高く設定されます。しかし、患者にとって大事なのは「効果、副作用、使用期間」であって、企業が投入したコストではない。患者が最も期待しているのは「上品」「中品」「下品」の枠に収まらない薬。つまり「副作用がなく、病気を根本的に治療し、長期間使用しなくてもいい薬」です。そんなことを改めて思った次第です。

 副作用がなく超速効で病気を完治させる。そんな画期的新薬の登場を期待して今後も取材を続けます。各社の努力が実りますように!

 新型コロナ禍への対応が一段落すれば、また医薬品の値付け、改定の在り方に関する議論が始まるでしょう。とくに高額薬剤の評価は大きな焦点となります。これまでの議論、政策がどう流れてきたか?今後の論点、将来はどうなるか?今一度、整理したいとお考えの方は以下。IQVIAセミナーをご利用ください。ジャーナリストとしてしっかり整理し、講演いたしました。

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 写真は丸之内で。なんていい天気なんでしょう!それではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

製薬業界は「法人格を持たない団体」が多い、欧州製薬団体連合会の“一般社団化”に思う

 

  はい!みなさんお元気ですか?昨夜は今年に入って2回目の雪。翌日は概ね上がって、私の居住区周辺では大きな不都合はないようです。

 さて先週9日、欧州各国の製薬企業が加盟する欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)が「一般社団法人」の法人格を取得したと発表しました。ニュースリリースでは、その目的を「政策提言などの取り組みをさらに強化し、長期的な活動の継続性を持たせる」と説明しています。これだけではイマイチよくわからないので事務局に聞くと「一般社団化は財務情報の公開が前提になる。財務情報の公開は、運営の透明性、持続性の向上に資すると考えている」と答えてくれました。なるほど。そうなのかあ。

 では他の製薬関連団体はどうでしょう?改めて調べてみると、日本製薬工業協会(主に新薬メーカーが加盟)、日本ジェネリック製薬協会(主にジェネリックメーカーが加盟)、日本OTC協会(主に一般用医薬品メーカーが加盟)、そして各団体を束ねる日本製薬団体連合会は、すべて任意団体。法人格を取得していない。米国メーカーの団体、米国研究製薬工業協会(PhRMA)も法人格を持っていません。

 他業種はどうでしょう?

 

◆医療機器も自動車団体も「一般社団法人」

 医療機器の団体を束ねる日本医療機器産業連合会ほか、その傘下の日本医療機器テクノロジー協会、日本画像医療システム工業会など主だった団体は皆、「一般社団法人」。戦後日本経済をけん引してきた自動車の業界団体、日本自動車工業会も「一般社団法人」です。

 医薬品、医療機器、自動車など産業横断的に会員を持つ日本で最も大きい経済組織、日本経済団体連合会(経団連、もちろん一般社団法人)の傘下団体は、ほとんどが法人格を取得している。

 どうやら法人格を持たない団体が多いのは製薬業界特有のことのようです。一般社団化のメリット、デメリットは不勉強でよくわからないので、いいのか悪いのかもわかりません。しかし、欧州製薬団体連合会の「一般社団化」を機に、業界内の他団体でも議論になるかもしれません。私は、もう30年以上、取材でお世話になっていますが、これまで全く気が付きませんでしたし、気にしていませんでした。

 

 さて私も登壇しているIQVIAの「高額薬剤と医療保険」をテーマにしたセミナー。3月15日までオンデマンドで公開されております。お時間があれば是非ともご視聴ください。

 写真はEFPIA Japanの岩屋孝彦会長(サノフィ社長)です。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

【IQVIAセミナー】

◆高騰し続ける高額医薬品と医療保険制度のこれから

 

 

「高額薬剤と医療保険」で講演 ~過去、現在、そして今後を展望する~

 

 みなさん、こんにちは!今週は降雪予想も出ていて、めちゃ冷えますね。

 さて新型コロナの感染拡大で、まぁ~たまた、まん延防止措置が延期される見通しです。どうするんですかねえ~これ?

 リモートはもう本当に飽き飽きしました。というか疲れますね、これは。移動時間がなく一定の場所で、途切れなく何らかの作業を続けている。自分の仕事の場合、「一生活者」から「取材者」、そして「執筆者」になって、また「一生活者」に戻るというのが、大きな流れなんですが、リモートだと、合間合間に「変身時間」がない。

 なんでもかんでも「リモートでいい」という意見もあれば「いやいや、やはりリアルな交流が必要」という意見もあります。私も、リモートの利便性を大いに享受しておりますが、同時に何かを少しづつ失っている気がする。初対面のあいさつ、懇親、深い議論はどうもやりづらい。液晶画面に映ったヒトの幻影、デジタルに置き換えた合成音声で、いくら交流しても、伝えきれない何かが残る。これは飽くまで私の直観、感触に過ぎませんが、おそらく今後、きっと学術的な研究が進み、リアルの価値を証明してくれるでしょう。リモートで大儲けしたり、得している力のある人がわんさかいて、その人たちが嫌がるから、時間はかかるかもしれませんが。。。。。

 さて先週、少し触れましたが、「高額薬剤と医療保険」をテーマした講演(1月28日に収録)が2月10日~3月15日までIQVIAのオンデマンドで公開されます。

 まあ、私の講演は、当然ながらどこまで行っても一ジャーナリストの見方でしかありません。ただ、心がけていることがあります。単に事象の是非を問うたり、特定の組織、企業をやり玉に挙げて批判のための批判を繰り返すような発信はしないということです。ジャーナリストだからこそ見えてくる本質、ジャーナリストだからこそ提示できる発展的な展望を発信します。このオンデマンドでは、財務省の審議会委員を務めておられる堀真奈美先生(東海大教授)の講演、対談も同時収録されています。お時間がございましたら、是非、ご覧ください。

 写真は神保町の古書店。こんな風景もいずれ無くなってしまうのでしょうか?それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

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イベルメクチンの発見は「幸運な偶然」ではない!「人まね」はダメ!(笑)

 

 みなさんお元気ですか?

 最近、イベルメクチンを発見した大村智先生の著書を読みました。イベルメクチンは、抗寄生虫薬や疥癬治療薬として絶大な効果を発揮する薬です。

 

◆きっかけは川奈ゴルフ場近くの土壌採取から

 よく知られている話ですが、この薬の発見はホント奇跡的。何度聞いても感動してしまいます。大村先生が静岡県伊東市川奈のゴルフ場に行った際、近くの土壌を採取、その土壌の中にいた放線菌がイベルメクチンの素(エバーメクチン)を産生していたというのです。それが、いまでは病で苦しむ世界中の患者を救っています。新たな適応症も次々に獲得しています。勿論、医薬品として世に出るまでには、分離、合成、精製など他にも大変なハードルがあったのですが、始まりは「ゴルフに行ったから、とりあえず近くの土を持って帰って調べてみよう」という大村先生の素朴な行動です。こんな偶然もあるんだなあとつくづく感慨深く思うのであります。

 とはいえ、19世紀の細菌学者パスツールはこう言っています。「幸運は用意された心のみに宿る」。すなわち、しっかり準備していない人に、幸運やってこないんだよってことでしょう。大村先生のイベルメクチン発見も、単なる偶然ではなく、大村先生が常日頃、どんな時でも、新薬の開発に心を砕いていたからこそ、そのきっかけがつかめたと言えるかもしれません。

 

◆「人まねしない」 イノベーター、クリエーターの覚悟

 大村先生の新薬開発の基本姿勢は、ほかの研究者や大手企業が手掛けている物質は、絶対にやらない。「人まねはしない」ということだそうです。人まねをベースに改良すればそこそこのものは生まれるかも知れないし、そちらの方が研究者としての安泰も早いかもしれない。しかし大村先生は、敢えてそうはしなかった。新薬の発見、開発にかける執念、意気込みが、もう根っこから違うんですね。

 このエピソードは医薬品に限らず革新的な技術やモノ、サービスで社会貢献したいと考える人間にとって、大きな教訓、励みになるのではないでしょうか。

 

◆新型コロナの効果は治験結果を待つべき

 イベルメクチンは今、新型コロナ治療薬として期待されています。ただ、新型コロナに効くかどうかは現在、治験中で正式な試験結果を待つのが、科学者として誠実なあり方だと思います。なんか、結構、発言力のある一部の医師会リーダーが一時、「国の責任でイベルメクチンを早く使えるようにしろ!」とかしきりに言ってて、ビックリする(医師の判断で使うのは問題ないのに)とともに、この国の医療は大丈夫なのかなあ?と怖くなりました。新型コロナのイベルメクチン効果は、現時点で「絶対効く」とか、「絶対効かない」とか、ゼロ、イチで言い切ることは厳に慎むべきだと思います。

 写真はイベルメクチンの化学構造式。厚労省の公表資料を撮影。それではみなさま素敵な一週間をお過ごしください!

 

【お知らせ】先週、「医療保険と高額医薬品」の過去、現在、将来について講演し、社会保障問題に詳しい大学の先生と対談をさせていただき、収録を終えました。近く配信されますので、アップされましたら、またお知らせします。お楽しみに!

 

製薬協・岡田会長が産業政策で「決意表明」、是非とも実行して欲しい!

 みなさん、お元気ですか?寒さは相変わらずですが、いくらか日が長くなったようで、なんとなく得した気分になる今日この頃。新型コロナの変異株で、飲食店がみーんな閉まっちゃってるのが悲しい限りですが。。。まあ、新型コロナさんもそろそろヒトとの共存を重視し、かりにヒトにとり憑いても悪さは最小限にしようとしている態度も感じられ、もうあんまりああじゃ、こうじゃ言ってもしょうがない。収まるのを待つばかりですね。

 さて先週20日、日本製薬工業協会の岡田安史会長が記者会見で、今後の産業政策論議について結構、踏み込んだ「決意表明」をしました。製薬産業と、公的医療保険は切っても切れない関係なのですが、今後、製薬各社のビジネスのすそ野が「治療」だけではなく、「予知・予防」「予後」にまで広がっていくことを指摘し、「必ずしもすべてを公的保険でカバーすべきとは思っていない」と述べました。さらに、医療保険を含む社会保障論議の入り口、すなわち「給付をどうする?」「負担をどうする?」という根本的な命題にも、製薬業界として「向き合っていく」との姿勢を示しました。

 製薬協が医療保険のカバー範囲や、負担の問題に触れるのは、私が知る限り、これまでなかった。

 ただ、いつどこで誰が議論し、いつまでにどんな形で、具体案をまとめるのか。また、その具体案は公表するのか。言及はありませんでした。

 製薬業界は課題満載ですが、だからこそオープンな議論に参加し、時には身を切るような姿勢を示すことが大事だと考えております。製薬協、岡田会長の発言がたんなる「決意表明」「意気込み」で終わらないで欲しいなあと切に願います。

 写真は製薬協の岡田会長。それではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください!コロナ禍も冬ももう少しです!

 
 
 
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