日本には医療、医薬品政策に「患者の声」を取り込む仕組みがない!審議会には、せいぜい大学の偉い先生が座っているだけ

 みなさん、お元気ですか?穏やかな天気が続きます。

 さて先週、アストラゼネカ日本法人の主催で、医薬品臨床試験(治験)と、メーカー、医師、患者の関係をテーマにしたセミナーが開かれ、オンライン参加しました。治験の理解、活性化には当然、メーカー、医師、患者関係が良好であることが、大前提なわけですが、ご承知の通り、日本の場合、この3者の関係がギクシャクして必ずしもうまくいっていない。中でも、情報量の点で、最も下層に位置する「患者」の存在、意見発信の機会が少ない。

 セミナーでは「患者の存在、意見の吸い上げが大事だ」という点で識者の見解は一致しました。ただ、それではどうやってそれを具現化するか。具体的な手法となると、なかなか難しい。セミナーに出てきた患者団体の方によると、英国では、トレーニングを積んだ患者代表が、「ペイシェント・エキスパート(PE)」という立場で、医薬品の保険適用、価格設定など政策論議にも参加しているそうです。

 日本で社会保障、医療関係の審議会委員は、医師、保険者、自治体関係者の出身者ばかり。「公的な立場代表」もいるにはいるが、ほとんどが有名大学の先生方です。この先生方が、一般国民、患者の声を代弁できるとはとても思えない。審議会で、発言したのを見たこともない委員もいらっしゃいます。

 一方、英国のPEにしたって、疾患が治ってもその立場は続けられるのか?それとも治ったら任は解かれるのか?一度、PEを長く続けると、それそれで一専門家になってしまい、大学の先生方とほとんど変わらない権威的立場になってしまいやしないか?など、懸念も抱きます。しかし、日本のように、まったくないよりは、かなりましです。日本もそろそろ国民、患者の声を直接反映する仕組みが必要でしょう。

 写真は近くのビルで。風情のあるガラス窓に出会いました!素敵!それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!

 ◆IQVAセミナー「どうなるオーソライズド・ジェネリック(AG) 

先週収録が完了、AGを巡るビジネス環境について「過去」「現在」「将来」のお話しをさせていただきました。公開は6月6日(月)から!ご興味があれば是非、ご視聴ください!

 

 

 

 

 

アストラゼネカ日本法人の業績12.1%増、患者厳選型の抗がん剤タグリッソで補助療法への貢献狙う

  

 みなさんお元気ですか?昨日は複数の案件が重なり、1日遅れの更新で失礼します。

 先週5月17日はアストラゼネカ(AZ)日本法人の決算会見がありました。21年1~12月の売上高は4198億5800万円、対前比12.1%増で順調に推移。日本市場では第3位とのことです。昨年、英国親会社が買収したアレクシオンファーマシューティカルズは、まだ別法人で日本の売上高に反映されていないので、アレクシオンの売上高を組み込めば、もっと大きくなっていることになりましょう。

 AZで最も売上高が大きいのは非小細胞肺がん治療薬タグリッソ。いま外科手術後の補助療法(再発防止などを目的とする薬剤投与)の適応症を追加申請しています。

 AZのステファン・ヴォックスストラム社長は「がんを死因としてなくしたい」と、補助療法の追加適応の意義を強調しました。

 かつて私が尊敬する外科医は「しっかり手術したのに、“念のため”という理由で、抗がん剤を投与して患者さんを副作用で苦しめるのは忍びない」と嘆き、術後補助療法のあり方に苦言を呈していました。すでに、いくつかの薬剤は、がん手術後の補助療法でかなり広く使われ、学会ガイドラインにも組み込まれています。そのため、どんな患者でも“念のため”術後投与(補助療法)するのが当たり前になっています。しかし、AZのタグリッソは、もともとEGFRという特定遺伝子に変異がある患者に絞って使用されます。遺伝診断で、効果がある患者と効果がない患者をあらかじめ選別してから使うのです。大雑把に言えば、無駄な投与を無くす。タグリッソが術後補助療法の承認を得れば、私が尊敬する外科医の見方も変わるかもしれません。

◆優れた医薬品は「温室効果ガス削減」にも貢献できる

 それから印象に残ったのは温室効果ガス排出ゼロに向けたAZの提言。全部で6項目あるのですが、「日本の温室ガス排出の4.6%はヘルスケア関連。最も大きいのは患者さんの入院なので、短縮化に向け、関係当局と話し合っていく」(ヴォックスストラム社長)との言葉が響きました。優れた医薬品開発は、温室効果ガス排出削減に貢献できるのかもしれないと気付かされました。

 写真はAZ日本法人のヴォックスストラム社長。これからも地道に各社をウォッチしてまいります。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

【お知らせ】本日更新は延期。明日更新いたします。

 

「本社への説明つらかった」、米製薬団体、フェリシアーノ日本代表が吐露、薬価制度見直し「15年以降、50個超」

 はい!皆さんこんにちは!先週のゴールデンウィーク明け以降、愚図ついた天気が続きますが、お元気でしょうか?

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)が本日16日午後、記者会見を開催。日本代表のジェームズ・フェリシアーノ氏(在日執行委員会委員長、アッヴィ合同会社社長)が、こう話しました。

 「日本の薬価制度は15年以降、50個を超える見直しがあった。その都度、本社、本部に報告しなければならない。とくに苦痛だったのは、新薬創出加算(特許期間中の保険薬価を維持する制度)の対象範囲縮小と、毎年の薬価改定、市場拡大再算定の理不尽な対象選定だ。本社への説明はホントにつらかった」。

 ちょうど同日、日本、欧州、米国の製薬団体が共同提案を公表し、「医薬品の研究開発促進」や「医薬品産業の健全な育成」を訴えています。その中でも、薬価制度については「透明性・予見性」の維持を強調しています。簡単に言うと「薬価を引き下げるための制度の見直しを、短期間に何度もやらないでください!先行きがどうなるかわからないと、事業計画が建てられなくなる。結果、日本への新薬導入も躊躇せざるを得ない」ってことです。

 実際、ヘルスケアの大手調査会社IQVIAの予測調査でも、日本の医薬品市場は主要10か国で唯一マイナス。特許期間中の医薬品の保険価格も政策的にどんどん下げられています。日米欧3極の製薬業界団体は共同で、日本政府に強く改善策を求めていく方針です。

 今後、政府がどこまでどう受け止めるか?

 夏の参院選、新型コロナをはじめとする感染症の脅威、23年4月予定の診療報酬、薬価制度改改革。。。。。そんな中で、医薬品産業政策についても各方面、各段階で議論が進んでいきます。今後も、しっかりウオッチして参ります。

 写真はフェリシアーノ氏。毎回、日本語でプレゼンテーションしてくださいます。いまだ英語に弱い私にとって大変ありがたい。感謝です!!!今回の記者会見には、会場に行ってリアルに参加しました。業界の皆様に直接、お会いできるライブは、やっぱりいいです。曇天に引きずられて沈みがちな気持ちも上向きます!それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!!!

 

 

 

新型コロナ対策“3年目”、日本独自モデルを!別に海外と同じでなくていい!!

 

  みなさん、お元気ですか?2年ぶりにコロナ規制無しだったゴールデンウィークも終了!!!いかが過ごされたでしょうか?

 新型コロナ。。。休み中に感染したヒトも増え、休み明けで検査数も増えるので、まあ一般メディアが定番とする「前週と比べて〇人減った!」「〇人増えた!」ということで言えば、今後しばらく増える可能性があります。しかし、1年前、2年前のように「危ない!」「死んでしまうぞ!」と、ヒステリックに大騒ぎする“煽り報道”“煽り発信”も少なくなり、世の中も大分、冷静になってきました。

 

 国を挙げた新型コロナ対策が始まって、もう3年目です。この間、コロナの感染には地域差、民族差があり、海外で実施している施策をそのまま持ち込めばいいわけではないことが明確になりました。また、患者を受け入れる医療機関、医師の積極性に濃淡があり、日本の医療提供体制の脆弱性が見えてきました。

 今後も警戒、注意は必要ですが、全世界一律の対策は「正解」ではない。その地域、民族にもっとも適した対策を打つ必要がある。そう考えると、こっから先、日本はじめ世界各国の首脳陣は、感染症対策に関する運営センス、アイディアの独自性が問われる。

 日本のことで言えば、そろそろSARS、MRSと同等の対策ランク「2類」を緩め、人々が活動しながら、感染を最小限(ゼロにするのは不可能なので。。。)に抑える。日本独自の政策を確立する時期が来ています。

 ということで今週はこの辺で。。。写真は連休中に訪れた上野の美術館前で撮影。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

 

 

キュアアップの高血圧治療用アプリ、販売は基本「単独1社完結体制」も、協業の可能性は「否定しない」と佐竹社長

 

 みなさん、お元気ですか?世間は、ゴールデンウイークのド真ん中!暦通りの方もいるし、先週金と今日、月曜にお休みを取って「ひゃっほー!10連休!!!!」なんて羨ましい方もいらっしゃるかもしれませんね。

 さて先週4月26日付で、キュアアップが申請していた高血圧用治療アプリが承認され、年内にも販売される見通しになりました。医師の処方コードをもらって、患者がアプリをダウンロード。そこから発せられる各種情報を受けて生活習慣を改善すると、血圧を下げ、健常値を維持できる効果があります。医療保険の対象です。このアプリが広がり、治療現場で成果が積みあがっていけば、「とりあえず出しとくかあ」みたいに、安易だった高血圧治療薬の処方は少なくなるかもしれません。

 アプリはソフトウエアですから、医薬品のように物理的に運んだり、保管したり必要はない。処方コードに沿って、患者が自分の端末にダウンロードした時点で購入完了、使用開始となる。だから薬のような大所帯の販売部隊はいらないかもしれませんね。キュアアップの佐竹晃太社長も基本的に単独1社での販売管理体制を整備すると話しています。

 しかし、アプリはまだ新アイテムですから、医療現場でいかに理解してもらうかが今後の課題です。佐竹社長も「販売の協業は否定しない」と言っておられます。個人的には、理解浸透という面で、メーカーや、CSO(医薬品販売受託会社)が参加するのも悪くないのではないかと考えます。

 写真はキュアアップの佐竹晃太社長。それではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください。

【速報4月27日付】

キュアアップの高血圧治療用アプリが「承認」獲得

生活改善指導で「医薬品を代替」、“医療費1.9兆円”の抑制に挑む

詳細はコチラ⇒https://www.yakushin-iryou.com/

 

 

MSDの会見で記者の質問が殺到&「未病への対応」に踏み出す製薬業界

 

 みなさん、お元気ですか?寒暖の著しい波が、続いていますね。温度調節が難しい今日この頃です。

 さて先週はいくつか記者会見がありましたので、その印象記を一席。。。。

 

◆MSDの会見は毎回、質問が殺到

 まずMSD製薬の年次会見(21日)。昨年4月の薬価引き下げでダメージを受けましたが、抗がん剤キートルーダなどが順調で売上高は2890億円(7.5%アップ)。今期22年は薬価改定もないし、コロナ治療薬ラゲブリオなどが貢献するので、順調に伸びるでしょう。

 MSDの記者会見は、このところ毎回、質問が殺到します。コロナ治療薬、抗がん剤、子宮頸がんワクチンなど、わかりやすい製品、事業が多い。加えて昨年は、1社単独で日本の薬価制度について意見表明したことでも注目されました。記者会見では、カイル・タトル社長が事業全体を説明した後、白石博満副社長が研究開発、ビジネス、医療保険など様々な角度から、毎回、日本語で丁寧に深く補足説明する。会見の運びも極めてスムーズです。そんなこんなで参加している記者の「もっと理解したい」「質問したい」というモチベーションが非常に高まっているように思います。

   MSD製薬には、ベテランの広報担当者が複数名いらっしゃいます。その方々の「志」「磨き上げたプロの気配り」あってのことでしょう。最近は、自社の広報を縮小し、PR会社に丸投げってケースも散見されます。MSDには是非、「トップシフトの本気の広報」を続けて行って欲しいです。

◆薬事、医療品評価委員会の共通テーマは「未病への対応」

 

 そして翌22日、新薬メーカー73社で構成される日本製薬工業協会が薬事委員会、医薬品評価委員会の活動計画についてリアル会見を設けてくださいました。

 薬事委は主に、医薬品の「承認申請」、医薬品評価委は、主に医薬品の「安全性、有効性の各種試験」について検討する委員会ですが、22年度は共通課題も沢山、あります。その中でも注目は「未病への対応」です。

 

 

 従来の医薬品の定義は「疾患を治す」でしたが、これからは疾患になる前に、予防する。すなわち“未”だ“病”ではないうちに対応する。それが大事な時代になりました。製薬業界として、この問題にどう向き合うのか?それを両委員会で議論することになります。まだまだ書きたいこと、お伝えしたいことは尽きませんが、今回は、この辺で!!!!

おいおい改めてディープに発信いたします。

 写真は、MSDのタトル社長、白沢副社長のツーショット。二番目が薬事委員会委員長の柏谷裕司氏(武田薬品)、三番目が医薬品評価委員会委員長の柳澤学氏(エーザイ)。丁寧にご説明したいただき、感謝しております。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

 

 

 

「連続生産」ブレイク寸前!!!国内製薬企業も導入し、迅速かつ効率的に自社品製造!価格への反映を期待したい!!

   みなさんお元気ですか?夕刻になって雨がシト、シト、そしていまザア、ザア降りに変わりました。

 さて本日18日、新薬メーカー73社が加盟する日本製薬工業協会の「品質委員会」の記者会見に出席。「新時代の足音」を感じてきました。

 同委員会の22年度の活動計画に「連続生産」への対応や、3Dプリンターなど新製剤技術への準備が盛り込まれています。

 「連続生産」は、ここ数年に出てきた技術で、日本では塩野義、田辺三菱、エーザイ、富士フイルムなど数社しか導入していない。連続生産で医薬品を作る場合、各社が個別に厚労省などと綿密に相談して世に出しますが、何せ新技術で、事例も少ない。だからこそ、業界内で少ない情報を持ち寄って、安全性、有効性、品質確保について一定の認識を共有しておきましょうというのです。

 医薬品の製造は大きく言うと「量を測って」「混ぜて」「こねて」「乾かして」「形にして」「きれいにする」という6つの過程をたどる。従来は、ひとつひとつの過程で、取り出してヒトが目視で確認する「パッチ生産」だったのですが、「連続生産」はいちいち取り出さず、6つの過程を一気に進め、デジタル技術で状態確認する。迅速かつ効率的な製造が可能になるのです。

 品質委員会には的確な基準を確立して、よりよい形で普及させて欲しいです。当然ですが、国内製薬業界で連続生産が定着した暁には、素晴らしい医薬品を、いまより安い価格で提供してくれるはずです。製薬各社さん、そこんところお忘れなく!よろしくお願いしますよ!

 写真は製薬協品質委員会の記者会見風景。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!!

 

 

一般の人に知られていない「バイオシミラー」!大事なのに。。。。

 

 みなさん、お元気ですか?しばらく気温変動の激しい日が続きましたが、それも終わり。ようやく春の気候をゆっくり味わえるようになりました。

 さて先週4日、日本バイオシミラー協議会のフォーラムがありました。

 業界関係者以外の方は「バイオシミラーって何よ?」って、なるかもしれません。医薬品って、数10年前までヒトが化学物質を合成して作る「化学合成医薬品」が主流だったんですが、いまは、遺伝子組み合えとか、細胞培養とか、もともと生物が持っている力を利用して作る「バイオ医薬品」がどんどん出てきています。

 で、初めに出た「バイオ医薬品」の特許が切れて、その特許情報を利用して初めに出たバイオ医薬品と、限りなく、そっくり(similar)に作った医薬品をバイオシミラーと言います。初めのバイオ医薬品と全く同じものを作ろうとしても、製造工程や場所の違いで全く同じにはできないのがバイオの特性なんです。だからシミラー(similar)なんです。ただ、疾患に対する効果、安全性は初めのバイオ品と同等、しかも価格は初めのバイオ品より安い。

 そのため医療費効率化の観点から、政府は数年前からバイオシミラーの使用促進を働き掛けています。それもあって日本でもバイオシミラーの数も増え、徐々に使用されるようになっています。

 先週のフォーラムに参加し、「数年前と比べるとずいぶん増えたなあ」との印象を受けました。ただ、使用割合は24%ほど。主に化学合成医薬品中心の先発品と後発品(ジェネリック)の使用比率は、後発品が80%ですから、それと比べたらまだまだ低い。フォーラムでは様々な課題が示されました。この先どうなるでしょう?それはおいおい発信いたします。地道に取材を続けます。

 写真は休みに立ち寄ったかカフェで。。。。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

 

 

 

 

 

特定保健指導を“実体験”!有難き日本の保健制度!

 みなさんお元気ですか?

 本日は、公的医療保険の保険者による「特定保健指導」を初めて受けました。昨年受けた健康診断の結果、中性脂肪、nonHDLコレステロールが基準値を超え、対象に選ばれました!(誇るものではない、苦笑)。指導員の方に色々、アドバイスを受け、規則正しい食事と、適度な運動の継続を目標に設定しました。当たり前のことなんですが、やはり他者と対話して回答を導き、目標を定めるとモチベーションが違いますよね。日本の公的医療保健制度の有難さを実感、がんばろう!と思いました。そんなこんなで、もうこんな時間に。。。。今回はこれで失礼!

 写真は近所でみた桜。どういうわけか桜は雨も似合いますね!みなさま、素敵な1週間をお過ごしください!

 
 
 
© 2024 薬新プラザ|医薬品業界の「本質」を発信するサイト