高血圧の新薬承認は「臓器保護作用」の証明を義務化せよ!!
みなさんお元気ですか?しつこい残暑に悩まされながらも、時々、ふっと秋の香りに遭遇し、ほっと一息をつく今日この頃です。
さて、今回は高血圧治療薬の話。薬剤の種類も多く、みなそれぞれ効果を発揮している。患者満足度も高いといわれている。だから一般的には「新薬はもういいんじゃないの?」「もう別にいらないよ」って感じになっていますね。高血圧は患者も多く、少しばかり処方が変わっても、いきなりひどい副作用を招くことは稀なので、メーカー各社は、プロモーションに思いっきりお金をつぎ込んで売りまくっていました。つまり売りやすいし、使いやすいのです。しかし、本当は、血圧をただ下げるだけじゃ意味ない。最終的に、脳梗塞、心筋梗塞、心不全など心血管障害の抑制につながれなければ価値があるとは言えないのです。だからこそ新薬を世に出した後に、どれだけ心血管障害抑制に効果があるか、これまた膨大なお金を掛けて、試験を実施せざるを得なかった。「うちのはすごいよ!」「いやいやうちのはもっとすごい!」と、市販後の試験と宣伝に狂騒した。結果、市販後の試験や宣伝が、人の目を欺く出鱈目な形で行われるようになった。武田薬品工業のブロプレス「ゴールデンクロス」事件、ノバルティスファーマのディオバン「データ改ざん」事件がなれの果てです。
そもそも新薬を開発している段階で、心血管障害抑制効果を証明していればこんな変なことは起きなかったはずです。しかし、心血管障害の抑制効果を証明するには時間が掛かる。だから、これまでは仕方なく、血圧を下げる効果だけで、承認をしてきたわけです。しかし、もう血圧を下げるだけの薬はごまんとある。臨床医も患者も「お腹一杯です!」って、なったわけです。今後の新薬開発は、血圧を下げるだけなら申請却下、臓器保護作用(心血管障害抑制)をしっかり証明したものだけ承認!!!そのくらいで、いいのではないでしょうか?
別にふざけて言っているわけじゃないのです。日本の研究者が「ちぇっ、つまんねえ」って腕枕で、ふて寝しているかというと、そんな軟弱ではないです。先週、仙台で開かれた日本高血圧学会では、血圧を下げる作用と臓器保護作用双方を併せ持つ、これまでの枠組みを超えるユニークな化合物の発表がいくつもありました。【RISFAX16年10月3日号をご参照ください】研究者の発想は、すでに次のステップに突入し、真剣に取り組んでいるのです。新たなアプローチの研究は、作用機序が複雑に入り組んでいて、1回聞いただけではなかなか理解できないんですが、逃げずに前に行く姿勢を目の当たりにすると、元気が出ます!!!どうあれ、血圧を下げればいいって時代は終わったのです。
で、写真は仙台にて。鱗雲が静かに流れていました。では皆様、季節の変わり目に付き、お体に気をつけて。素敵な一週間をお過ごしください!!