【11月20日発】CAR-T療法は“夢の新薬”ではない! 北大・豊嶋教授「一生に一回のチャンスを大事にして」と呼びかけ

 

◆北海道大学大学院の豊嶋崇徳教授

 患者の免疫細胞(T細胞リンパ球)を採血で取り出し、遺伝子改変で免疫力を増強したうえで再び体内に戻してがん(現在適応は血液がん)を叩くー。CAR-T細胞療法の実施施設、実施例が日本で急速に増えている。

 北海道大大学院・血液内科の豊嶋祟徳教授によると、日本の臨床現場に初めて登場した2019年の実施施設は4施設と少なかったが、24年は69施設まで拡大、年間実施件数も500人以上となった。豊嶋氏は18日に開かれたギリアド・サイエンシズ社主催のメディアイベントで「たった5年で広がり、一般治療化した」と指摘、患者に新たな治療選択を提供し、大きな福音をもたらしている現状を紹介した。ただ一方で、投与後、一定期間、重い副作用が生じるほか、無効例もある。また現在、投与は患者1人1回限り。医療費も3000万円超で高額だ。豊嶋氏はそうした現状を踏まえ、「CAR-Tは“夢の新薬”ではない。進化過程の治療法だ。(他の治療法と合わせた)全体の中で、専門医とよく相談して受けた方がいいのか、いまは受けない方がいいのか。1生1度のチャンスを大事に考えて欲しい。自分一人で考えて突っ走らないで」と注意喚起した。メディアに対しても「とてもいい薬だが、みながみな幸せになれる薬ではない。過度な期待を生まないようにご配慮を願いしたい」と述べた。

 

◆ギリアド・サイエンス社のイベントに登壇した俳優、佐野史郎氏、「CARーTはお守り」

◎ギリアド・サイエンス社作成の「CAR-T細胞療法」紹介映像「サイボリウム」

 

 CAR-T療法はB細胞リンパ球

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【11月14日発】薬価改定論議は「子育てプラン」で潮目が変わった ! !中間年改定“廃止論”に「理解得られるか?」と伊原事務次官

 

◆厚労省の伊原和人事務次官

 財務省が11月13日、所管審議会(財政制度等審議会 財政制度分科会)に25年4月の薬価改定(引き下げ)を「原則全ての医薬品を対象に実施すべき」という考えを示した。

 国家予算の「削り屋」省庁だから厳しくても仕方がない。毎年、製薬業界が簡単にキャッチできない(受け入れられない)程、高くて遠いボールを投げつけてくる。その実、財務省だって自らの主張がすべて実現すると思っていないだろうーー。長年、取材を続けているうちに、そんな風に考える“すれっからし”になってしまった。しかし、25年4月以降の薬価改定は、そうも言ってられない。

 総額3.6兆円規模の「こども・子育て支援加速化プラン」(以下、子育てプラン)実施に向けた法案が今年6月に成立、同時にプラン実施に伴う国民負担増を避けるため、「医療・介護の徹底した歳出改革」を断行することを決めた。「歳出改革」というとなんだかソフトに聞こえるが、要は「歳出抑制」だ。当然、薬価、診療報酬もターゲットになる。子育てプランは段階的に実施され、2028(令和10)年度に完成する。少なくとも薬価、診療報酬は、プランが完成する向こう4年間、厳しい風にさらされる。製薬業界は診療報酬改定のない年の薬価改定(いわゆる中間年改定)を「廃止もしくは延期すべき」と訴えているが、実現のハードルは一層、高くなっている。

 厚労省の伊原和人事務次官は25年4月の中間年改定についてこう言っている。

 「薬価と実勢価に乖離があるのに見直さないと、(その分、医療保険給付額が高いまま維持され)保険料(国民負担)に

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【11月6日発】もうすぐ登場!リリーの早期AD薬ケサンラ  エーザイのレケンビに続き国内2つ目 結合ターゲット、使い方の違いが実臨床でどう評価されるか?

 

◆日本イーライリリーのメディアセミナー(10月29日開催)風景。古和久朋神戸大教授・認知症予防推進センター長(右)、片桐秀晃日本イーライリリー・ニューロサイエンス領域本部本部(中)、小森美華同医薬部長(左)

 日本イーライリリーが9月に承認を得た早期アルツハイマー型認知症の進行抑制薬ケサンラ(ドナネマブ)が年内に発売となる見通しだ。現在、厚労省の中央社会保険医療協議会が医療保険で支払う薬価と、最適使用を推進するためのガイドライン(最適使用推進GL)を審議しており、近く結論を出す。日本では同じ適用でエーザイとバイオジェンが共同開発したレケンビ(レカネマブ)が先行承認され、昨年末から臨床現場で使われている。ケサンラが登場すれば国内で2つ目の薬剤となる。 

 ケサンラ発売後、両薬の使い分けはどうなるのかーー。医療現場、患者、家族、国民の関心は、これまで以上に高まっていくだろう。当然、情報発信するメディアの責任も重くなる。発信の際、最も注意しなければならない点が2つある。ひとつは、いずれもアルツハイマー型認知症の「進行を遅らせる」薬であって、完全に「治す」薬ではないという点。そしてもうひとつは症状が軽い「早期」のみが対象で「中度」「重度」の患者には使えないという点だ。この点を軽視もしくは曖昧にしたままの“過剰発信”は、患者、家族、国民に誤解を与え、医療現場に混乱をもたらす。

 さて前置きはこれくらいにして今回は、2つ薬剤の特性についてレポートする。

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【11月1日発】大塚ホールディングス トップ交代 井上新CEO トータルヘルスケアのグローバル化 米国でスタートへ 

 大塚ホールディングス(大塚HD)、大塚製薬は、1031日開催した両社取締役会において、202511日付で大塚HDの代表取締役社長兼CEOに井上眞代表取締役COO【写真左】が昇格、樋口達夫代表取締役社長兼CEOが取締役相談【同右】に就くトップ交代を決議した。樋口氏は大塚製薬の代表取締役会長から代表権のない取締役会長になる。井上氏は、31日の記者会見で医薬品事業とニュートラシューティカルズ(NC)事業を合わせたウェルビーング事業としての発展を目指すとした。また、大塚の独自性をさらにグローバルにも展開するとし、すでに米国での両事業間の調整に乗り出したことを明らかにした。※この原稿は、業界OB「ShinOM」さんにご執筆いただきました。

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【10月30日発】 アステラス製薬は、どうやって研究者にAI活用、普及を促したか、「工夫」の一端を紹介

 

◆志鷹義嗣専務担当役員(研究担当)

 アステラス製薬が5年ほど前から積極的に進めていたAI(人工知能)を使った創薬(以下AI創薬)で成果が出始めた。AIとロボット技術をフル活用したSTING阻害薬(自己免疫系疾患治療薬)「ASP5502」が従来にないスピードで9月に第Ⅰ相(PⅠ)試験入りを果たした。ただ、ここに至るまで、いくつかの“工夫”を凝らしている。「単にAIを作って導入しただけでは研究者は使わない」(志鷹義嗣専務担当役員・研究担当)。「AIで化合物をデザインして、研究者に渡しても“こんなの僕はやりたくない”となる」(角山和久デジタルXリサーチX)――。要は、生身のヒトであって実経験を積んだ研究者とAIをいかに近づけ、作業を融合させるかが重要なのだ。その点、AI創薬に取り組む同業他社も同じだろう。では、アステラスは具体的にどんな工夫を凝らしたのかーー。

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【10月25日発】日本の「医療DX」はもはや「バズワード」! 国民、患者にメリットが伝わらないと進まない

 

◆慶応大医学部の宮田裕章教授 「医療DXは患者に見えるようにメリットを可視化すべき」と話す

 一般、専門メディアで、ここ数年、「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を聞かない日はない。新型コロナ感染症のパンデミックを機に「今後、急速に進む」と煽るような発信も多い。とりあえず、医療DXと言っておけば、何か発信している気になるのだろうか。かつて医療、製薬業界でEBM(Evidence‐Based Medichine)という言葉が流行った。しかし、時の経過ともに、空洞化し、バズワード化し、うわっ滑りし、やがてメディアは乱用を止めた。散々使って、使い飽きたから、読者の目を引き留めるために次の流行語、バズワードに移ったのだ。EBMは大事で、当然、いまも医療用語として存在する意義、価値は十分ある。しかし、バズワード化したら意味がない。本質からどんどん離れていくからだ。新用語のバズワード化を避けるには一体、誰のため、何のためのものかーー。そこを常に問い続ける必要がある。今、各種メディアに溢れる「医療DX」も、かつてのEBMと同じ道を辿るのではないかと危惧を抱いている。

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【10月22日発】中外製薬 患者の声を活かすイベント“3時間“ 

 

◆中外製薬の奥田修代表取締役社長CEO

 中外製薬が先週10月16日に開いた患者の声を聞いて事業活動に活かすイベント「PHARMONY(ファーモニー) DAY2024」に参加した。同社は患者との対話イベントを20年から5年連続で開いている。今回は社員の取り組み発表を加えるなど内容をさらに拡充。名称を新たにしての開催となった。イベントは予定時間内に収まらず、3時間近く続いた。奥田修代表取締役CEOが終始、席を離れず患者団体の代表、社員の発表を聞き、直接対話を交わす場面が印象的だった。各種団体主催の患者イベントには、これまで何度かお邪魔しているが、いずれも「一方通行的」な硬直感があった。しかし今回、中外が開いたイベントは、社長と患者、社長と社員が相互に情報交換する形式で、会場は私が過去の感じたことがない「融合感」に包まれていた。奥田社長は「他の会社、ステークホルダーも是非、真似をして欲しい」と話していた。しかし、どうだろう。3時間通しのイベントで、患者や社員と直接、向き合えるトップが今、日本に何人いるだろうか。

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【10月17日発】 医薬品価格交渉 “グレーゾーン”への切り込み進む チェーン、交渉代行業者に“行動変容”をもたらす可能性

 

◆厚労省の医薬品流通改善懇談会

 医療用医薬品の“単品単価交渉”が今後、より徹底されるだろう。長年の放置されてきた“グレーゾーン”にも次々にメスが入っている。

 厚労省が先週10月10日の医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会(以下、流改懇)に提出した資料「単品単価交渉の解釈について」で、これまで許容範囲なのか、そうではないのかはっきりしなかった“単品総価” にノーを突き付けた。また、価格交渉は地域、配送回数、購入金額などを総合的に勘案して行うべきことを明記。単に購入量だけを理由に値引(スケールメリット)を迫る行為を間接的にけん制した。スケールメリットのみを追求しているチェーングループ(同一法人)、ボランタリーチェーン(複数の法人格、事業主で構成する組織)や、価格交渉代行業者(買い手から卸との交渉を請け負う業者)があるとしたら、行動変容を強いられるだろう。

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【10月15日発】MeijiSeikaファルマ “サイエンスコミュニケーション”を呼びかけ 「コスタイベ」機にワクチンの「情報発信」を問う 

 

◆MeijiSeikaファルマの小林大吉郎代表取締役社長

 MeijiSeikaファルマが新型コロナ感染症適応の次世代mRNAワクチン(自己増幅型=レプリコン)「コスタイベ筋注用」について9月25日と10月8日の2回に渡り、記者説明会を開いた。ネット上に虚実ない交ぜの情報が拡散し、いくつかの団体が医師や医療従事者の名を連ねて接種中止を求める運動を展開している現状に危機感を抱き、正確な情報提供に全力で取り組んでいる

 コスタイベは世界に先駆けMeijiSeikaファルマが日本で初めて承認を得た新技術を応用したワクチン。毎度、海外の後塵を拝し、メディアや国民から「日本はなんでもっと早く新薬やワクチンを開発できないのだ」と散々、批判を浴び続けてきた製薬業界にあって、コスタイベの世界初、日本承認は快挙だ。しかし、今度は逆に「日本初承認ということは未知なことがあるということ。だからこそ不安なのだ」という声が出てきた。ネット上の情報混乱、接種中止を求めるネガティブキャンペーンの根底には、不安から来る忌避感があると思われる。小林大吉郎代表取締役社長は「新しいワクチンに不安を抱くのは健全なことだ。それに対して正確な情報を提供する義務が我々にはある。今後、こういう場(記者説明会など)を何回も設ける。是非、サイエンスコミュニケーションを考えて御発信いただきたい」と参加メディアに訴えた。

 ネガティブキャンペーンはエスカレートしている。10月から主に65歳以上を対象とする定期接種がスタートしたが、医療機関が注文をしようとすると不当な手段で阻止したり、その医療機関を電話やSNSで誹謗中傷したりする過激な行動も出ているという。小林社長は「これは、もはや破壊行為、製造販売業者として看過できない。法的な手段を取る」との態度を示した。

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【10月9日発】大塚のレキサルティ  アルツハイマー病の随伴症で正式承認  適応外の抗精神病薬に影響も※同日17時43分に一部修正

 

◆大塚製薬の井上眞代表取締役社長

 大塚製薬が抗精神病薬「レキサルティ」でアルツハイマー型認知症(以下AD)に伴う問題行動、心理症状(アジテーション)治療の追加承認(9月24日付)を得て医療機関に本格的な情報提供活動を開始した。同剤の新効能は「統合失調症」「うつ病・うつ症状」に次ぐ3つ目。日本で初めてとなる。ADに伴うアジテーションに対しては、これまで医師の裁量で、他の抗精神病薬が適応外で処方されるケースが多かったが、今後、正式に適応承認を得たレキサルティに置き変わっていく可能性がある。

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