新型コロナ感染症が落ち着きを見せたと思ったら、元旦に能登半島震災が直撃――。被災者の方々が今も現地で苦しんでおられる。昨年末から自民党がパーティ券の不正税務処理問題で揺れ、政局も不安定だ。相変わらずロシア・ウクライナ戦争は続いており、米、中2国間の関係もギクシャクしたまま。国際政治経済に不穏な影を落としている。とはいえ日本社会の政策課題解決に向けた歩みを止めることはできない。加えて産官学の情報・意見交換の重要性はどんな時代に合っても揺るがない。DX、AIの時代と言えど、「表情」「声」「動き」を総合的かつ生態的にやり取りできるリアルなコミュニケーションはなくならないし、相互の情報量、伝達力、認識力は、今後、どれだけ技術革新が進んでも「DX、AIだけでいい」ということにならないだろう。
1月9日、東京薬業4団体の新年賀詞交歓会がプリンスパークタワー東京で開かれた。その風景は数年前と微妙に違っていた。
政権運営の総合調整を担う内閣官房に「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」(以下、創薬力向上会議)なる会議体が設置された。座長は村井英樹内閣官房副長官(衆院議員)、座長代理は鴨下一郎内閣官房参与(元衆院議員)で12月27日に初会合を開いた。今後、月1回程度、議論を重ねて構想をまとめる。構想の内容は、6月頃に打ち出す骨太の方針(経済財政運営のための基本指針24)に反映させる方針だ。スタートアップ(SU)、ベンチャー(VC)などを育成し、そこで生まれたシーズを大企業につないで創薬力を高める。そしてその収益を、さらに新しいシーズに再投資するーー。そんなエコシステムの実現を目指している。私は、この会議が20年近く沈静化していた国内製薬企業の再編を促すきっかけを作るのではないかと見ている。
365日のスピードが年々、速まっているような気がします。先日、行きつけのご飯屋さんで、僕より年配のマスターにそう話したら「これからもっと速くなるよぉ~」と言われ、「ギョッ!」と困惑しました。いやはや「高齢」っつのは「高速年齢」の略でもあるんですねえ。最近、気が付きました。
さて2023年もあと数日となりました。新型コロナ感染症のパンデミックも収まり、ヒトとヒトのリアルな交流が復活。製薬業界各社、団体の記者会見もパソコンの液晶画面から、直接面談に移りつつあります。政策的には、有識者検討会の報告書以降、まるでパンドラの箱を開けたがごとく複数の審議会、検討会での議論が同時多発的に動き出しました。おかげさまで、私は朝から夜まで全力疾走。“取材して、資料読んで、記事を書くだけのイキモノ(生き物)”を満喫することができました(^_^.)。沢山の皆様に取材の機会をいただき、かつまたディスカッション、飲みにケーションを重ねることができ、幸せひとしおです。
来年もよりよい情報発信に向け、精進を重ねて参ります。
引き続きご指導、ご支援の程、よろしくお願いいたします。
どうか皆さま、素敵な年末、年始をお過ごしください!!!

◆後発品産業の構造改革検討会(12月25日)
厚労省の後発医薬品の産業構造のあり方検討会で気になる動きがあった。12月25日の第7回会合に後発品のみならず先発品も扱っている企業2社、そして先発・後発の別なく「特許が切れた医薬品」全体を視野に活動する日本エスタブリッシュ医薬品協議会(JEMA、21年7月設立)を呼び意見聴取したのだ。同検討会は過去2回(7月31日、9月19日)、後発品業界から意見聴取しているが、プレゼンテーターは、いずれも日本ジェネリック製薬協会(JGA)の高田浩樹会長(高田製薬社長)だった。つまり、これまではもっぱら後発品専業メーカーを窓口にしていた。ところが25日の検討会では、先発・後発双方を扱う企業、団体が招かれた。

◆流通改善ガイドライン改訂案をまとめる年内最後の懇談会は傍聴席も満員!!!白熱した議論が展開された。(12月21日撮影)
厚労省の医療用医薬品の流通改善懇談会(以下、流改懇)が先週12月21日、「流通改善ガイドライン(GL)」の改訂案を了承した。いわゆる有識者検討会の報告書を受け、年内の検討課題に概ね結論を出した。そして来る24年ーーー。いよいよ「薬価差」「調整幅」の議論に取り掛かる!!!ご承知の通り「薬価差」「調整幅」は、市場実勢価を基に薬価を決める現行制度の根幹をなす。流改懇での議論は、間違いなく中央社会保険医療協議会薬価専門部会での制度改革論議に跳ねるだろう。今後、どう動くかーー。私見を交えてレポートする。

◆厚労省全景
沢井製薬の九州工場で発覚した胃潰瘍治療薬テプレノンの“カプセル詰め替え”GMP違反に12月22日付で、行政処分が下りました。
処分内容は「業務改善命令」で「業務停止」ではないので、工場の操業には影響ないものと思われます。従って、昨今、問題になっている安定供給には支障は出ないでしょう。
また、沢井は今回の行政処分を重く受け止め、寺島 徹氏の取締役辞任と降格を取締役会で決めました。本人から申し出のあったとのこと。
寺島氏はホールディングスの取締役を辞任し、専務執行役員から常務執行役に降格。傘下、沢井製薬の取締役専務執行役員、信頼性保証本部長を辞任します。
そのほか澤井光郎会長、木村元彦社長、澤井健三副社長など5人の役員報酬について一部自主返納することを決めました。返納額は澤井会長50%、木村社長25%、澤井副社長25%。
その他2人は10%。
後発品企業の行政処分は21年2月以降、続々と件数が増え、23年は若干落ち着きを見せていましたが、大手の沢井で不正が発覚。「どうなってるの?」と、動静が注目されていました。
結果は業務改善命令と関係役員の辞任、役員報酬返納という形。年をまたがずギリギリ年内に結論が出ました。
みなさんお元気ですか?
さて来週12月19日(火)、IQVIA様主催のセミナーで講演いたします!
23年度の薬価、薬事、医薬品流通に関する議論、結論、今後の将来を総花的に整理してお話いたします。題名は「医薬品政策の新潮流~“同時多発的“に動き出した議論~」(仮称)です。
同じセミナーで私の他、慶應義塾大大学院教授で元 中央社会保険医療協議会 ・薬価専門部会部会長の中村 洋 氏、A&Gファーマコンサル 代表、日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会 評議員の義若 博人 氏も講演されます。
セミナーは会場受講、オンデマンド配信のハイブリッド形式。お時間がありましたら、是非ともIQVIA本社(品川)に直接、お越しいただき、リアルな講演をお聴きいただきたいです。背一杯、お話いたします!どうぞよろしくお願いいたします!
2024年度薬価制度改革と業界展望 ~安定供給と魅力的な市場形成に向けて~ (utobrain.co.jp)